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スマートホーム(スマートハウス)の記事
2019.01.08
2019.12.19

2019年に「ホームIoT」がキャズムを越えるために必要なこと(前編)

記事ライター:Yuta Tsukaoka

ホームIoT元年だった2018年

コーヒーテーブルの上に置かれたAIスピーカー

2018年はホームIoT元年と呼べる年だった。2017年末に発売された「Google Home」と「Amazon Echo」が順調に出荷され、それに合わせて各社がホームIoTガジェットを競うように発売し、普及への準備が整った。

と思ったのだが、まだまだ「キャズム」は越えていない状態にある。昨年10月の調査では日本のAIスピーカー普及率は4.2%(MMD研究所調査)であることからも、それは明らかだろう。AIスピーカーがホームIoTの全てではないが、入り口であることは確かだ。

そこで、今回の記事では前後編に分けて2019年がホームIoTの「普及の年」になるには何が必要なのかを考えてみたい。私たちのようなテックギーク以外の層がホームIoTを使うようになるにはどうしたらいいのだろうか?

この前編では主に、ユーザーの使用シーンからその問いを考えてみる。

 

画面付きAIスピーカーを普及させるべき

3人の男女が声でAIスピーカーに指示を出している様子

AIスピーカーというと、普通はGoogle HomeやAmazon Echoのような、一見ただのスピーカーにしか見えないものを指す。

「ただのスピーカーにしか見えないのに様々な質問に答えてくれる」というのはテックギークにとって非常に魅力的 ――HAL9000がただのランプにしか見えないのに乗組員を殺そうとしたように、その「底知れなさ」がたまらないのだが、一般層にホームIoTを普及させるにはこれでは無理だろう。

冒頭でも書いたように、AIスピーカーの普及率はたったの4.2%だ。昨年末のAmazonセールで多少は増えたかもしれないが、それでも5%を上回ってはいないだろう。

その理由のひとつに、セットアップひとつをとってもスマホが必要で、しかもアドホックWiFiで接続しなくてはいけないというのは大きいと思う。私たちにとってはどうということもないことだが、普段からテクノロジーに親しんでいないとこの操作はかなり「意味がわからない」はずだ。

そこで画面付きAIスピーカー(ややこしいので、ここからはAIディスプレイと呼ぶ)である。

私はAmazon Echo Spotのレビューで「親に贈って喜ばれるはじめてのガジェットかもしれない」と書いているが、タッチディスプレイを持つことでスマホなしのセットアップと操作が可能になっていることを高く評価したからこそだ。

AIディスプレイは、その操作性がきわめてスマホに近く、言ってみれば「据え置き型のスマホ」である。この点が批判的に語られることもあるが、使ってみればその利便性に気がつくだろう。わざわざスマホをポケットから取り出してニュースを読むより、目に付きやすいところに置かれたAIディスプレイに自動表示されるニュースを見るほうが楽だからだ。

また、家電リモコンとしても優秀だ。

Echo Spotも昨年11月のアップデートで画面からの家電操作に対応した。通常、IoT家電はAIスピーカーへの呼びかけかスマホで操作するものだが、一般層にとっては「なんでスイッチがあるのにわざわざ?」というのが本音である。そこへAIディスプレイを導入すれば、家中の照明や家電を操作できる「コントロールパネル」としてAIディスプレイが機能し、ホームIoTの利便性を感じやすくなるだろう。

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無電源センサーの普及が必要

 

無電源センサーの開発、普及がカギ

スマートフォン端末で施錠を管理するイメージ画像

ホームIoTには2つの段階がある。ひとつが、操作の自動化。AIスピーカーやスマホ、AIディスプレイを通じて「スイッチを押さずに操作する」ことをこの記事ではそう呼ぶ。

もう一つが、ホームオートメーション。操作不要の自動化である。

ホームIoTが広まるには、このホームオートメーションが欠かせない。しかし、CASPARのようなホームオートメーションシステムは住宅の設計段階から組み込まないと機能しないので、今日明日に取り組めるものでもない。

今ある自宅にホームオートメーションを組み込むには、センサーを設置することになる。これは様々なものが販売されていて、人感センサー・輝度センサー・温湿度センサーなど比較的安価で手に入れることができ、それらのセンサーからの情報をもとにして照明や家電を調整するのは比較的簡単だ。

しかし、問題は設置である。電源を引っ張ってきて家中に配置するのはスマートではないし面倒だ。また、電池式のものは長くても2年程度で交換が必要になるが、IoTガジェットがある日突然動かなくなったときに電池切れを察知できない場合が多いだろう。まずはソフトウェア的な不具合を疑い、スマホで試行錯誤するうちに嫌になってしまう。

そこで、これまでの記事でも繰り返し主張している「無電源センサー」のさらなる普及が待たれる。いま、無電源センサーとして代表的なのはYKK APの「ミモット」(クレセント錠の施錠センサー)とトッパンの「ロケーションフロア」(感圧式の位置センサー)である。

前者はクレセント錠を開閉する際の動きで、後者は人が上に乗った際の圧力で発電して瞬間的にBluetoothの信号を発信することでセンサーとして機能する。
これは応用が効くだろう。

部屋の中を歩く女性の足元

たとえば、「ロケーションフロア」はIoT建材を謳っているが、これをバスマット程度のサイズに切り出して使うことができれば、洗面所や玄関の人感センサーとして利用することができる。これを自宅ドアの開閉振動を察知するセンサーを組み合わせれば、帰宅時に家の照明をすべてオンにすることは可能になる。すでにある技術で無電源化ができるので、設置もスマートだ。

Bluetooth信号を一度だけ発信する程度の電力であれば水流でも作ることができるので、トイレタンクに設置する見守りセンサーなども考えられるだろう。

ただし、ミモットもロケーションフロアも、基本的にリフォーム時のオプションとして開発されており、消費者が自分で設置できる設計にはなっていないのが残念だ。
消費者が自分で設置でき、IFTTTに対応して他のIoTガジェットと連携できる無電源センサーが求められるだろう。

 

後編につづく

後編では、サポート体制など、実際の利用シーンから離れた部分でホームIoT普及のための方策を考えてみる。

<このライターの記事をもっと読む>
AIのみの進化は「無意味」 IoT向けセンシング技術はどう進化しているか?(どう進化するか?)
2019年はこうなる!? ホームIoTに訪れる3つの変化を大予想

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