IoTは、センシング・アナライズ・アクションの3段階
ホームIoT業界が活況だ。PhilipsのHueが発売された2016年当時、照明をスマホ操作で点けたり消したりして喜んでいた頃が懐かしい。今や、家中のほとんどの家電がAIスピーカーを通じて操作可能になっている。
そのIoTの肝は3つ。センシング、アナライズ、アクションである。たとえば照明をオンにするという場面に置き換えると、
- AIスピーカーへの呼びかけを検知(センシング)
- どこの照明をどの程度の照度で点けるかを分析して理解(アナライズ)
- 照明を点ける(アクション)
となる。この各段階でさまざまな進化が進んでいて、たとえばアナライズではAlexa Hunchのように「勘」を働かせるAIの開発が盛んだし、アクションは今や照明だけでなく玄関キーや空調にも及ぶ。
そしてセンシングだ。人感センサーや照度センサーで家電を操作するのは今や目新しくもない。我が家でも、IKEAのスマート照明と人感センサーを組み合わせて洗面所の照明は自動化している。
しかし、センシングにはさまざまな可能性が秘められている。人がなにか欲求 ――ライトを点けたい、空調をオンにしたい、テレビを見たいなどのアクションを望んだとき、どんな方法でそれをセンシングするかという研究が盛んに行われているのだ。
今はまだ、AIスピーカーへ人間が直接呼びかけることで欲求を検知するのが一般的だが、それは私たちが望む形での「センシング」とは遠い。
私たちが望んでいるのは、欲求の「先読み」であるはずだ。
これが実現している事例もある。アクセルラボが開発している「CASPAR」などIoTホーム(建築段階で各種センサーとIoT機器を組み込んだ住宅)では、振動や生活音など膨大な ――1日で1TBにもなるセンシングデータを元にして、欲求を先読みする能力を持っている。
建材でセンシングする凸版印刷の試み
(画像引用元:凸版印刷株式会社 公式HP)
https://www.toppan.co.jp/news/2018/11/newsrelease181119_1.html
「CASPAR」は住宅の設計段階からそれを埋め込むからこそ、豊富なセンシングデータを持つことができているが、いま私たちが普通に暮らしている住宅ではそうもいかない。
だからこそ、AIスピーカーを置き、人感センサーや照度センサーを搭載した機器を設置するわけだが、ここに新しいセンシングデバイスが登場した。
それが、凸版印刷が発表した「IoT建材」である。
その第一弾は「ロケーションフロア」。床材に感圧センサーを組み合わせて人の位置を検知する仕組みだ。
プライベートクラウドと組み合わせて住人の位置を検知し、さまざまな「アクション」につなげることができる。
たとえば、小さなスマート照明を廊下に設置しておき、深夜にトイレに起きた住人がそこを通ると自動で点灯するとか、別の部屋に移動して一定時間が経過したら照明や空調を消すといった使い方が考えられるだろう。
また、これからは体組成計を組み込んだ建材を開発して健康管理に活かしたり、離れた家族の見守りができる仕組みも開発する予定だという。
しかも、これは圧力で自己発電するので電源工事不要で住宅のリノベーションでも組み込むことができる。これからのIoTのキーワードは「無電源」という記事を書いたが、そのとおりである。
無電源センシングデバイスの時代が来る
いかにAIが進化しても、解析する元の情報であるセンシングデータが得られなければ無用の長物となってしまう。一方で、大規模な工事をしてまでセンサーを組み込むのも費用対効果が悪く、結局はせいぜい人感センサーと温湿度、照度センサーくらいでお茶を濁すしかないのがこれまでだった。
しかし、以前に紹介したYKK APの施錠センサーやこの製品のように無電源で利用できるセンサーが増えれば、それだけ私たちの生活は便利になるだろう。
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