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スマートホーム(スマートハウス)の記事
2018.09.04
2019.12.26

IoTのフレーム問題は「家が目を持つ」ことで解決できる

記事ライター:Yuta Tsukaoka

IoTにおける「フレーム問題」とは?

リモコンでテレビの電源をつけている様子

フレーム問題という言葉を聞いたことがあるだろうか。

ない?

なかったとしても、つぎのようなシチュエーションなら経験したことがある、または理解できるのではないだろうか。

―― 帰宅してリビングのソファに腰掛け、「アレクサ、テレビをつけて」と話しかけたのに「同じ名前のデバイスが複数あります。どれにしますか?」と返事が返ってきて苛立ちを覚える―― といったシチュエーションである。

これがまさに、自宅IoTにおけるフレーム問題だ。

アレクサは「寝室かリビングどっちのテレビをつければいいか」と尋ねているわけだが、リビングのソファにいるのだから目の前にある「そのテレビ」だと苛立ちを覚えるだろう。

なぜこんなことが起こるのだろうか。こんなことばっかりしているから、人々はAIスピーカーに愛想を尽かしてしまうのだ。しかし、私はAIスピーカーを擁護したい。

これは、AIを「人工知能」すなわち「人間の脳を模倣したもの」と誤解しているからこその苛立ちだからである。もっと正確に記述するなら、AI=Artificial Intelligenceの日本語訳はたしかに「人工知能」だが、いまだに真の意味でのAIは生まれていないのにそれを期待しているからこその苛立ちなのだ。

モニターに映る「AI」の文字を眺める男性の後ろ姿

まず当たり前のことを書くと、AIは人間ではない。あなたのパートナーに同じことを頼めば(怒りを買う可能性もあるが)きっとリビングのテレビをつけてくれるだろうが、同じことを期待してはいけないのである。

なぜか。AIは今のところ「人間の脳を模倣したもの」ではなく「人間らしさを真似しているコンピュータ」にすぎないからである。

人間であれば「常識的に考えて」すぐにわかるようなことを理解するほどには、今のAI、すなわちコンピュータは成長していない。スパコンを使ったとしても同じことである。というのも、この「常識的な」判断を数学的に表現することのハードルが非常に高いのだ。

実際、AIの気持ちに立って考えてみてほしい。目はない。暗闇で、耳をそばだてて主人の言葉を待つ。「テレビをつけて」と聞こえる。この家には寝室とリビングにテレビがある。目はない。主人がどの「テレビ」を指しているのかわからない。

こんな逡巡が彼ら(彼女ら)にはあるのだ。つまり、質問をどの「フレーム」で理解すればいいのかがわからないのである。リビングというフレームの中で出された指示なら当然、リビングのテレビだと考えられる。しかし、目のないAIにとって、フレームは常に「家全体」であり、単に「テレビ」と言われると家中のテレビが対象になってしまうのだ。

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AIが目を持つ日は遠くない

 

AIが目を持つ日は遠くない

カメラが設置された部屋

いま「目がない」と繰り返し書いたが、自宅IoTに限って言えば目を持つことでフレーム問題は解決できる。

家の主が ――または子供やパートナーが、今どこにいてAIスピーカーに話しかけているのかを知ることができれば、どのフレームでの言葉なのか、おおよそ正しい推測ができる。すくなくとも、リビングのソファにどっかり座った人から「テレビをつけて」と言われてどのテレビかわからない、というようなマヌケな事態は免れることができるだろう。

しかし1つ問題がある。そのためには、カメラが必要になるのだ。リビングに、寝室に、書斎に、キッチンに、玄関に。必要とあらば、トイレやバスルームにも。家中のいたるところにAIスピーカーの「目」が必要になる。これに抵抗感を抱く人は多いだろう。

この問題を解決するにはいくつかの方法がある。

1つは、高度なセキュリティで画像情報を保護する方法。しかし、AIスピーカーにカメラがつながっていることに懸念を感じるなら、セキュリティを付加したくらいでは納得しない人が多いだろう。

もう少し現実的な方法には、映像を機械的に ――つまり、AIスピーカーに送る前の時点、カメラ内で暗号化された映像にしてしまうというものもある。受像素子で受けた信号を復号不可能で人間の目で見ても意味不明な映像に変換してしまう方法である。現実的な方法だが、カメラ側に高度なコンピュータパワーが必要になるので高価にはなるだろう。

私がおすすめしたいのは3つ目の方法。そういうものとして受け入れてしまうことだ。

AIスピーカーの精度をあげようとすれば、目が必要になることはほとんど間違いない。音声の高精度解析によって発話された位置を推測する方法もあるが、目を持つほうが実現するにあたっては時間がかからないからだ。

女性が両手を差し出す様子

我々は、便利さと引き換えにさまざまなものを差し出してきた。家電製品やガジェットを購入するためのお金はもちろんのこと、Googleを便利に使うために個人情報を差し出し、facebookで気の合う仲間と出会うために趣味嗜好の情報も差し出している

AIスピーカーに目を与えることは、これと同じなのではないかと私は思うのだ。私たちがいろいろなものと引き換えにして手に入れた「便利さ」とはすなわち「時間」でもある。

洗濯機と洗濯板の価格差は数千倍、時間も数倍。すべての調べ物をGoogleではなく図書館で調べたら、人生で無駄にする延べ時間は考えることすらできない。そういった「時間と交換する」ためのひとつの方法として、AIスピーカーに目をもたせることを私はおすすめする。

その上で、高度なセキュリティを導入して最低限の安心感を得るのが共存の道だろう。

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