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スマートホーム(スマートハウス)の記事
2019.01.17
2019.12.25

あの「ルイ・ヴィトン」もIoTに参入 ーLPWAの波がIoTを変えるか?

記事ライター:Yuta Tsukaoka

おそらく世界で一番高価なトラッカー

読者諸氏は旅行が好きだろうか? 私は、知恵とテクノロジーと少しのお金を駆使して家を快適にすることに腐心しているので、旅行をする時間がない。要するに出不精というやつだ。

今回紹介したいのは、旅行好きであってもちょっと普通には手が出ない商品だ。それがこれ、あのルイ・ヴィトンが発売したトラッカーである。

ルイ・ヴィトンのポータブルデバイス「エコー」の商品画像
(画像引用:ルイ・ヴィトン ジャパン株式会社HP)
https://jp.louisvuitton.com/jpn-jp/products/louis-vuitton-echo-nvprod780041v#J11009

忘れ物や落とし物をトラッキングしてくれるガジェットはIoTの中でも売れ筋商品で、さまざまなメーカーから発売されているが、どれも数千円の域は出ない。そんな中、この「エコー」はさすがルイ・ヴィトンと言うべきか。税込みで42,120円だ。

おそらく、世界でもっとも高価なトラッカーだろう。

高いだけじゃない LPWAの成功例

ルイ・ヴィトンのモノグラムがデザインされたスーツケース
(画像引用:ルイ・ヴィトン ジャパン株式会社HP)
https://jp.louisvuitton.com/jpn-jp/products/horizon-70-monogram-nvprod530003v

しかしこれは、ただ高いだけではない。ルイ・ヴィトンのトラベルトランク「ホライゾン」との併用を前提として作られたエコーは、ただのトラッカーではない。LPWAの成功例である。

LPWAという言葉が初耳だという読者も多いだろうから、説明しておこう。Low Power Wide Ariaの略で、特定の通信規格を指す名前ではなく「低電力で広範囲の通信が可能な規格」全体を指す一般名称である。

たとえばBluetoothはこれに入らない。低電力ではあるが、20メートル前後の狭い範囲でしか通信できないからだ。ZigbeeやWi-Fiも同じく、LPWAとは呼ばない。

LPWAの代表的な規格は「Sigfox(シグフォックス)」だ。フランスの同名企業が2009年から提供していて、世界展開の際に1国1社にしかライセンスしない戦略で知られ、日本では京セラが事業者登録されている。

我々が日常的に使用している携帯電話回線と同じように基地局との通信を行うが、データ量と消費電力をぎりぎりまで抑える設計で、電池だけで10年稼働する。また、通信コストも年額100円からと格安な上、SIMが不要なので機器そのものも「使い捨てを前提とした利用も可能」なほど低価格だ。(※)
つまり、これが世界一高価なトラッカーになっているのは「ルイ・ヴィトンだから」である。

(※参考:京セラコミュニケーションシステム株式会社HP)
https://www.kccs.co.jp/sigfox/about/index.html

いま企画されている5GによるIoTのような大容量通信は不可能だが、たとえばガスや水道などのメーター自動検針や、コインパーキングの空き状況管理、荷物のポイント通過を監視する流通管理など利用用途は幅広い。

その1つの利用例が、ルイ・ヴィトンも採用した「トラッキング」である。

前述のように、通信容量がごく限られているので(京セラのサイトによると1度の通信が12バイトほどだという。半角12文字分だ)、リアルタイムトラッキングには向かないが、羽田を出たカバンがシャルル・ド・ゴール空港に無事到着したことは知ることができる。

もちろん、間違えてトロント空港に到着してしまってもそれが分かるし、40万円以上するこの高価なトランクが盗まれても位置を把握することが可能だ。

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LPWAがこれからのIoTを支える

LPWAがこれからのIoTを支える

女性が何らかのデバイスで通信をしている様子

LPWAはSIGFOXだけでなく、ソニーが開発した「ELTRES(エルトレス)」や「LoRaWAN(ローラワン)」、「LTE-M」「NB-IoT」など様々ある。どれも聞き覚えがないのは、これらがすべて「縁の下の力持ち」だからだ。しかし、これだけIoTが活況を呈しているいま、きっと日の目を浴びることもあるだろう。

その1つの成功例が、ルイ・ヴィトンの「エコー」なのだ。

今年のiedgeではLPWAの分野についても取材を重ねようと思っているので、ぜひ期待してもらいたい。

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