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スマートホーム(スマートハウス)の記事
2019.10.16
2019.12.17

スマートビルディングとは?IoTを活用したその仕組みやメリットデメリットについて【テクノロジー・AI入門編】

記事ライター:KEITA.SH

ITの進歩により、あらゆる身の回りのものがインターネットにつながり、人々の生活を便利にする「IoT(Internet of Things)」が浸透しつつあります。そしてIoTの動きは生活だけではなく、ビジネスにも大きな変化をもたらしています。代表的な例が「スマートビルディング(Smart Building)」です。

スマートビルディングを実現すれば、オフィスビルの電力の調整や危険なトラブルが起こる兆候を検知して未然に防ぐなど、ビルの管理が簡単になります。また会社のどこにいてもスムーズな作業が可能になり、業務生産性の向上も狙えます。

今回はスマートビルディングとは何か、そして特徴やメリット・デメリット、さらにはスマートビルディングに対する世界の動向もご紹介していきます。

▼この記事でわかる!

  • スマートビルディングの定義
  • スマートビルディングの特徴
  • スマートビルディングのメリットデメリット

 

スマートビルディングとは?

スマートホームは一般住宅向けに開発されたシステムですが、それに対してオフィスビルやショッピング施設などの建物を対象としているのがスマートビルディングです。家庭内またはオフィス内のあらゆる機器にセンサーやCPUなどのモジュールを組み込み、インターネット上で相互連携させて便利な生活を実現します。

スマートビルディングでは空調やトイレ、喫煙室など、あらゆる設備にモジュールを組み込みます。そしてインターネット上で連携させることで、従来ビルにあった課題を解決します。

スマートビルディングの定義は広いですが、現在は主にオフィスビルでの導入が進んでいます。日本でも「NTT」をはじめとして、建設業界や通信業界、IT業界などさまざまな企業がスマートビルディングによるソリューションサービスを提供しています。

 

スマートビルディングの特徴

スマートビルディングには、次の特徴があります。

最近出てきたスマート構想の一つである

スマートビルディングは、最近出てきたスマート構想の一つです。スマートフォンの登場からスマートウォッチ、さらにはスマートホームという言葉も誕生してきました。

これらに限らずIoTを駆使した取り組みは多様化しており、自動運転技術やそれに関連する新たなビジネスを実現する「スマートモビリティ」や、便利な社会を実現する「スマートシティ」などの構想もあります。スマートビルディングもそんなIoTを駆使したソリューションの一種です。

BEMSがもとになる

スマートビルディングを支えるシステムとして、「BEMS(Building Energy Management System)」があります。BEMSはビル用に最適化されたエネルギー管理システムのことで、電力使用量などを管理するために使われます。

まず各部屋や機器に、センサーや制御装置などのIoTモジュールを組み込みます。そして各部屋の温度や湿度、照明光量などを「センシング(センサーによって探知を行い、データを取得する)」します。

センシングされたデータは「中央監視制御装置」に送信され、どのくらいエネルギーを使っているか、温度や湿度はどれくらいかなどを把握します。そしてデータをもとに処理を行い、「空調は使いすぎだから弱風にする」、「照明は明るすぎるから少し暗めに設定する」などの適切な命令を制御装置に送り実行させます。

また、単に運転を効率化するだけではなく、外部から取得したエネルギー情報や過去の運転実績なども含め、この先どの程度の電力が消費されるかを予測する「需要予測」の役割も果たします。

スマートビルディングはこれらの機能を持ったBEMSをベースにして構築されます。

自由度が高く、さまざまな目的に使える

スマートビルディングで可能なことは、エネルギーの管理だけではありません。自由度が高いため、さまざまな目的に利用できます。
 

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スマートビルディングのメリット・デメリット

スマートビルディングのメリット

スマートビルディングを実現すると、次のようなメリットを受けられます。

適切にエネルギー管理ができるようになる

スマートビルディングでは、BEMSに基づきエネルギー管理を自動化できます。そしてデータをもとに処理を行うため、人的にビル管理をするよりもその場その場に応じた適切な管理ができます。

例えば空調の場合、少し暑くなれば少しだけ涼しくする、少し寒くなれば少しだけ暖かくするなど、社内の細かい温度管理というのは社員だけに任せるとなかなか難しいものです。そして企業の規模が大きくなればなるほど、空調をはじめとした経費は意外なほど高いコストを強いられるものです。企業としては効率よくエネルギー管理をしながら、コスト削減も実現したいというのが本音でしょう。

スマートビルディングでは、センサーがリアルタイムで各部屋の温度や湿度といった環境データを取得して制御装置に流します。そして制御装置もリアルタイムで処理を実行して命令を出すため、スムーズに適切な環境構築ができます。結果その場その場に応じて無駄のないエネルギー利用ができるためエネルギー管理にむらがなくなり、コストも削減できます。

経費削減や省エネに課題を抱える企業にとって、スマートビルディングは有効なソリューションの一つになります。

業務効率化やトラブル防止などにも利用できる

スマートビルディングでは、ビル内にIoTモジュールを設置して社員の管理も可能です。

例えば、出社時に顔認証で社員の出社を確認してシステム内へ自動的にログイン。席に座ったときにパーソナルデータをもとに、その社員の作業状況を一瞬で構築して提供できます。社員はいちいち自分で準備をせずに適切な環境ですぐ作業に入れます。また会議があれば社員に自動で呼び出しをかけ案内を行い、外出中の車の中でも自社システムと連携して作業ができるようになります。

このようにスマートビルディングは、業務効率化にもつながります。またトラブル防止の手段としても、スマートビルディングは有効です。

例えば照明の調子が悪いときはそれをいち早く感知して、大きな影響が出る前に交換を通知したりできます。また喫煙室の温度を感知して、火災を検知した場合には社員に知らせるなど、重大な事故に発展する前に対処ができるようになります。

設備の状態管理やトラブル防止など、エネルギー管理だけにとどまらないメリットがあるのも、スマートビルディングの魅力です。

将来的にも有効なアプローチである

現在企業に求められているのは、「デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)」です。デジタルトランスフォーメーションはITを駆使して、会社のビジネスモデルや仕組み、働き方自体を大きく変革して新時代に対応しようという概念です。

そしてIoTを組み込み効率的なビル管理などを可能にするスマートビルディングは、デジタルトランスフォーメーション実現に向けた一歩としても非常に有効な手段です。IoTモジュールと業務がフルに連携する環境を当たり前のものにすれば、デジタルトランスフォーメーション実現のための大きな足掛かりにできます。

また将来的には「スマートロボット(AIやIoTを駆使したロボット)」が業務で活用される状況が普通になる可能性があります。この際事前にスマートビルディングでIoTネットワークを構築しておけば、スマートロボットの導入及び自社システムとの連携も簡単になり、スムーズに対応できるでしょう。

このように企業の将来性からみても、スマートビルディングは有効なアプローチのひとつと言えます。
 

スマートビルディングのデメリット

一方で、スマートビルディングには次のようなデメリットもあります。

セキュリティ面で不安が残る

スマートビルディングは、インターネットに接続してエネルギー管理などを行います。しかしその分、セキュリティ面で不安が残ります。

現在IoTのセキュリティ技術は向上していますが、まだまだ新しい技術のため発展途上の段階にあると言わざるを得ません。セキュリティ設定が緩いと外部から簡単に侵入され、機密データを盗まれたりする危険性があります。

これからの時代は特にセキュリティに関して、社員一人一人が適切なリテラシーをもったうえで運用していくことが望ましいです。スマートビルディングにおいても導入前に社内研修を行い、課題や注意点などをしっかり共有してセキュリティに関する知識を身につけておく必要があります。

トラブルが起きると、誤作動などで損害が発生する可能性もある

スマートビルディングを導入する上では、セキュリティだけでなくトラブルが起きたときの対応も重要になります。例えば電力供給がストップしたり、中央制御装置の不具合が出たりした場合に、何も対策を行わないとシステム自体が機能しなくなったり、誤作動が起きて損害が発生する可能性もあります。

スマートビルディングでトラブルが起きたときにしっかり対策ができるように、社内ないしは社外に迅速に対応できるスタッフを用意しておくと安心です。

ある企業では業務サーバーが停止して業務が行えなくなりましたが、あらかじめ用意していた体制に基づき復旧作業を実施。数時間で復旧させて損害を回避しました。スマートビルディングでもトラブルが起きないようにメンテナンスを行いながら、万が一トラブルが起きてしまった場合も、予備電源の確保などによって復旧できる環境を構築しておきましょう。

世界のスマートビルディングの動向について

世界各国ではスマートビルディングの建設が大きなトレンドとなっています。CISCOやIBMといった世界的大企業がシステムを開発しており、Microsoftではスマートビルディングに関するオンラインセミナーなどを積極的に行い、情報を発信しています。

もちろん、日本においてもスマートビルディングは進んでいます。大手ではNTTがスマートビルディング用ソリューションサービスを提供しています。またソフトバンクなどもスマートビルディングに関する認証実験を行っており、今後の取り組みに注目したいところです。

 

スマートビルディングの今後

今回はスマートビルディングとは何か、そして特徴やメリット・デメリットなどをご紹介してきました。IoT進歩により、さまざまなものがインターネットにつながるようになりました。そしてその流れで、スマートビルディングなどビジネス向けのソリューションも広がっています。

セキュリティリスクなどの不安はありますが、メリットの大きいスマートビルディングは、今後ますます普及していくでしょう。

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