さて、みなさんは楽しくホームIoT生活を送っているだろうか。
残念ながらそうでもない、という読者も多いだろう。ホームIoTの導入で逆に手間が増えたと思っている人もいるかもしれない。
しかし ―― 残酷な事実ではあるが、使いこなせていないということに尽きると私は思う。
そこで、今回の記事では、ホームIoTで最初につまづく「シーン」と「ルーチン」の使い分けについて解説しよう。
どちらも定型の動作を指示するためのもの
「シーン」と「ルーチン」。
ホームIoTの構築にとりかかると、すぐにこの言葉に突き当たり、そしてうまく理解できずに前へ進めなくなってしまう人が多いと思う。
これは言葉の選び方にも、そもそもホームIoTというコンセプトの設計にも問題がある。どちらも「定型の自動操作」のために使われる用語なので混乱しやすいのだ。
一応、できるだけ分かりやすくそれぞれの言葉を解説するならば
ルーチン:特定のトリガーによって起動するホームIoTガジェットの自動操作のこと
シーン:特定のホームIoTガジェットをまとめて特定の状態にすること
となる。しかし、まだ分かりにくいだろう。
使いこなせば便利な「ルーチン」と「シーン」
たとえば、「映画を見るときにシーリングライトを消してテレビの間接照明をオンにする」という動作を実現したい場合、ルーチンとシーンを理解していないと以下のような手順を踏むことになる。
1.AIスピーカーにシーリングライトのオフを指示
2.つづけて、AIスピーカーに間接照明のオンを指示
このように、2回もAIスピーカーに声をかけなくてはいけない。これなら、自分でスイッチを押したほうが早い。
しかし、ルーチンとシーンを正しく使っていれば、
AIスピーカーに「映画を見るよ」と言う
この1アクションで「シーリングライトをオフ」と「テレビの間接照明をオン」の両方を実現できる。
これが、「ルーチン」と「シーン」を組み合わせて使うメリットだ。
では続いて、このとき何が起こっているのかを解説しよう。
「シーン」を用意し、「ルーチン」で起動する
手順でいえば、まずは「シーン」を用意しておくことが必要だ。
先ほどの例で言えば「シーリングライトが消えていて、テレビの間接照明がオンになっている」という状態を「シーン」として登録しておくことになる。
我が家では、シーリングライトは「Nature Remo」が、テレビの間接照明は「Smart life」がそれぞれ直接操作できるアプリなので、各アプリでシーンを登録しておく。(シーン名は適当に「映画」とか、何でもいい)
続いて、Google HomeやAmazon AlexaといったAIスピーカーのアプリで「ルーチン」(Alexaでは「定型アクション」)を設定、キーフレーズを「映画を見るよ」とか「映画のシーンにして」などに設定した上で、さっき作った「シーン」を起動するように設定する。
これで、ワンフレーズで「シーリングライトが消え、テレビの間接照明がオンになる」という動作を実現できる。
最後に「シーン」と「ルーチン」の使い方をおさらい
「シーン」と「ルーチン」の使い分けはわかっていただけただろうか。
使いこなすと非常に便利なので、最後におさらいとちょっとした応用をお教えしたい。
室温が18度を下回ったらオイルヒーターをオンにしてサーキュレーターをオンにする
トリガーとなる条件:室温が18度未満になったとき
設定しておくシーン:オイルヒーターとサーキュレーターをオン
必要となるガジェット:温度センサー、スマートIRリモコン、スマートプラグ
この場合、スマートプラグの管理アプリとスマートIRリモコンにそれぞれ「仕事部屋の暖房オン」などの名前でシーンを作っておき、温度センサーが18°未満になったときにそれらの「シーン」を起動するように設定すればいい。
自宅を出るときにエアコンと全ての照明をオフにする
トリガーとなる条件:AIスピーカーへ「いってきます」と呼びかける
設定しておくシーン:全ての照明とエアコンをオフにする
必要となるガジェット:AIスピーカー、スマート照明、スマートIRリモコン など
「外出中」のような名前で、シーンに各家電の状態を設定しておくといいだろう。筆者の家で言えば、照明はIKEAのTRÅDFRI(トロードフリ)とNature Remoが、エアコンは同じくNature Remoが操作できるので、各アプリからシーンを登録する。
その上で、各シーンを起動するためのキーフレーズをAIスピーカーに設定しよう。「いってきます」のような言葉がいいだろう。
自宅が近くなったら家の明かりをすべて点ける
トリガーとなる条件:GPS情報
設定しておくシーン:全ての照明をオン
必要となるガジェット:スマート照明、スマートIRリモコンなど
これは少し上級編。
IFTTTで事前に設定したエリアにあなた(正確にはあなたのスマートフォン)が入ったら、照明をオンにするという設定になる。IFTTTを使うとホームオートメーションのトリガーにさまざまな条件を設定できるようになる ――たとえば、SMSやSlackで特定のメッセージを送ったとき、特定のWi-Fiに接続されたり接続が切られたりしたとき、自宅に設置したネットワークカメラが人間を検知したとき、など多様な設定が可能だ。
IFTTTを使ったホームオートメーションについては別に記事を作って解説しよう。
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