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スマートホーム(スマートハウス)の記事
2018.10.09
2019.12.26

AIはデータを食べて成長する ーテクノロジコングロマリットの覇権は続くのか

記事ライター:Yuta Tsukaoka

AIはデータを食べて成長する

空の食器とカトラリーが並べられている机

いま、世界中でAI活用が進んでいる。猫も杓子も「AIを搭載しました」「AIでより便利に」の大合唱 ーー細かいことはよくわからないがすごい、という印象を植え付けようと必死になっているように見える。

iedge読者には今さら言うまでもないことがだが、AIとは要するにデータの解析・処理を行うコンピュータプログラムである。その解析と処理のアルゴリズムがそれぞれ適所最適化され、たとえばチェスや将棋は人間よりも強くなったし、Netflixは次に見るべき作品を教えてくれるようになった。

そのようなアルゴリズムの組み立ては優秀なエンジニアがいれば実現できるが、大前提として解析すべき「データ」があってのことである。料理をいくら覚えても、食材がなければ何も作れないということに近い。

チェスや将棋は伝統的に残されてきた棋譜がいくらでも存在するし、Netflixは1億人を超えるユーザーの視聴データが毎日、数百万数千万と流れ込んでくる。
AIが驚きや便利さを提供してくれる裏には常にこのようなデータ群があり、それを活かすアルゴリズムがあるのだ。

 

次世代経済の覇権を握るのはデータ資本を持つプレイヤー

分厚いファイルや書類が散乱している様子

経済は常に成長 ーーすなわち、少ない元手で多く稼ぐ方向へと動いている。そのため、与信管理や顧客データ管理といった単純作業はAIに取って代わられると言われているし、ウェブサービスの多くはAIの導入によってサービスの利便性を向上させてユーザーを集め、利益を上げている。

すでに経済成長にとって欠かせない重要なパーツとなったAIは、繰り返しになるが良質で大量のデータを必要とする。つまり、データを持っているプレイヤーにこそ、勝利を収める資格があるのだ。

では、そのような ーー経営資源として有効なデータはどこから生まれるのだろう?もし私がそれを知っていたら、絶対に記事になどせず一人で大儲けしているだろうが、残念ながら知らない。しかし、そのヒントとなりそうな例え話を聞いたことがある。曰く、

データとは原油のようなもの。なぜなら、
・不純物が多すぎる
・精製しないと価値がない
・用途に応じて使い道が幅広い
・探せばいろいろな場所から出てくる
・出てくる量や質はまちまち

うまい例えだ。

そう、データはどこにでもある。一見なにもない荒野から、地下に埋まった油田を探し出し、吸い上げて精製する技術があれば誰でも良質のデータを手に入れるチャンスはあるのだ。

データの持つ重要性にいち早く気が付き、ビジネスに活用して莫大な利益を上げている成功者たちがいる。
それが、GAFA ーGoogle, Apple, Facebook, Amazonをはじめとした巨大テクノロジコングロマリットたちだ。

彼らは、無料で使いやすいサービスや誰しもを魅了するガジェットでユーザーを掴んで離さず、データの湧き出る「油田」を占領している。

彼らに勝ちうるデータの油田を見つけることは可能なのだろうか? AI時代の経済はやはり、テクノロジコングロマリットが握ってしまうのだろうか。

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データ保護の動き

 

データ保護の世界的な動き

電子基板と錠前

世界中のプライバシー、セキュリティ担当者を震撼させたGDPR(EU一般データ保護規定)や、2020年施行が決定したCCPA(カリフォルニア州消費者データ保護法)など、データ保護の動きが強まっている。

それぞれについて細かい解説はここでは控えるが、要するに、従来世界の経済における「独禁法」のように、新しい資本家 ーーデータ資本家による市場の独占を防ぐ意図があることは間違いない。

また、GDPRやCCPAから端を発した「マイデータ( Mydata, Midata)」というムーブメントも無視できない。欧州を中心に起こっている「自分のデータの共有先を自分で選ぶ」という思想から、政府主体の取り組みとして広がりを見せているこの動きは、まもなく日本にも波及するだろう。

これまでブラックボックスに放り込んで自由に使ってきた顧客の個人データが白日のもとに晒されることになるので、GAFAをはじめとしたテクノロジコングロマリット ーー特に広告ビジネスを主体としているプレイヤーに与える影響は甚大である。

消費者の無知、無関心、無警戒を前提としたデータ利用は今後一切できなくなると言っていいだろう。秘匿されてきたパートナー間でのデータ共有、オプトアウト不可能なデータ販売…こういったものはもう許容されなくなる。

そのとき、データの油田を掘り出し精製するのに必要なのは「無料で便利なサービス」や「素敵なガジェット」ではなく、消費者がデータの共有先として認められるほどの「信頼」に他ならない。

 

資本主義経済からデータ経済、そして信用経済へ

ビジネスマンがデータが入ったファイルを手渡ししている様子

AIが経済の根幹に入り込むことによる影響について考えてみたが、その意外な大きさに驚いた読者もいるかもしれない。

人間の仕事がAIに奪われる危機よりももっと先に、消費者による信頼を得られない企業はデータを収集することができずに時代に取り残され、潰れてしまう。

信頼を得るための経営活動については、「フリー」や「シェア」で有名なレイチェルボッツマンの新著「トラスト」で詳しく語られているので、近いうちに紹介したいと思う。

生活を便利で刺激に満ちたものに変えてくれるAIは一方で、データの価値を上げ過ぎてしまう。その危険性にまずは気づいてもらえると嬉しい。

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