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スマートホーム(スマートハウス)の記事
2019.05.13
2019.11.26

ホームIoTを進化させる「Wi-Fi 6」導入すべき? しばらく待つべき?

記事ライター:Yuta Tsukaoka

ここ数年以内にWi-Fiルータを買い替えたという読者は少なくないだろう。なんとなく速度が遅いなと感じたときや、引っ越しのタイミングは買い替え時だ。私の家も、今年に入ってから速度改善のためにメッシュネットワークを導入している

では、Wi-Fi 6対応のルータが発売されたらすぐに買うべきだろうか?
これまでiedgeに書いてきたWi-Fi 6の記事を読んでいると、タイミングが合えばすぐにでも買っていいんじゃないかと考える読者もいるかもしれない。しかし、実は違う。

買い替え前にチェックしておきたいポイントをまとめたので、まずは冷静になって自宅のネットワーク環境を見直してみよう。

いま使っているWi-Fiルータのバージョンは?

画像引用元:www.wi-fi.org

Wi-Fi 6の大きな特徴の一つに、2.4 GHz帯と5GHz帯の電波が併用できるというのがある。Wi-Fi 5(IEEE 802.11 ac)では採用されず「古い技術」として捨てられつつあった2.4GHz帯をWi-Fi 6は改めて採用したのだ。

詳しくは別の記事に書いているが、2.4GHz帯は遅いかわりに障害物を越えて電波を届ける性能が高く、また、遠くまで届くためIoTに向いているのだ。その点でも、Wi-Fi 6が明らかにIoTを見据えた新規格であることが伺える。

さて、ではここで自宅のWi-Fiルータを見てみよう。初期パスワードなどが書いてある裏面の小さなシールに規格名が書いてあるはずだ。もしそこに「IEEE 802.11 n」という文字があれば、まずはWi-Fi 6の導入について見直しをしてもいいだろう

実は、Wi-Fi 6から見ると2つ前の古い規格である「IEEE 802.11 n(通称 Wi-Fi 4)」もまた、2.4GHz帯と5GHz帯の両方を使えるのだ。
この「IEEE 802.11 n」のWi-Fiルータを利用していて、かつ、次の章で解説するもう一つの条件が当てはまる場合はWi-Fi 6の導入は一旦、見送ってもいいだろう。

自宅インターネット回線の速度は?

Wi-Fi 6にはさまざまな新機能があるが、中でもその恩恵が分かりやすいのが「速度」だろう。
いま最新の規格である「IEEE 802.11 ac(Wi-Fi 5)」は理論上の最高通信速度が6.4Gb/sであるのに対し、Wi-Fi 6ではその約1.5倍となる9.6Gb/sもの速度が出せる。

分かりやすく表現してみると、4Kの映画(90分=約76Gb)のデータを約8秒でダウンロードできる計算だ。異次元の速さと言っていいだろう。

このような高速通信を使おうとするとき、ボトルネックになるのが「自宅インターネット回線速度」だ。
たとえば、マンションに住んでいる読者の多くが、光回線のマンションタイプ(集合住宅タイプ)を利用していると思う。その場合、せいぜい速度の上限は1Gbp/s程度だろう。

つまり、自宅に引いているインターネット回線の速度が1Gb/sなのであれば、Wi-Fi 6がいかに高速であろうとも、それ以上の速度は出ないということになる。当然、導入については見直してもいいだろう。

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Wi-Fi 6を利用するメリットは?

それでもWi-Fi 6を利用するメリットは?

私もそうだが、iedgeを読んでいる読者の多くが「それでも、最新の規格を使いたい!」と思っているだろう。わかる。非常によくわかる。
では、Wi-Fi 6を導入すべき場合について考えてみよう。

ホームIoTガジェットを大量導入する場合

普段はあまり意識をしないと思うが、Wi-Fiルータには「接続数の上限」がある。1万円以内で買えるミドルレンジのWi-Fiルータであれば、おおよそ30〜50ほどだ。
ホームIoTを本格化させていくと、この数字が少ないことに気が付くだろう。私の自宅を例に挙げれば、Wi-Fi接続機器は30を超えているので一般的なWi-Fiルータでは接続に障害が発生する可能性がある。

そこでWi-Fi 6だ。「直行周波数分割多元接続(OFDMA)」と呼ばれる新技術が理由である。言葉は難しいが、要するにタコ足配線に似た技術で、ひとつのチャネルで複数の通信を束ねることができる。これによって安定した多接続を実現しているので、ホームIoTガジェットを大量に導入するつもりがあるのなら、飛びついてもOKだ

5Gルータを導入予定の場合

日本でも2020年には一般に利用されるようになる予定の「5G」の理論上の最高速度はなんと20Gb/sだ。これまで見てきた数字と比較して、まさしくケタ違いであることが分かるだろう。Wi-Fi 6の理論上の最高通信速度と比較して倍以上の余裕がある。

実際の利用シーンでは、アンテナの位置や基地局との距離などの条件によって5G側の速度が遅くなるだろうが、それでもWi-Fi 6の速度に対し「ボトルネックになる」ということは、少なくともないだろう。

実際いつから買える?

Wi-Fi 6対応のWi-Fiルータ「RT-AX88U」(画像引用元:www.asus.com/jp/

では、実際に導入しようとした場合、いつから購入できるのだろうか。
実はルーターについてはもう発売されている。ASUSの「RT-AX88U」がそうだ。技適も取得し、日本国内で合法的に入手することができる。
執筆時点のAmazon価格は47,180円と、なかなかの高級機である。

一方、Wi-Fi 6の受信に対応したスマホやPCはもう少し先になるだろう。おそらく、2019年後半から2020年前半に発売されるフラグシップモデルから対応していくと思われる。

その頃にはルータの価格もこなれてきて購入しやすくなっているのではないだろうか。

まずは自宅のWi-Fiルータとインターネット速度を確認 それでもロマンは捨てられない

画像引用元:www.wi-fi.org

ここまで読んでみると分かるだろうが、Wi-Fi 6はあまりに高速なため、インターネット速度がボトルネックとなりえる。1Gb/s程度の光回線を入れている家庭の場合、むしろ2つ前の「IEEE 802.11 n(Wi-Fi 4)」のルータを使うほうがメリットがあるかもしれない。

しかし、久しぶりのWi-Fi規格更新に胸が踊って仕方がないという読者は少なくないだろう。そうなのであれば、実用は一旦無視してロマンを優先して導入してもいいと思う。これから様々な対応ルータが発売されるはずなので、機器のレビューをよく読み、気に入った製品を選ぼう。

もちろん、私も人柱として読者の役に立つつもりだ。

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