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スマートホーム(スマートハウス)の記事
2019.05.22
2019.12.18

2020年中に実用化される「Wi-Fi 6」はこれまでのWi-Fiと何がちがう? ホームIoT普及の切り札となるワケ(後編)

記事ライター:Yuta Tsukaoka

前編では、これまで私たちが使ってきた「Wi-Fi 4(IEEE 802.11 n)」と「Wi-Fi 5(IEEE 802.11 ac)」の解説を踏まえて、それらの「いいとこどり」をした規格として「Wi-Fi 6」を紹介した。

整理すると、

・Wi-Fi 4が持つ電波干渉への強さ
・Wi-Fi 5が持つ速度

のそれぞれを両立した規格という解説をした。この後編をより正しく理解するためにも、詳しい内容はぜひ前編を読んでみてほしい
そして、この後編では「いいとこどり」のさらに先をいく「+α」の要素について取り上げようと思う。

技術的な話もあるが、前編と同じく噛み砕いてできるだけわかりやすく解説しよう。

「古い規格」であるはずの2.4GHz帯が復活

ホームIoTの観点からみると、まず注目したいのがここだ。
Wi-Fi 6では、「2.4GHz帯」と「5GHz帯」それぞれの電波を利用することができる。2.4GHz帯は電子レンジなどとの電波干渉があるため、Wi-Fi 5では採用されず「古い規格」となった。

しかし、そんな2.4GHz帯にもいいところがある。遠くまで届き、かつ、障害物を超える能力が高いのだ。

紐に例えるとわかりやすい。
5GHz帯が「太く短い、ぴんと張った紐」なのだとすれば、2.4GHz帯は「細く長い、ゆるい紐」なのである。つまり、5GHz帯は速度が出るかわりに直進性が高く、たとえばドアや壁を挟むと速度が落ちたり、そもそも届かなくなってしまうこともある。
一方、2.4GHz帯は(あくまでイメージだが)ゆるく張った紐なので障害物の脇をすりぬけ、なおかつ遠くまで電波が届くのだ。

たとえば、スマートテレビでNetflixを見るときのように、大量のデータを送る必要がある場合には5GHz帯が向く。しかし、ホームIoTガジェットのように、機器をオン・オフするような小さいデータを送るだけであれば、2.4GHz帯のほうが理にかなっているということになる。

我が家では、家具の裏で、かつケーブルボックスの中に隠されたスマートプラグがいくつかあるが、すべて2.4GHz帯で接続されているため問題なく電波が届いている。5GHz帯では、家具が邪魔で届きにくいところだ。

より多くの端末と同時接続ができる

Wi-Fi 6には「直行周波数分割多元接続(OFDMA)」という技術が採用されていて、多くの端末を同時に接続することが可能になっている。
おっと、難しい言葉が出たからって逃げないでほしい。これは要するに、タコ足配線に似た技術だ。

これまでのWi-Fiでは、ひとつのコンセントにひとつの機器しか接続できなかった。Wi-Fi 6では、そのコンセントをタコ足配線にして、より多くの機器を接続できるようになった、という理解でいいだろう。

現実のタコ足配線に電気ストーブのような電力の大きい機器を接続すると危険であるように、Wi-Fi 6のタコ足配線にもあまり大きなデータを送ることはおすすめしない。
しかし、これまで書いてきたようにホームIoTデバイスが必要とするデータ量はごくわずかだ。その代わり、数が多い。
このような「小さいデータを多くの場所で送受信する」といった使い方に非常に向いた機能なのである。

もちろん、これまで通り大きいデータを送ることもできる。コンセント直挿しとタコ足配線、そのどちらも自由に使えるのがWi-Fi 6だ。

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データ通信の事前予約が可能?

データ通信の事前予約が可能

これまで、IoTガジェットによる通信はデータ量が非常に小さいということを繰り返し書いてきた。もうひとつ、重要な特徴がある。それは通信の頻度が低いことだ。

たとえば、スマートプラグは「オン」と「オフ」のタイミングでしかデータ通信を行わない。しかし、もっと頻度の低いものもある。サーモスタットなどの環境メーター系だ。
1時間に1回程度の通信頻度で済むはずのガジェットに対し、常に通信待機状態でいるのは効率が悪い。そういうとき、Wi-Fi 6に搭載される「Target Wake Time(TWT)」という機能が役に立つ。事前に設定した時間にだけ通信をすることができるのだ。

まとめ

画像引用元:www.wi-fi.org

どうだろう。ここまで前後編でWi-Fi 6とホームIoTの関係を解説してきた。
もう一度ここでまとめてみよう。

・障害物を回避し、長い距離届くため家のさまざまな場所に設置されるIoTガジェットとの通信に向いている
・多くの機器を同時接続できるので、スマート電球やスマートプラグなど機器が増えやすいIoTガジェットに向いている
・通信するデータ量が非常に小さく、頻度も低いIoTガジェットに向いた機能が搭載される

といったところだろう。
しかし、導入には注意も必要だ。その点は別の記事にまとめるので、ぜひそちらを読んでほしい。

2020年の実用化が楽しみである。

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