前編では、これまで私たちが使ってきた「Wi-Fi 4(IEEE 802.11 n)」と「Wi-Fi 5(IEEE 802.11 ac)」の解説を踏まえて、それらの「いいとこどり」をした規格として「Wi-Fi 6」を紹介した。
整理すると、
・Wi-Fi 4が持つ電波干渉への強さ
・Wi-Fi 5が持つ速度
のそれぞれを両立した規格という解説をした。この後編をより正しく理解するためにも、詳しい内容はぜひ前編を読んでみてほしい。
そして、この後編では「いいとこどり」のさらに先をいく「+α」の要素について取り上げようと思う。
技術的な話もあるが、前編と同じく噛み砕いてできるだけわかりやすく解説しよう。
「古い規格」であるはずの2.4GHz帯が復活
ホームIoTの観点からみると、まず注目したいのがここだ。
Wi-Fi 6では、「2.4GHz帯」と「5GHz帯」それぞれの電波を利用することができる。2.4GHz帯は電子レンジなどとの電波干渉があるため、Wi-Fi 5では採用されず「古い規格」となった。
しかし、そんな2.4GHz帯にもいいところがある。遠くまで届き、かつ、障害物を超える能力が高いのだ。
紐に例えるとわかりやすい。
5GHz帯が「太く短い、ぴんと張った紐」なのだとすれば、2.4GHz帯は「細く長い、ゆるい紐」なのである。つまり、5GHz帯は速度が出るかわりに直進性が高く、たとえばドアや壁を挟むと速度が落ちたり、そもそも届かなくなってしまうこともある。
一方、2.4GHz帯は(あくまでイメージだが)ゆるく張った紐なので障害物の脇をすりぬけ、なおかつ遠くまで電波が届くのだ。
たとえば、スマートテレビでNetflixを見るときのように、大量のデータを送る必要がある場合には5GHz帯が向く。しかし、ホームIoTガジェットのように、機器をオン・オフするような小さいデータを送るだけであれば、2.4GHz帯のほうが理にかなっているということになる。
我が家では、家具の裏で、かつケーブルボックスの中に隠されたスマートプラグがいくつかあるが、すべて2.4GHz帯で接続されているため問題なく電波が届いている。5GHz帯では、家具が邪魔で届きにくいところだ。
より多くの端末と同時接続ができる
Wi-Fi 6には「直行周波数分割多元接続(OFDMA)」という技術が採用されていて、多くの端末を同時に接続することが可能になっている。
おっと、難しい言葉が出たからって逃げないでほしい。これは要するに、タコ足配線に似た技術だ。
これまでのWi-Fiでは、ひとつのコンセントにひとつの機器しか接続できなかった。Wi-Fi 6では、そのコンセントをタコ足配線にして、より多くの機器を接続できるようになった、という理解でいいだろう。
現実のタコ足配線に電気ストーブのような電力の大きい機器を接続すると危険であるように、Wi-Fi 6のタコ足配線にもあまり大きなデータを送ることはおすすめしない。
しかし、これまで書いてきたようにホームIoTデバイスが必要とするデータ量はごくわずかだ。その代わり、数が多い。
このような「小さいデータを多くの場所で送受信する」といった使い方に非常に向いた機能なのである。
もちろん、これまで通り大きいデータを送ることもできる。コンセント直挿しとタコ足配線、そのどちらも自由に使えるのがWi-Fi 6だ。
データ通信の事前予約が可能?