IoT(モノのインターネット化)もどんどん進み、あらゆる物がインターネットにつながるのが当たり前の時代になってきました。また「東京オリンピック」などのイベントを控え、外国人流入客も含めた誰もがネットへ快適に接続できる環境の整備が急務に進んでいます。
そのような状況の中、配備が進んでいるのが「5G (5th Generation)」。4Gの後継として注目が集まっていますが、「そもそもどういう仕組みなの?」と具体的に知らない方も多くいらっしゃいます。5Gが一般に広まると、まさに画期的な新しいインターネット世界が到来します。
今回はそんな次世代モバイル通信5Gとは何か、その特徴やできること、これまでとの違い、そして5Gが持つ価値まで詳しく解説します。
▼この記事でわかる!
- 次世代モバイル通信5Gとは何か
- 5Gにできること、実現されること
- 5Gの技術で発展する業界について
5G(第5世代移動通信システム)とは何?
そもそも5Gとは、どういった仕組みなのでしょうか?
5Gとは新しい移動通信方式(スマホなどモバイル端末向けのデータ送受信方式)のこと。日本では「第5世代移動通信システム」と訳されます。
2020年代は2010年と比較してインターネットのトラフィック量(データ通信料)がウェアラブルデバイス(スマートウォッチ)や4Kと8K、VRコンテンツなどの普及により、1000倍以上になることが予測されています。その中で4Gなど、既存の移動通信方式ではそのすべてを処理するには限界が見えています。
5Gでは同じ場所で端末の超多数接続が行われても、スムーズにインターネット接続できるようになっています。これにより今後IoTがますます進んで1人1人が複数のネット端末を持っていても、電波が途切れて使えないなどの致命的な問題が起こらなくなります。
また5Gでは4Gとは比較にならない超高速と大容量化を実現。今まででは考えられないようなスピードでインターネット通信を行うことが可能です。
また既存の移動通信方式では「通信の遅延」が発生することも多く、技術応用が不可能な分野も存在していました。5Gではこのようなデメリットも払しょくしており、低遅延でシームレスなインターネット接続が可能です。
5G最大の特徴はこの3つ
先ほども言及したように、5Gには以下の3つの大きな特徴があります。
①超多数接続が可能
ウェアラブルデバイスや「Google Home」などのスマートスピーカーを思い浮かべるとわかりやすいですが、現在IoT化が世界でどんどん進んでいます。例えば現在でもウェアラブルデバイスを通してのメール通知受け取りや通話、そしてスマートスピーカーを通じての家電の音声命令処理(電灯を消す、テレビをつけるなど)は可能です。
今後はさらにそこから一歩進んで、電力・ガスといったインフラのメーターに通信装置を組み込んだり、自動車に通信装置を組み込んで完全な自動運転を実現したりと、インターネットに接続しないと私たちの生活が成り立たないところまでIoTが普及するでしょう。そのような中で多数の機器がインターネットに接続できない状態になると、電波が途切れてインフラがうまく機能しなくなったり、自動車事故を引き起こしたりと社会のリスクが増えてしまいます。
5Gでは超多数の端末が同時に接続しても途切れることのない技術。「1平方キロメートル当たり100万以上」の情報端末を同時に通信回線に接続できます。同じ指標で計測すると同時接続可能台数は4Gの100倍以上にもなり、5Gがハイスペックであることがよくうかがえる数値です。
現在世界では90億台以上の携帯電話が使われています。これに同じく移動通信方式を使うウェアラブルデバイスや他の機器が合わさると、4Gがまかなえる150億台という数値を近いうちに超えてしまう可能性すらあります。
IPアドレスの割り出し方式である「IPv4」についても、約43億個しか生成できないのが問題になり、IPアドレスの枯渇問題と呼ばれています。そこで新しいIPアドレス割り出し方式である「IPv6」が登場し、340澗(340兆×1兆倍×1兆倍)個という膨大な数を割り出せる、将来の情報機器の急増にも耐えうる新時代のIPアドレス方式として普及しつつあります。
5Gでもこれと同じことが言えます。旧式になりつつある4Gに代わる、インターネット接続機器の急増に耐えうる新時代の移動通信方式として5Gの普及が望まれます。
②超高速通信が可能
現在移動通信方式で一般的な4Gの通信速度は、「0.1 Gbps~1Gbps(1秒間に0.1~1ギガビットの通信が可能)」です。もちろん最高値である1Gbpsというのは技術上の最高速度で、実際に利用する際はもっと遅くなります。
現在4K(3920×2160のディスプレイ解像度)や8K(7940×4320のディスプレイ解像度)という従来よりもはるかにデータ量が多い映像形式がシェアを広げつつあります。また2次元ではなく3次元のデジタル現実世界を楽しめるVR(仮想現実)技術も広まりつつあります。
こういった新しい映像形式は、従来の映像形式よりも1秒間あたりに送信しなければならないデータ量が莫大になります。4Gで最新の映像技術に対応しようとすると、1秒間あたりに送れるデータ量の不足で映像が劣化したりと、快適な映像体験に十分なスペックをクリアできません。
5Gの通信速度は、「最高20Gbps以上(1秒間に20ギガビットデータを転送できる)」。つまり最高速度で比較すると5Gの通信速度は4Gの20倍以上にもなります。
またFTTH(家庭用の光回線)でも一般的な最高速度は「1Gbps(1秒間に1ギガビットデータを転送できる)」。5Gを使うと固定回線であるFTTHの速度すらはるかに凌駕するスピードで通信が可能になる計算になります。
これだけの速度が出せれば、移動通信方式で4Kや8Kレベルの高精細の動画を視聴しても劣化が全く起きず、スムーズな動画視聴が可能です。またVRのような、2次元映像よりもさらに速度の必要な3次元の膨大なデータも無理なく転送できるでしょう。将来の映像方式についてまで考えるならば、5Gの普及は必須です。
③低遅延である
「LINE」や「Skype」といったインターネット間の電話で相手の声や自分の声が遅れたりすることがありますよね。これは実際のデータが少し遅れて相手や自分に届くからです。これをデータの遅延と言います。
4Gでも10ms(0.01秒)ほどと、それなりにデータ転送の遅延が少ない仕組みにはなっています。しかし結局上記のインターネット間の通話サービスではサービス利用時気になる遅延が発生することになります。
また、例えばVRで実現できる触覚技術は、データ通信をもとに電気信号を起こし、それを人間の手に伝えることで、目の前のVRでできた人や物を触ったときにあたかも本当に触っているかのような感覚を得ることができます。しかしこういった「現実とデジタルの境目をなくす技術」は、データの遅延が起きると触った後に数秒遅れて触った感覚が手に起きるなどの事象が起こり、実用的なものではなくなってしまいます。
さらに自動運転。自動運転の技術は、交通システムや他の自動車など、運転に必要なデータを高速で送受信して、車周辺の交通状況も情報取得しながら車に適切な命令を出す必要があります。
このときに遅延が起こったらどうなるでしょう。リアルタイムで情報処理できないとハンドルを切り損ねて直進してしまったり、ストップしなければならないところで車がすぐに止まらず、衝突事故まで引き起こしかねません。
5Gは4Gよりもさらに低遅延。1ms(0.001秒)以下と、4Gよりも10倍以上データを素早く転送できる計算です。
これだけスムーズにデータ転送できればVRの触覚技術でのリアルな触覚体験、自動運転での安全な自動車運転管理など、将来の技術の課題を次々に解決することが可能です。また携帯電話大手のソフトバンクが5G実現に向けた実験の一環で、1ms以下の低遅延通信に既に成功している事例もあります。今後5Gが普及したときは、1msを超える低遅延通信が可能になるかもしれません。
5Gにできること、実現されること
ここでは5Gを実装することでできるようになること、そして実現されることをみていきましょう。
スポーツ
サッカーや野球、そして2019年に日本でワールドカップが開催されるラグビーなど、スポーツの観戦を趣味にしている方も多いのではないでしょうか。5Gを利用するとこういったスポーツ観戦などがさらに楽しくなります。
5G対応のスマホアプリがあれば、試合のハイライトをスタジアムではなく自分のスマホのディスプレイで簡単に確認できたり、ゴーグル型のARデバイスを用いて実際の試合で注目したい選手だけを拡大して観戦を楽しんだり。5Gのメリットを活かした個人個人に最適化(パーソナライズ)された試合観戦などが実現します。
建設や土木
建設や土木現場では、施工までの地形までの下準備や、各工程の管理などにかなりの時間がかかります。5G活用で建設や土木分野も効率的な作業が可能になります。
ドローンによる3D地図の作成や無人建機の自動化。各作業工程の精密な管理まで、5Gの高品質技術だからこそなせる業で建設や土木分野の方たちを強力にサポートします。
また建設や土木では、予防保全(橋梁の定期的なメンテナンス)も重要な作業です。こういった作業も5Gの活用により効率化が行われ、総務省では従来の予防保全より2700億円のコスト削減が見込めると発表しています。
交通
先ほども話に出ましたが、5G技術を活用することで自動運転がさらに現実味を帯びてきました。エンジンの自動起動や自動停止、車間距離の絶妙な調整など、そのうち無人自動車でもこういった運転操縦が可能になるかもしれません。
また総務省は、自動運転により運転時間が有効活用されたり、交通事故・渋滞といった交通問題の減少や、カーシェアリングの普及などが5G普及によって見込まれ、経済効果は21兆円以上になるとも言われています。このように5Gは交通分野でも多大な経済効果を起こす画期的な技術として技術開発が進んでいます。
医療
例えば過疎地では医療施設が不足し、高齢者などが手術を受けないといけない状況になったときに対応できる医師がおらず素早く対応ができないなど、医療分野ではさまざまな問題が発生しています。
5G技術を利用することで、こういった医療上の問題も解決することができます。例えば、医療施設に医師ではなく手術用のロボットを設置します。そして万が一手術が必要な患者を執刀しなければならなくなったときに、遠隔操作でその場にいない医師がロボット経由で執刀を行えます。
執刀というのは非常にセンシティブな作業であり、ロボットに代用させるにはロボット自体も寸分の狂いのない動きをするようにしなければなりません。そして医師が執刀を行うときに、その動きを少しの遅延もなくトレースしないと、執刀ミスなどを起こしかねません。
5Gでは遅延なく遠距離のデータ転送が行えるので、ロボットなどを活用した地域によらない均質的な医療サービスの提供が可能になります。
教育
「NTTコミュニケーションズ」が教室にプロジェクターなどを用意し、離れた学校の教室同士を映像投影して遠隔授業を行う様子を描いたCMを視聴したことがありませんか?教育ではICTがどんどん普及し、こういった遠隔授業などの教育の幅を広げる技術も待望されています。
5Gでは超高速、低遅延のメリットを活かして、さらに遠隔授業などの技術を発展させたサービスが可能になります。例えばNTTコミュニケーションズのCMでは投影された教室映像は2次元でしたが、これを3次元でさらにリアルに近づけ、映像に触った生徒が相手に実際に触ったような感覚を得ることなども可能に。また歴史教材で実際の建物を3D投影し、歴史に対して理解を深められるようにしながら興味や関心を集めて勉強意欲を上げるなど、教育分野でも5G技術のさまざまな応用ができます。
その他
現在総務省では、一般の方に5Gの活用方法を募集する「5G活用アイデアコンテスト」という取り組みを行っています。「モビリティ(移動・交通)」や「教育・学び」、「生活・暮らし」など、幅広い分野で5Gの活用方法を一般市民からの意見などをもとにして探ろうという積極的な姿勢が政府からも見て取れます。
5Gの活用方法は未知数で、一般の方から募集した5G活用のアイデアが総務省などの取り組みで今後実現する可能性もあります。そう思うと、とてもわくわくしませんか?
5G実用に向けた各キャリアの取り組みは?
ここからは5G実用に向けて、当事者である各キャリアがどんな取り組みを行っているかご紹介していきます。
ドコモ
「ドコモ」では、「ドコモ5Gホワイトペーパー」と題した5G技術に関するドコモの姿勢表明書を公開。2020年代のIT社会へ向けて、ドコモが考える5G目標性能などを紹介しています。
またドコモは、世界の主要IT企業と5Gに関する実験で協力しています。「インテル」「NEC」「サムスン電子」など13社と5Gに関する実験を行い、将来の携帯電話サービスにフィードバックしようとしています。
さらに2017年12月に「新体感!みらいスタジアム」と題して「ジャパンラグビートップリーグ」の試合で5Gなどを活用したスポーツ観戦体験の満足度向上を実証実験。同じく2017年12月に「東京スカイツリー『docomo 5G Trial Site』」というイベントも開催。「東京スカイツリー」で5Gを活用した社会の未来を体験することができました。
5G技術に関する最新ニュースも続々発信しており、今後もドコモから目が離せません。
au
「au」では世界初の5Gに関する取り組みを続々進めています。
例えば「遠隔操作の無人建機」。auでは2018年2月に「大林組」「NEC」と共に行った建設機械の遠隔操作の実証実験に成功したと発表。
操縦席に人が乗っていないにもかかわらず、精密な作業を淡々とこなすショベルカーなどの画像が各メディアでも公開されています。「災害現場といった、リスクの高い場所での活用を見込んでおり、無人機の遠隔操作で救助活動を確実に成功させられるように技術開発が続いています。
また「JR東日本」の「MUE-Train(ミュートレイン)」という試験車両を用いて、5Gを活用した世界初の実証実験も行いました。走行中の電波に電波を途切れずに送り続けられるかなど、適材適所に5G電波を送る基地局の配置を模索するためのこの実験。au側ではさまざまなフィードバックを得ることができました。
今後もどんな実験をauが行うか、こちらもドコモと同じく要注目です。
ソフトバンク
「ソフトバンク」でも他キャリアと同じく、さまざまな5Gの実証実験を行っています。
例えばスポンサーになっている「ソフトバンクホークス」とタイアップしたVR試合観戦。5Gを活用することで多視点に切り替え可能な3Dパノラマでの試合観戦を見事成功させています。
また2017年8月に人口密集地におけるダウンロード速度の検証実験を実施。4Gの環境で5Gの快適なデータ送受信に必要な「MIMO(同時に通信端末に接続されても同時かつ瞬時にデータの処理が可能な技術)」の品質を確かめるための実験で、結果ソフトバンクが同時接続されても最も快適な5G環境を提供できる可能性を示唆しました。
今後もソフトバンクが5G実現のためにどのような施策を打ってくるか目が離せません。
5Gはいつから実用される?
肝心の5G技術ですが、一体いつから実用されるのでしょうか?
各キャリアでは2019年にまずプレサービスとしてユーザーへのサービス提供を開始。ユーザーに無料で端末を貸し出して5Gを体験してもらう試みを明らかにしています。
また2020年には商用として、各キャリアで順次本格的にサービスが開始。2020年前半には各キャリアの5Gサービスが一般に広く普及する予定です。
5Gの技術で発展する業界とは
5G技術により発展する業界にはどのようなところがあるのでしょうか?
携帯電話業界
5Gという移動通信技術を提供する中心となるのはキャリアなどの携帯電話業界です。5Gと組み合わせた新たなサービスの提供により、新たな顧客開拓などの販促拡大を行うでしょう。
既存の4Gが全て5G技術に置き換えられることによる経済影響は計り知れません。5G普及の音頭をとる携帯電話業界も5Gによって莫大な利益を得られる可能性があります。
ゲーム業界
ゲーム業界では最近VRを使ったコンテンツ配信が盛んになってきています。かの有名な「バイオハザード」シリーズも「バイオハザード7」がVR対応になったことで話題をさらいました。しかし現在のネット環境だと、野外などでラフにVRを楽しめるまでのインターネット環境は構築不可能です。
VR技術の一層の進化には、遅延なく大容量のデータをいっぺんに転送できる5Gが欠かせません。
5Gが普及することにより屋内でも野外でも、シームレスにVRゲームがプレイできる土壌が整います。またゲームメーカーでもVRと5Gを組み合わせたハイクオリティなゲームコンテンツ拡充が予想され、今より一層市場がにぎわうことが予想されます。
車業界
車業界も5G普及により活性化するポテンシャルを持っている市場です。
実際大手メーカーの「トヨタ」では5Gを利用した自動運転の開発を自動車メーカーでも率先して進行中。「KDDI」と連携した通信基盤の構築、また「NTT」 とは無線通信技術で提携。5Gの車産業活用の先陣を切っており、自動運転自動車産業で中心的な役割を果たそうという野心的な面もうかがえます。
5G普及により自動車業界でも自動運転自動車が一般に普及し、今まで車の運転自体に興味がなかったユーザーの取り込み、新しいサービスによる需要開拓が行われるなど市場の発展が期待できます。
5Gまでのモバイル通信(1~4G)の歴史
5Gに至るまで、モバイル通信はさまざまな変遷をたどってきました。
1G
最初の移動通信規格は「1G」と呼ばれます。日本、米国、欧州と地域ごとに技術が異なり、ローカライズされた移動通信技術でした。1980年代から1990年代にかけては1Gが主流。
このころの携帯電話は重量も重く、また通信量も高額でビジネスユースが大半でした。このように1Gでは、まだ一般人が移動通信技術を簡単に安く利用できる状況を作り出せませんでした。
2G
1993年に搭乗したのが「2G」。1Gのアナログ回線からデジタル回線に代わり、安価に通信サービスなどを利用できることから一般にも普及していきました。
2Gをベースにしたドコモのネット接続サービス「iモード」が開始されたのは1999年。iモードなどの携帯電話でインターネットができる利便性も加わり、移動通信技術が日本でさらに普及しました。ただし2Gも1Gと同じくグローバルな企画ではないので、日本で使っている携帯電話が海外で使えないという弱点もありました。
3G
2Gをさらに超える汎用性の高い高速通信方式が「3G」。これまで地域ごとに枠組みの違った移動通信技術を国際規格化し、通話品質も劇的に改善しました。スマホで最初に実装された移動通信技術も3Gです。
そして3Gをベースにして、4Gの技術を取り入れた移動通信技術も開発されました。その名もLTE(3.9G)。3GがLTE化することによりさらなる高速通信が可能となり、シームレスにスマホでネットに接続できる土壌が整いました。
4G
上記のLTEなども4Gに分類されることがありますが、本当の意味で4G技術が確立したのは「LTE-Advanced」の登場からです。4Gにより大容量・高速化通信がいっそう進み、人口カバー率も100%近くになりました。
これにより、場所を選ばず素早いデータ通信をスマホで利用できるようになったのです。「Youtube」などをはじめとした、データ通信を大量に使うサービスがシェアを拡大したのもこのころからです。
これらの技術を経て、5Gの技術策定が進められています。5Gでは今までの技術よりさらに便利な仕組みになることは前述の通りです。
5G実現後もWi-fiは必要?
ここまで記事を読んでいると「5GがFTTHより高速ならば、室内などで使われているインターネットを5G化してしまった方がユーザーの利便性が高くなる。だから「Wi-Fi」は必要ないのではないか」という考えも出てくるかと思います。しかし、この考えが正しいとは言えないかもしれません。
Wi-Fiは既にさまざまなインフラに技術が応用されており、シェア率も高いのが特徴。また技術の革新も進んでおり、低消費電力・定期的な接続に重きを置いた「IEEE 802.11ah」、高速処理に重きを置いた「IEEE 802.11ax(Wi-Fi 6)」など、用途に合わせたWi-Fiバリエーションも増えつつあります。5Gが広まったとしても以前通信料金の問題は残りますし、スマートフォンなど通信端末から利用することで通信量節約にもつながるWi-Fiの技術整備はユーザーにとっても必要不可欠なことです。
5Gが優勢、Wi-Fiが優勢という考えではなく、5GとWi-Fi、双方がメリット、デメリットを補い合っていくことで今後の明るいIT社会が実現していくと考えてください。
5G実現がIoTに与える影響
5Gの技術が一般に普及することにより、IoTもさらに発展していくことになります。
前述の通り、4G以前の技術では多数の通信機器が混在するIoT社会には対応しきれません。5Gによる超多数機器接続が遅延なく高速で行われることによって、真のIoT社会が実現することになります。
5G普及により、IoTもより私たちにとって身近な存在になるはずです。
5GとAI(人工知能)の関係性
5Gによる技術革新はIoTだけにとどまりません。AIと5Gを組み合わせることによって、さらに進化したAI技術の提供が可能になります。
例えば、ディープラーニングでカメラ越しの人の顔にリアルタイムでモザイクを掛けたり、カメラからAIで人の骨格を推定して不審者の特定といったセキュリティ対策を行ったりと、既存のAIよりもリアルタイムで高速な処理が行える点で5Gにはメリットがあります。またAIの処理に必要なデータベースが肥大化していっていることからも、膨大なデータを素早く処理して通信が可能な5Gの普及が急務です。
5Gの課題
ここまでご紹介してきたように、5Gには既存のIT社会をさらに便利にする大きなポテンシャルが秘められています。ただし、5Gについては課題もあります。
まず5G標準化に対する仕様。5Gの仕様については2019年から各キャリアが5Gの提供を開始するように、基本の枠組みはまとまっています。
ただし5Gはさまざまな分野での応用を行うために多数のオプションが必要になってきます。このオプションを各キャリアやソフトウェア提供業者(ベンダー)間で整合性が取れるように調整しないと、接続の安定性などに問題が生じる可能性もあります。
そして周波数。5Gで使う電波の周波数は「3.7Hz」、「4.5GHz」、「28GHHz」の3つの帯域利用が候補として想定されています。
しかしまだ正確な周波数割り当ては決まっておらず、各キャリアも3つの周波数を想定した検証など、手間のかかる作業を強いられています。周波数の割り当てが早く決定しないと、今後の5G技術普及にも大きな影響が出るかもしれません。
その他AIなどを動かすCPUなども5Gの通信技術をフルに活かせる性能アップデートが望まれるなど、ハード面でも5Gに対応した技術革新が求められています。
まとめ
ここまでさまざまな観点から5Gについて解説していきました。
超多数機器接続、超高速、低遅延を実現できる5Gの普及は、私たちの社会に大きな影響を及ぼすことでしょう。5G普及により自動運転など、各分野での技術革新も進みそう。ただし5Gを実現するうえでは周波数の割り当てやハード面など、課題もあります。
今後はこういった課題を解決しながら5Gのシェアを伸ばし、一般的に5Gを活用した利便性の高いシステムが構築されることが望まれます。