近年、”フィンテック”という単語をよく耳にするようになりましたね。
フィンテックによりさまざまな形態で金融サービスが提供されるようになり、ユーザーにもその恩恵が広がっています。またフィンテックは金融以外のサービスにも活用されているのはご存知でしょうか?
今回はフィンテックとは何か?そして身近な事例やフィンテック企業、ニュースから考察する今後のフィンテックの動向など、幅広い視点からフィンテックを解説していきます。
▼この記事でわかる!
- フィンテックの「意味」
- 身近にあるフィンテックの事例
- フィンテックは金融だけにとどまらない?
フィンテックの意味とは?簡単に説明
フィンテックとは「FinTech」と書き、Fiance(金融)×Technology(ICT(情報通信技術))を組み合わせた造語です。
フィンテックの先駆けともいえるのが1998年に創業した「PayPal」。PayPalではメールアドレス経由で送金など、ネットを介した口座の操作が可能で、まさに金融とITが融合したサービスでした。
フィンテックという言葉自体の初出は定かではありません。しかしアメリカの商業誌が「Fintech 100」というタイトルで「注目のフィンテック企業を100つ選んで紹介する」という特集を組んだりし始めたときからフィンテックという単語は使われています。
ちなみにこのときのフィンテックは「金融とICT技術を融合させてサービスとして提供する企業」という意味合いでした。
そして2008年の「リーマンショック」など、大手金融機関の不祥事による金融機関に対する不信感が投資家の間で浸透。金融機関に反発した層がフィンテックを利用した技術を提供するサービスを次々と創業しました。
日本でもフィンテックの動きは広まり、2014年ごろからフィンテックという言葉がどんどんメディアでも使われ始めました。そして今では国内のさまざまなサービスにフィンテックが利用されている事例が増えています。
フィンテックサービスが次々と登場したことにより、ユーザーが今までより便利に、そして素早くお金を使える時代が到来。その動きは「disruptive(破壊的)」という言葉が使われるほど、既存の金融業界に大きな影響を与えています。そして最近では、フィンテックは企業だけでなく、「金融とICTを組み合わせたあらゆる技術」も内包した単語として使われています。
身近なフィンテックの事例
ここからは、身近なフィンテックの事例を紹介していきたいと思います。
銀行
銀行では「楽天銀行」や「ジャパンネット銀行」など、いわゆる「店舗を持たない」デジタルバンキングサービスが続々と登場しています。
店舗を持たない分人件費などがかからないので、その分を利息の高さやキャンペーンなどでユーザーに還元してくれるのが何よりメリットです。また、口座開設時に面倒な手続きがいらず、サッと口座開設できるのもよいところです。
モバイル決済
モバイル決済は、スマホで料金支払いを済ませられるサービスです。
普段使っているスマホだけでサッと支払いを済ませられ、現金やクレジットカードより便利な決済方法です。
導入時のコストや手数料が少なくて済むので、店舗側でも規模を問わず導入が進んでいるサービスでもあります。最近では「PayPay」など、モバイル決済でも新しいサービスが今後続々登場予定。注目のフィンテックとなっています。
経理サービス
経理関係も今やノートなどアナログな方法ではなく、ソフトウェアやウェブブラウザー経由で帳簿を付ける時代。同じ内容は自動処理化するなど、余計な作業の手間がアナログでの経理処理より減少するのがメリットです。
ウェブブラウザー経由など、いわゆるクラウドサービスタイプの経理サービスはコストがかからないので、個人事業主や中小企業でも導入しやすいのが特徴です。
フィンテック企業の分類
ここからは、フィンテックで代表的な企業をカテゴリごとに紹介していきます。
モバイル決済:株式会社Origami
「株式会社Origami」は、主にモバイル決済サービスを取り扱うベンチャー企業。代表サービスは「Origami Pay」。最近では「ローソン」や「吉野家」など、大手チェーンとも組んでフィンテックを推し進めています。
社名の由来は文字通り「日本の折り紙」であり、日本のフィンテック企業としてサービスを広めていこうとする気概がうかがえます。今後も続々キャンペーンを開催予定で、注目の企業となっています。
ロボアドバイザー:ウェルスナビ株式会社
「ウェルスナビ株式会社」は2015年4月に創業。投資ロボアドバイザーサービス「WealthNavi」が有名です。
WealthNaviではユーザーが操作を行わなくてもAI(人工知能)をもとに自動で資産運用が可能。一気に稼ぐ、ということはしにくい分、「ほぼ確実に損益が出ない資産運用」ができるサービスになっています。このようにAIを用いた高度な資産運用技術も、フィンテックのたまものだといえるでしょう。
仮想通貨:株式会社bitflyer
「株式会社bitflyer」は仮想通貨を取り扱うフィンテック企業です。仮想通貨交換業取引所である「bitFlyer」を提供しています。
「ビットコイン」や「イーサリアム」をはじめとして、さまざまな仮想通貨を取引可能。またポイントサイトとも連携して貯めたポイントを仮想通貨に交換可能など、ユニークな取り組みも進めています。
ビットコインは現金に代わる新しい通貨の流通方法として近年強く注目を浴びています。その中でbitflyerは「日本最大の仮想通貨取引所」として、今後仮想通貨をけん引していく存在となりそうです。
会計システム:株式会社freee
「株式会社freee」は、経理ソフトウェアおよびクラウドサービス「freee」を提供しているフィンテック企業です。個人事業主などの中小規模企業を対象にサービス展開しているのが特徴です。
freeeでは既存の簿記をシステム上で自動化などを行い、簿記になれていないユーザーでも簡単に経理作業を行うことが可能。クラウド会計・人事労務ソフトシェアで1位に輝く実力ある企業です。会計ソフトの常識を変えた企業として、今後の新たな動きにも注目です。
クラウドファンディング:株式会社マクアケ
「株式会社マクアケ」はブログサービスの「Ameba」などを提供する株式会社サイバーエージェントグループのフィンテック企業です。クラウドファンディング(不特定多数の人間からネット経由でサービス開発などの資金を募るサービス)サービスである「Makuake」を提供しています。
近年ではベンチャー企業の後押しとして、商品開発に必要な資金提供をネットで募れるクラウドファンディングがはやっています。Makuakeもそんなサービスの一つ。商品製作や飲食店ジャンルの取り扱いが多いです。
地方創生:SBIホールディングス
「SBIホールディングス」は「株式会社ソフトバンク」の金融関連企業として創業した金融機関です。現在はソフトバンクグループではなく、独立した企業となっており、地方創生を目指したフィンテックの普及に力を入れています。
SBIグループのノウハウを地方銀行へ提供し、フィンテックを中心にしたサービスの提供で地域活性化を目指しています。SBIホールディングスといった企業が都市部だけでなく地方にもフィンテックの動きを広めてくれれば、いつでもどこでもフィンテックが利用できる社会が実現するでしょう。
クレジットカード:Square, Inc.
「Square, Inc.」は、アメリカのサンフランシスコに拠点を置くフィンテック企業です。POSレジを簡単に導入できるサービスを提供しています。
その名も「Square Register」。「iOS」や「Android」などが動くタブレットやスマホをPOSレジ化してクレジットカードの読み込みが可能です。導入費をかけずにクレジットカード決済を導入できることから、中小規模の小売店を中心にサービスが広がっています。
ソーシャルレンディング:maneo
「maneoマーケット株式会社」は、2007年8月創業で、ソーシャルレンディングサービス(投資家と企業の直接取引を仲介するサービス)「maneo」を提供しているフィンテック企業です。
maneoでは口座開設手数料や取引手数料が必要なし。分散投資なども安心して行える自由度の高いサービスが特徴です。また自社のソーシャルレンディングシステムを他社にも提供しており、ソーシャルレンディングサービスの普及にも力を入れています。
個人間送金:LINE PAY
「LINE PAY」は「株式会社LINE」が提供するモバイル決済サービスです。今回は、個人間送金の点から説明させていただきます。
個人間送金とは金融機関への振り込みなど、個人間で送金を行うことを指します。モバイル決済で個人間送金に対応しているサービスは意外と少ないですが、SNSサービス「LINE」の機能の一部ということもあり、LINE PAYでは簡単に個人間送金ができるようになっています。友達への送金など、思いついたらすぐ個人間送金がLINEユーザー間でできる利便性がポイントです。
フィンテックの革新は金融だけじゃない?
フィンテックの革新は、金融だけにとどまりません。例えば、仮想通貨に使われている「ブロックチェーン」の技術がその一つです。
ブロックチェーンは「ビットコイン」の取引を記録する技術として開発され、今では多くの仮想通貨がこのブロックチェーンを使って取引の記録を行っています。
- 強固な暗号化により、改ざんに強い
- データが分散されるので、一部が破損しても復旧が可能でシステムダウンに強い
- 中間業者が存在しないので、コストを抑えられる
上記のようなメリットがあります。
また近年では、以下のように、さまざまなサービスにブロックチェーンを利用しようという動きが広まっています。
- トレーサビリティの信頼度向上
- 確実な災害時の安否確認
- コストを抑えたストリーミングサービスの開発
このように、フィンテックの技術は金融だけでなく、他サービスへも大きな影響をもたらしています。
ニュースから考察する「フィンテックの今後」
では、今後フィンテックはどうなっていくのでしょうか?
IT系サービスの調査会社であるIDC Japan株式会社は、日本国内の2022年フィンテック関連サービスの支出規模が1600億円以上になると予想。大手企業が続々とフィンテックを活用したサービスを提供するようになることで、ビジネス全体に大きな影響を及ぼす可能性があることに言及しました。
またアイルランドに本拠を置く総合コンサルティング企業である「アクセンチュア(Accenture PLC)」が、2017年度に世界中のフィンテック投資金額が274億4,500万ドルを突破したことを発表。前年比から18%も伸びがあったそうで、今後もフィンテックへの投資額が拡大していくことがうかがえます。
またフィンテックの市場規模については、IDC Japan株式会社と同じく調査企業である「矢野経済研究所」が2021年度には日本国内だけで1兆8590億円を超えると発表。今後フィンテック関連のサービスが続々と登場すれば、市場規模はさらに拡大することが予想されます。
まとめ
今回はフィンテックとは何か、そして実際のフィンテック企業やフィンテックの今後などもみてきました。
フィンテックが活用されることで、私たちにとってもより金融サービスが身近になり、便利な社会が到来されることが予想されます。また金融以外でもフィンテックと組み合わさったどんな新しいサービスが出てくるかも今後要注目です。