人、ペットを自動認識して「いい写真」を撮るGoogle Clips
パーティーのテーブルに設置して自動で「いい写真」を撮ってくれるカメラは、これまでいくつかの商品が登場しては消えていった。
たとえば、Cyber-shotを載せると人間の顔を認識して自動でカメラが回転するインテリジェントパンチルター「IPT-DS2」(2009年発売)や、自動で動画を撮りつづけ、ベストショットをつないだホームビデオを自動で作ってくれる「Kiba」(2016年にCESイノベーションアワード受賞)が代表的だろうか。
しかし、いずれもメジャーになる前に消えてしまった。
顔認証の精度、バッテリー持続時間などそれぞれに問題は抱えていたが、結局のところ人々の食指が伸びなかったのは「撮れる写真のセンス」なのではないだろうか。
自分で撮ったほうがマシだ、という落胆が、たしかにあった。
そこでGoogleが満を持しての登場である。
Google Clipsの基本コンセプトはこれまでの自動撮影カメラとほとんど変わらない。
パーティーのテーブルやリビング、旅行先へ向かう車内など「楽しいことが起きそうな場」にカメラを設置しておくだけでいい。
Googleの考える勝算は、そのバッテリー持続時間やシンプルな設計ももちろんだが、何より「AIのセンス」にあるのだろう。
Googleはこれまで「Google フォト」で大量の写真を扱い、センスを磨いてきた。実際に使ってみるとわかるが、Googleフォトが自動生成するアルバムはなかなかのものである。
より賢くなったAIと家族共有機能
5/11に発表されたアップデート版の目玉は、その「AIのセンス」がより磨かれたことに尽きる。
実はClipsが撮影するのは写真ではなく「7秒間の動画クリップ」なのだが、(Clipsという名前の由来はここにある。写真しか撮らないならShotsという名前になっていたかもしれない)自動で認識できる「動き」をアップデートしたとのことだ。
具体的には、ニューラルネットワークによる膨大なサンプルの学習を経て、AIがダンスやハグ、キス、ジャンプなどの魅力的な瞬間をきちんと認識したときに「ボーナス」を与えるという方法で精度を向上させたとGoogleは説明している。
(参考:Google AI Blog)(source:https://ai.googleblog.com/2018/05/automatic-photography-with-google-clips.html)
さらに今回のアップデートでは家族共有機能が追加され、複数のユーザーでClipsを共有することが可能になり、完璧な形での「家族カメラ」になったと言えるだろう。
Googleが見せる家族のあり方
と、ここまで簡単に触れてきたようにClipsの裏には膨大なテクノロジーとマンパワーが隠れているのだが、私達に提供される本当の価値は「家族のあり方」を捉え直すことでなはいだろうか。
これまで、私たちは「思い出を残す」ことに躍起になってきた。その欲求に引っ張られるようにスマートフォンのカメラ性能もどんどん上がってきたが、結局は「選択的に」思い出を残してきたに過ぎない。
Clipsはその選択をAIに委託することで思い出の残し方そのものを根底から変え、思い出を選択する作業から家族を開放した。
人間の持つカメラが捉えられる瞬間などたかが知れているし、カメラを向けられた人間がとるポーズはもっと限られる。
それらを「思い出」として残す楽しみがあることは変わらないが、その行為にとらわれない思い出の残し方があってもいいだろう。
これまで記憶にしか残らなかった、人間が選択しないシーンがClipsによって思い出となる。
これは家族のあり方を問い直すチャンスなのではないだろうか。