これを書いている今日、2019年7月22日に、ある製品がひっそりと姿を消した。
それは、格安パソコンで有名な株式会社マウスコンピューターが発売していたIoTガジェットシリーズ「mouseスマートホーム」である。
パソコンのBTO(Build To Order)で経営の基盤と技術を培った同社が販売していたこの製品(群)は、安価であり、しかもシリーズで揃えることで管理と操作をスマートにまとめることのできるものだ。
ラインナップも意欲的で、よくある「スマート電球」や「スマートプラグ」「モーションセンサー」はもちろんのこと、参入メーカーのまだ少ない「スマートドアセンサー」や、独自性の高い製品として「スマート空気清浄機」、「PM2.5センサー」なども揃っていた。
私個人としてはユーザーではなかったものの、これまでの記事でも書いてきたようにIoT製品はできるだけ1つのブランドで統一したほうがいいのは間違いないので、人に尋ねられればオススメしていただけに、ちょっと残念である。
販売終了は2019年7月22日、サポートの終了は2022年6月30日で、それ以降は機器の操作ができなくなるという。
今回の販売終了についてマウスコンピューター広報に取材を申し込んだところ「販売終了の理由は『弊社都合』としかお答えできない。今後の新製品などについても予定は白紙」とのことだった。
スマート「家電」という言葉の危うさ
マウスコンピューターが販売していたものも含め、こういった製品をまとめて「スマート家電」と呼ぶことがある。
双方向性、拡張性があり、これまでの家電とは一線を画す使い勝手を表現した言葉だが、その裏には今回の販売終了で明らかになったように問題もある。
それが、サポートが終了するとその製品自体が使えなくなるということだ。
理由は簡単で、スマート家電と呼ばれる一群は基本的にクラウドを通じて操作しているため、サポート終了とともにクラウドがシャットダウンされると操作そのものができなくなる。
普段、スマートスピーカーやスマートフォンを通じて操作していると実感しにくいのだが、あなたが発した「リビングの電気をつけて」という指令は、インターネットを通じて世界のどこかにあるクラウドへと送られ、そこで処理されてから、リビングの電気へと伝わっている。
指令を処理するプライベートクラウドがシャットダウンすれば、命令は伝わらなくなる。(イラスト:筆者)
スイッチを押せば済むことを、世界規模のネットワークを経由して行っているのが、スマート家電なのである。
しかし、私たちが「家電」と聞いて想像するものは違う。
たとえばあなたの実家にある洗濯機を思い出してほしい。10年以上稼働していないだろうか? 冷蔵庫や電子レンジ、エアコンは? どれも長生きする製品だ。
いずれも製品そのものが機械的に故障しない限りは使える。そのイメージを「スマート家電」にも引き継いでいるからこそ、今回のような事態に人々は驚いてしまうのだ。
あらゆるスマート家電に必ず訪れる未来
今回たまたま、日本メーカーであるマウスコンピューターのスマート家電製品が販売終了とサポート終了を発表したのでこのような記事になったが、実際はどんなスマート家電にも必ず訪れる未来であることは言うまでもない。
便利さは、必ずなにかとトレードオフだ。
ただ歩いて移動していた頃は自動車の燃料切れなど気にする必要がなかったように、より便利なものを手に入れれば新しい課題は必ず生まれる。
「スマート家電」と呼ぶからこの不便さにどことなく不信感を抱いてしまうが、それはとばっちりというものだ。
IoT家電、スマート家電にはこれまで決して得られなかった便利さがある。そのトレードオフは受け入れるべきだろう。
私たちにできるのは、スマート家電を買うならばできるだけ長くサポートしてくれそうな企業を選ぶということしかない。