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ニュース 2019.04.11

エンタメ体験をハックする「エンタテック」で日本企業は戦えるか?

記事ライター:Yuta Tsukaoka
alyssa.play

前後編に分けて「エンタテック」という私の造語について解説した記事を読んで頂けただろうか?
私はその記事で、Netflixを例にエンターテイメントを「誰に・どう」届けるのかという技術のことを「エンタテック」と呼んだ。

そこに含むのは、たとえば視聴履歴をもとにしたAIによるレコメンドだったり、それを支える膨大なA/Bテストやレビューシステム、そしてAIの学習プログラムなど多様なテクノロジ群だ。
これらの技術によって、私たちはレンタルビデオ店(もはや懐かしい言葉だ)では決して出会わなかったであろう作品たちと出会い、21世紀型のあらたなエンタメ体験を享受している

一方、レコメンドのもととなるデータに問題があると指摘する声があることも記事では紹介した。性的嗜好や人種すら、エンタテックは取り込んでいるのではないかという疑惑だ。
そしてそこから、私たちが「エンタメ作品に出会っている」のではなく「見せられている」可能性を示唆し、その先にある大きな問題点を指摘したつもりだ。

さて、そんな素晴らしさと悩ましさを併せ持つ「エンタテック」について、この記事では日本市場での動きを見てみよう。

Twitterの「つぶやき」をもとに作品をレコメンドするCCC

著者によるスクリーンショット

昨年、TSUTAYAなどを運営するCCC(カルチュア・コンビニエンス・クラブ)は「TSUTAYA AI」というサービスをリリースした。TSUTAYA TVやTSUTAYAプレミアムなどの同社が運営するサービスの利用を促進するマーケティング施策だ。
なので、Netflixが行ったようなユーザ向けのAIレコメンドサービスとは少し性格が違うことは、まず前提として知っておいてもらいたい。

しかし、取り組みとしては面白い。
Netflixは毎日数百万、数千万と集められる「視聴データ」を主軸にしたビッグデータを活用してAIの精度を上げ続けているが、TSUTAYAではそうはいかないのは明白だ。そこで目をつけたのが、Twitterなのだろう。

つまり、視聴データの代わりにツイートを分析して「趣味嗜好」のようなファジーなデータを取得し、作品レコメンドにつなげているのだ。CCCの出したプレスリリースの内容からは詳しことはわからないが自然文解析の技術が使わているそうだ。

NetflixのAIは、あくまでもNetflixユーザのデータしか使うことができない。そして、Netflixでの視聴履歴が浅い場合、レコメンドの精度を高めるのは困難だ。しかし、Twitterであれば(誰に頼まれることなく)自分自身の趣味嗜好や政治信条、生活習慣を人は披露している。
ここに目をつけたのは面白い試みと言えるだろう。

登録情報によるターゲティングで広告配信する「ラジコオーディオアド」

みなさんはラジオを聞く習慣があるだろうか? 私は深夜ラジオを熱心に聞いていた高校生時代を最後に、しばらく聞いていなかった。が、2010年4月にスタートしたIPサイマルラジオサービス「radiko.jp」がその情熱を再燃させてくれている。

そういう読者も多いことだろう。自宅にはすでに「ラジオ受信機」がなくとも、スマートフォンにはradikoアプリが入っているというパターンが多いと思われる。私もそうだ。

このradikoは、過去の放送を一定期間、無料で配信しているほか、有料会員になれば電波の届かない地域も含めて全国のラジオを聞くこともできる。そんな利便性からユーザが増え続けているサービスだ。
オールドメディアがテクノロジの力によって新たな局面を迎えるこの構図は、まさに「エンタテック」と言っていいだろう。

しかし紹介したいのは、より意欲的な取り組みだ。それを「ラジコオーディオアド」という。
テレビやラジオに代表されるマス放送媒体は、多くの人が一斉に同じものを見ている/聴いているという前提から、広告主に高額でその「広告枠」を販売することに成功してきた。

しかし、ここ数年その「強さ」に陰りが見えているのはみなさんもご存知のとおりだ。
なぜか。もちろん、ネット広告の台頭によるものである。GAFAと呼ばれる巨大なITコングロマリットたちによる執拗なデータ収集は今、まさに問題視され世界を覆うほど巨大な議論の渦を形成しつつあるが、それが広告主にもたらした恩恵もまた巨大だった。いわゆる、ターゲティング広告といわれるものだ。

そのテクノロジを、radikoは放送媒体の世界に持ち込んだ。会員登録時に提供される個人情報(性別・年齢・居住地域など)をもとに、実際の放送で流されているのとは違う、「最適化された」広告を個別に配信しているのだ。

これもまた、エンタテックと呼んでいいと思う。テクノロジによって、斜陽となったラジオ業界に新たなマネーを落としている

まだまだ目立つ事例のない日本のエンタテック

いろいろと調べてみたが、日本企業で本格的にエンタテックに取り組んでいる企業はほとんど見つからなかった。
我こそはという企業のみなさま、ぜひ情報提供をお願いしたい。取材に伺い、エンタテックに日本発の新たな波をもたらす現場をこの目にしてみたいと思っている。

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