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既に顕在化している影響
地球温暖化で実際に影響が出てくるのは、遠い未来のことではありません。現状で既に地球温暖化の影響が次のような形で顕在化しています。
平均気温の上昇
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第5次評価報告書において、世界平均気温に関するデータが公表されています。これによると、1880年から2012年までの間の世界気温の上昇は0.85度でした。
あまり大きな上昇でないように思ってしまう人もいるかもしれません。しかし、20世紀の初期辺りまでは、気温が多少上下しても長期的に見れば横ばいの水準でした。20世紀の半ばから、長期的に上昇傾向にあり、20世紀初期までとは明らかな違いが見られます。
そして、日本の平均気温は世界全体よりもさらに大きく上昇しています。特に2000年代に入ってからの気温上昇が顕著です。
日本の観測史上で、高い方から1位〜20位の最高気温の大半が2000年以降に記録されています。また、41度以上の記録が5回ありますが、その内訳は2020年が1回、2018年が3回、2013年が1回で、いずれもごく最近の記録です。
海水面の上昇
北極や南極は大量の氷で覆われています。氷の厚さは北極では10メートル程度ですが、南極だと非常に厚く、平均で2,500メートル程度です。
世界の平均気温が上昇すれば、北極と南極の氷が溶けるため、海水面が上昇します。沿岸の地域や小さな島などでは、影響を受けやすいです。
そして、世界全体で見れば1901年から2010年の間に19cm上昇しており、海抜の低い島などでは高潮による被害も発生しています。
大気中の二酸化炭素濃度
国内の観測地点での大気中の二酸化炭素濃度は、1987年時点では350ppm程度でしたが、右肩上がりで増加しています。2023年には420ppm程度にまで達しました。
世界でも同様の傾向が見られ、一昔前と比べると大気中の二酸化炭素濃度は確実に増加しています。
今後懸念されている影響
このまま地球温暖化が進んだ場合には、今後次のような影響が現れるものと懸念されています。
島国や沿岸部の地域への被害
海水面の上昇がこのまま進行していけば、21世紀末には現在と比べて45〜82cm程度上昇するものと見込まれています。そうなると、小さな島などは水没してしまう可能性があります。国によっては国土の大半が失われてしまうかもしれません。水没のおそれのある島に住んでいる人たちは、移住を余儀なくされるでしょう。
沿岸部の地域も水没して陸地面積が減少します。小さな都市や町なども水没でなくなるかもしれません。
異常気象
人が住みやすい気候の地域では、自然の絶妙なバランスが保たれているからこそ、住みやすい気候が維持されています。自然条件が変化すれば、バランスが崩れて居住に適さない環境になってしまうこともあるかもしれません。
例えば、降水量が急激に変化する可能性があります。降水量が極端に増えれば洪水になり、逆に減って干ばつなどが発生するかもしれません。台風や集中豪雨などもが増える可能性があります。
猛暑日や真夏日は既に増えていますが、このまま地球温暖化が進めばさらに増えるでしょう。砂漠化の進行も懸念されています。
食糧難
農作物は気候の影響を強く受けます。異常気象の影響で農作物の生育が困難になることもあるかもしれません。特に気温の高い地域では、さらに気温が上昇すると悪影響を受ける可能性が高いです。
家畜も気候の変化には敏感に反応するため、肉や乳製品の品質にも影響を与えるでしょう。地域によっては家畜を育てられなくなるかもしれません。
感染症の拡大
感染症を媒介する生物は、年間を通じて温かい地域を活動領域としているケースが多いです。しかし、地球温暖化により世界の平均気温が上昇すると、感染症を媒介する生物の活動領域が広がります。その結果、これまでなら感染症がほとんど流行らなかった地域にも拡大するかもしれません。
例えば、デング熱やマラリアなどの流行拡大が懸念されています。
地球温暖化の主な原因
地球温暖化が進んでいる主な原因について見ていきましょう。
化石燃料の消費
地球温暖化は、温室効果ガスの増加によってもたらされているものです。温室効果ガスが赤外線を吸収して熱を地球の外に逃がしにくくしているため、気温が上昇しています。温室効果ガスというのは、主に二酸化炭素やメタン、フロン類などが該当しますが、その中でも二酸化炭素が代表格といっていいでしょう。
20世紀半ば以降、経済や科学技術が進歩してエネルギーを大量に消費するようになりました。そして、エネルギーの多くは石油や石炭などの化石燃料を燃やして作っているものです。石油や石炭には炭素が含まれているため、燃やすと二酸化炭素が発生し、大気中に大量に放出されています。
森林伐採
森林は、光合成により二酸化炭素を吸収しています。森林が多ければ、それだけ二酸化炭素の増加にブレーキがかかり、地球温暖化の防止につながります。しかし、経済の発展とともに森林伐採が深刻化しています。2000年から2010年にかけて毎年平均520万ヘクタールもの森林が失われました。
森林が伐採される主な理由は、燃料や木材として使用する目的の他に、農地として使用する目的などもあります。
世界人口の増加
日本などの先進国では人口が減少している国もありますが、発展途上国の場合には逆に人口が増加している国が多いです。
人が生活していくためには、どうしてもエネルギーを消費します。そのため、人口が増えればそれだけエネルギー消費も増えることになるでしょう。その影響で二酸化炭素排出量も増加しており、地球温暖化の一因になっています。
地球温暖化防止のために行われている取り組み
地球温暖化防止のために次のような取り組みが行われています。
SDGs(持続可能な開発目標)
SDGsは、2015年に国連サミットにおいて採択されたものです。17のゴールが設定されており、2030年までに持続可能な世界にするための13の目標が掲げられています。目標は気候変動対策に関するものが中心で、5つのターゲットが盛り込まれています。
先進国だけにとどまらず、発展途上国を含む全ての国に適用されるのが特徴です。
パリ協定
パリ協定は2015年のCOP21で採択されたものです。産業革命後の気温上昇を2度に抑えることや、5年ごとに全ての国が削減目標を作成し提出するなどの内容が盛り込まれています。
SDGsと同様に発展途上国を含む全ての国に適用されるのも特徴です。また、発展途上国に対して資金提供を行う旨の内容も盛り込まれています。
地球温暖化防止のために我々ができること
地球温暖化防止のためには、国家間で行う対策だけでなく、我々一人ひとりの行動が大事です。
まず、節電を心がけましょう。現在の日本では電力の大半が火力発電で賄われており、化石燃料を消費しています。電力消費量を削減できれば、地球温暖化防止につながります。
節水を心がけることも大事です。水は地球温暖化との関係は薄いように思われがちですが、意外とそうでもありません。浄水などの工程でエネルギーを消費しているため、水の無駄遣いも地球温暖化につながってしまいます。普段の生活の中で、水を無駄にしているところがないかどうか一度確認してみるのがいいでしょう。
また、車を使うとガソリンを消費するため、二酸化炭素が排出されます。近場に外出するときには、できるだけ車を使わずに徒歩や自転車を使用することが大切です。
まとめ
既に平均気温の上昇や海水面の上昇など、地球温暖化の影響がさまざまなところに現れています。このまま地球温暖化が進行すると、水没する地域や異常気象で人が住めなくなる地域なども出てくるでしょう。今のうちに地球温暖化防止のための対策を講じなければ手遅れになってしまいます。
SDGsやパリ協定など国家間での対策が行われていますが、それだけでは充分ではありません。我々一人ひとりが日々の生活の中で、意識していくことが求められています。