IoTについて記事を書いている私が言うのもなんだが、「IoT」という言葉を私たちはあまりに不用意に使っていないだろうか?
「モノのインターネット」などと言うが、実際それが何を指しているのか、よく考えてみると分からない。
たとえば、IoTといえば「AIスピーカー」や「スマート電球」なんかが連想されるが、そうしたIoTガジェットを羅列すれば、それが「IoT」なのだろうか。違うはずだ。
こうした「分からなさ」が、IoTという言葉ばかりが先行して、多くの人の実生活に変化をもたらしていないという問題点の原因ではないかと思う。
国内に限定しても、AIスピーカーを持っていない人のほうが圧倒的な主流派だ。
電通デジタルによる調査では、AIスピーカー(調査では「スマートスピーカー」と表現)の認知率は約76%もある一方、所有している人の割合はわずかに6%なのだという。
というわけで、この記事では全4回に分けて「IoT」という言葉を改めて考えてみようと思う。今後の普及と、未来を見通すために、今一度立ち止まることが必要だろう。
もともとは「Internet For Things」だった
第1回でも書いたが、RFIDの開発者のひとりであるケビン・アシュトンがはじめて「IoT」という言葉を使ったと言われている。
もっとも、彼が好んで使った表現は「Internet For Things」だという説もある。
RFIDは流通過程においてモノの所在や数を正確かつすばやく把握し、インターネット経由でそれを管理することができる。なので「モノの管理のためにインターネットを使おう」というのが、この言葉の真意だろう。
つまり「モノのためにインターネットを使う」ということなので、「Internet For Things」のほうが表現としては的確だったはずだ。
では、今私たちが普通に使っている「Internet Of Things」という言葉は、いったい何なのだろうか?
「For」から「Of」になって変わったものは?
まずは言葉を紐解いてみよう。
「モノのためのインターネット(Internet For Things)」から「モノのインターネット(Internet Of Things)」へと移り変わる過程で「ための(For)」から「の(Of)」という言葉に変化したことに注目したい。
「Of」は所有や所属を表す。たとえば「A leg of a table(テーブルの脚)」とか「Tokyo of Japan(日本の東京)」のように使われる。また、これがひときわ重要だが、「〜のような」とも訳すことができる。「An angel of a boy」といえば「天使のような少年」となる。
このことを踏まえると「Internet Of Things」とは、一般に使われる「モノのインターネット」も正解である一方、「インターネットのようなモノ」とも捉えることができるのがわかる。
さて、かなり分かりにくいことを書いているのは自覚しているので手に触れられる範囲の話にしてみよう。
「モノ」が主・「インターネット」が従
繰り返し登場するRFID(を利用した流通管理)では、モノを管理するためにインターネットが存在しているので、主従関係でいえば「インターネットが主・モノが従」となる。
一方、私たちが手にすることのできるIoTガジェットは、モノがインターネットを利用してより便利になることを目指しているので「モノが主・インターネットが従」だ。
スマート電球を例にとると、一般の電球にはない遠隔操作や輝度・色温度の調整という双方向性と機能拡張のために、インターネットをスマート電球が「利用している」と捉えられる。
「モノが主・インターネットが従」の関係である。すべてのIoTガジェットがこの構図でインターネットを利用しているのだ。
つまり、モノがインターネットを利用しているという構図なので、「インターネットのように双方向性と拡張性を獲得したモノ」と考えるとわかりやすい。
しかし、この構図になっている「モノ」を私たちはよく知っているのではないだろうか?
そう、スマートフォンだ。携帯電話が機能拡張のために「インターネットを利用している」のがスマートフォンのはずだ。しかし、普通はスマートフォンを指して「IoTガジェット」とは呼ばない。
ここが「IoT」を考える上で非常に重要なポイントである。
<第3回へ続く>