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スマートホーム(スマートハウス)の記事 2019.05.13

シンギュラリティ(技術的特異点)とは?2045年より早まるかそれとも”来ない”?

記事ライター:iedge編集部

2017年5月に囲碁の世界チャンピオンである「柯潔」氏との対局で、AIが3戦全勝して話題になった話を覚えていますか?手数があまりにも多く、勝利までのパターンを掴みにくい囲碁では、AIが棋士に対して勝利するのは困難であろうとされていました。囲碁の世界チャンピオンに「Google」が開発した「アルファ碁(AlphaGo)」が完勝したニュースは、世界の話題をさらいました。

囲碁に限らず近年はソフトバンクの「Pepper」など、AIロボットが各産業で本格的に活用され始めました。そして来る2045年には、AIが人間を超越する「シンギュラリティ(Singularity)」が起こると予想されています。シンギュラリティが起こると仕事から日常生活まで我々の社会は強い影響を受け、現在からは予想もつかないような変化がもたらされるでしょう。

このシンギュラリティ、何となくわかってはいても詳しい内容は知らない、という方も多いのではないでしょうか?そこで今回はシンギュラリティの概念や、シンギュラリティによって発展する分野、シンギュラリティ到来による社会の変化まで、シンギュラリティについてさまざまな視点から詳しく解説していきます。

▼この記事でわかる!

  • シンギュラリティ(技術的特異点)の概要
  • シンギュラリティがもたらすとされる”2045年問題”とは
  • シンギュラリティは遠いか近いか?それとも”来ない”のか

 

 

シンギュラリティ(技術的特異点)とは何か

広げた手を重ねる人間の手とロボットの手

シンギュラリティという言葉は、そもそも何を意味しているのでしょうか?シンギュラリティとは「特異点」の意味を持っており、もともとは数学や物理学で使われる言葉です。

数学や物理学では、2次関数や3次関数などの関数グラフがよく使われますよね?あのグラフが通常からは予想もつかない、ありもしない方向に曲がったりという現象が起こることがあります。この原因を作っている点を、数学や物理学では「既存のルールを適用できない点」として特異点と呼びます。

AIの技術は発達が進み、指数関数的(爆発的な加速力)でこれからも進化が進むとされています。そしてある地点でAIが人間の知能を超え、そこから人間の知能を超えたAIが自分と同じようなAIを作り、そのAIがまた別のAIを作る・・・と、人間の知性の範疇からはみ出た”ありえないスピード”でAIが自己進化する時代が到来するといわれています。この「AIが人間の知能を完全に超越して自己進化を続けるようになる」時期を、AIでは「技術的特異点」という意味を込めてシンギュラリティと呼称します。

AI分野でシンギュラリティという言葉が使われるようになったのは、人工知能研究のレジェンド的存在である「レイ・カーツワイル」博士。レイ・カーツワイル博士は2005年、「シンギュラリティはすぐそこに、人類が生命を超越するとき(The Singularity Is Near:When Humans Transcend Biology)」というタイトルの著書で「シンギュラリティは2045年に訪れる」と言及。そこから後述する2045年問題など各業界でシンギュラリティに関する話題が起こり、今では至るところでシンギュラリティという言葉を聞くほど認知度が高まりました。

 

シンギュラリティで発展する分野

青いネットワークイメージ

シンギュラリティが起こると、どんな分野が発展するのでしょうか?

製造

製造の現場

すでに製造業ではピッキング用など、さまざまなロボットが作業員のサポートを行っています。シンギュラリティが起こると、製造の分野にさらなる影響が起こります。

ピッキングだけでなく、部品の調達やその部品を用いての製造、製造に必要な全ての工程をロボットが担う時代になるかもしれません。また人間と違ってロボットは24時間365日メンテナンスさえ行えば作業が可能です。

結果生産性が向上し、売上の拡大が見込めます。また人件費などのコストも削減され、人手不足などの問題からも物流関係の企業を救うことになるでしょう。

医療

ディスプレイに聴診器をあてる医師

医療ではいち早くAIの活用法が模索されてきました。「5G」の実現によりロボットを用いた遠隔手術なども可能になる見込みが出てきたなど、医療に関するさまざまなニュースが世間をにぎわせています。

シンギュラリティが起こると医療分野もさらに発展する可能性があります。医療用のAIアルゴリズムを用いて精密な検査を行い、患者の症状を今までよりさらに早く発見するなど、医療サービス自体もどんどん向上するでしょう。医師といっしょにAIロボットが手術を行う可能性だってあります。

飲食

食事をする人たち

人手不足が問題になっている飲食業界でも、シンギュラリティにより目覚ましい変化が起こるでしょう。すでに接客や給仕などをAIロボットで提供しようという取り組みが進んでおり、Pepperが接客を担当する飲食店も出てきています。シンギュラリティが起こると、将来はロボットと話をしながら料理を運んでもらうのがどこのお店でも普通になるかもしれません。

さらに給仕する料理自体もAIロボットが調理できるようにならないか研究が進んでおり、レシピなどを記録したAIロボットが全調理を任されるなど、調理から接客、給仕までロボットが飲食のほとんどの工程を取り仕切るようになる可能性もあります。

シンギュラリティ到来によって予想される社会の変化

VRゴーグルを使う女性

私たちの社会には、シンギュラリティによりどんな変化が起こるのでしょうか?

例えば2016年はVR元年と呼ばれ、VRゲームなどのVRコンテンツが脚光を浴びました。シンギュラリティが起こるころには人間が物理的に動かなくても、VRの中で人生のほとんどを過ごすことになるだろうという見解を、先のレイ・カーツワイル博士から示しています。

VR技術も今後現実世界と区別がつかないようになるほどブラッシュアップが進み、体にナノマシンを埋め込むことで機器を介さずともVRが体験できるようになるということで、ある意味恐ろしい時代になってきました。「Vtuber」や「アバター」など、VRに関する技術が現在でも人気を博してはいますが、さすがに「人生の大半をVRで過ごすようになるなんて」と想像もできない方が多いのではないでしょうか。

また人体的にも進化が起こり、2030年代には脳の記憶を全てコンピューターに転送できるようになるとも述べられています。つまり肉体が死んでも実質心が死なないので、人間の寿命という概念が消滅するのでは、という考えが提示されているのです。

この考え方も現実味がいまいち感じられず、「SFの世界のようだ」と思う方も多くいらっしゃるでしょう。しかしAIの技術の発展は目覚ましく、「パラダイム・シフト(既存の概念を覆す、技術的な革新)」のサイクルがITの中でひときわ短い分野です。今後人間とロボットの境目がなくなり、心は人間だが、体はロボットであるなどの新しい人類「ポスト・ヒューマン」が登場するのも遠くない未来の話かもしれません。

 

シンギュラリティが注目される背景

円の中心に向かって伸びる矢印

シンギュラリティが注目されるようになったのは、前述したようなAIの著しい進化が起因しています。

人工知能の研究自体の歴史は古く、1950年代からすでに着手され始めていました。何度か限界に陥りながらも研究は続けられ、「ディープランニング(Deep Learning)」などの影響でその限界を破り、今のすさまじいAIの進化があります。

ディープランニングとは「深層学習」のことで、AIにより深く、高次の処理をさせるための機械学習方法です。ディープランニングを行うには処理の元となる大量のデータが必要で収集にも一苦労する状況でしたが、2000年代からのインターネットの普及でその状況が一気に変化しました。

インターネットには日々ブログやSNS、動画など、膨大なデータがアップロードされ、保存います。このインターネット上の膨大なデータをもとにディープランニングを行うことで、冒頭の囲碁棋士に連勝するような高スペックのAIまで開発されるようになりました。

また少子高齢化や人手不足など、各種の社会問題でさえもシンギュラリティは全て解決してしまうほどのポテンシャルを秘めています。このようにAIがすさまじい勢いで発達し、我々の社会を根本的に変化させてしまうかもしれないという点が、近年シンギュラリティが現実味を帯び、注目されている背景にあります。

シンギュラリティがもたらすとされる”2045年問題”とは

2045の文字

シンギュラリティの発生により人類は経済の発展などさまざまな面でメリットが受けられますが、同時にその危険性も指摘されています。そういったシンギュラリティに関する問題をまとめて「2045年問題」と呼びます。

一番想像に難くないのが「複数の仕事が一気に奪われる可能性」。肉体・知的労働問わず、シンギュラリティによりほとんどの仕事がAIロボットにより奪われる可能性が指摘されています。AIロボットに自分の長年やってきた仕事を取られることを想像すると、ぞっとしますね。

またロボットの倫理観についても、危険視する声が上がっています。

「ブレード・ランナー」や「アイ,ロボット」などをご存知でしょうか?どちらも大ヒットした有名な映画ですが、この2作はどちらも「AIを搭載した人間と同じような思考ができるロボットやアンドロイドが人間を殺害したり、攻撃したりする」シーンが描かれました。「いつかロボットがあまりにも賢くなったとき、その存在意義などから人間に反発し、反逆を行うかもしれない」という危惧を感じる作品です。

シンギュラリティが起こることにより、上記映画のようなロボットが人間に反旗を翻す事態が現実になるのではないかと、真剣に危険視する声も。ただしシンギュラリティ提唱者のレイ・カーツワイル博士は「人間とAI (人工知能)が敵対関係になることはまずないだろう」とも言っており、AIロボットにも処理の高次化により倫理観が備わり、犯罪的なことを起こす可能性は極めて低いと述べている専門家も大勢います。

ただし人間と同じように犯罪を起こさないとは言い切れないので、今のうちにロボットの犯罪などをしっかり取り締まれる法律を整備していた方がよいかもしれません。

シンギュラリティによって”奪われる”とされる仕事

パソコン越しにネットワークに触れる様子

シンギュラリティで奪われるとされる仕事には、実際どのようなものがあるのでしょうか。

物流関係の仕事

リフトで荷物を運ぶ様子

前述の通り物流はAIロボットを組み合わせた作業効率化などによりますます発展していくでしょう。ただし中で働いている作業員はどうなるのでしょうか?

例えばAIロボットがシンギュラリティにより進化して、在庫の管理や荷物の運び出し、精度の高い組み立てなど、全工程をAIロボットが誰の手も借りずに単独でできるようになるとします。すると現場監督や作業員など今まで工場で働いていた工場スタッフが不必要になってくる可能性があります。

事務関係の仕事

キーボードを操作するロボットの手

データ入力から会計処理など、各事務作業も今後シンギュラリティが起こると必要なくなるかもしれません。元々こういうシステムはどんどんIT化が進み、コスト削減の観点から人件費が減らされている業種です。

シンギュラリティによりデータの受け取りから入力、フォーマットを整えての納品など、物流と同じく各工程を全てAIロボットが代用する可能性は低いとはいえません。それによって今まで事務作業で働いていた社員が必要なくなってしまう事態も起こりえます。

建設関係の仕事

建設現場の様子

建設業界でもAIを利用したロボットで災害支援を行ったり、作業をAI搭載の重機で代用しようとする動きが進んでいます。シンギュラリティにより、AIが建築設計図や完成図をもとに一から自動で作業を行えるようになる可能性が出てきます。

これにより作業員を介さなくてもAI搭載の重機が土を掘り起こし、鉄柱を固定して家を建設するなど、建設作業を全てAI経由で行えるようになれば、わざわざ工事現場の作業員を雇う必要はありません。建設業界関係のリソースもシンギュラリティ前後で大きく減らされる可能性があります。

このようにシンギュラリティに対して何もせずあぐらをかいていると、自分の仕事が奪われる可能性もあります。実際昨今のIT化により、必要なくなった作業が多くあります。「シンギュラリティ前に、自分のスキルをこれからも上げてAIロボットに負けないようにしよう」と意識を高く持つことが、これから重要になってくるのではないでしょうか。

シンギュラリティで”生き残る”とされる仕事

パソコンを操作する様子

反対にシンギュラリティ後も生き残る可能性が高いのはどの仕事なのでしょうか?

スポーツ関係の仕事

色々なスポーツが表現されたイメージ

スポーツとは人間の体力の限界を超越して心技体を競い合うものであり、人間のスポーツ選手同士がプレイすることに価値があります。もちろん「e-sports」など人間の体を介さないスポーツ競技はありますが、やはり人間が行うことに意義のある競技という意味で、スポーツはこれからも重要な存在。

AIロボットでは代用できない感動がスポーツには発生します。今年開催予定の「ラグビーワールドカップ」や、2020年の「東京オリンピック」でも、さまざまな能力を持ったスポーツ選手が私たちを熱狂の渦に巻き込んでくれるでしょう。

画家や作家などのクリエイティブな仕事

電球を掴む手

AIロボットでも美術作品を描いたり、「ショート・ショート(短編小説集)」を書いてみたりと、クリエイティブな分野にも確かにAIロボットは参入し始めています。ただしクリエイティブな領域というのは作品自体に正解がないというのもあり、AIロボットが常に創造性の高いテーマのある美術作品や書籍をどんどん出していくのは難しいでしょう。

画家や作家など、クリエイティブなスキルが求められる分野の仕事も、シンギュラリティ後生き残っている可能性が高いです。

プログラミングやエンジニアリングなどの技術系の仕事

パソコンで仕事する人

AIロボットがAIロボットを作り出せる時代になるといっても、実際のメンテナンスやアップデートなどの細かい作業を全てAIロボットが代用するのは難しい面があります。また現場にAIロボットが赴いて働くとき、緊急時対応できるのはやはり柔軟な対応のできる人間であるべきでしょう。

プログラミングやエンジニアリング関係の仕事も、シンギュラリティ後続けて必要な仕事である可能性が高いです。

シンギュラリティが2045年より早まる可能性は?

大きな爆発

レイ・カーツワイル博士は、自身が提唱したシンギュラリティの発生が2045年より早い2029年に到来する可能性があり、人間と同等の知性や自意識を持ったロボットが開発されると述べています。レイ・カーツワイル博士すら思ってもいないスピードで、AIの進化が急ピッチで進んだのもあるでしょう。

またレイ・カーツワイル博士に限らず多くの専門家が、2045年よりも早くシンギュラリティが起こる可能性を示唆しています。

一方で「シンギュラリティは来ない」という意見も

人の目とロボットの目

上記のようなシンギュラリティは早く到来するという声の一方で、シンギュラリティは2045年後も先延ばしになって到来しないという声も上がっています。

レイ・カーツワイル博士と同じようなAI専門家からは、「アイデンティティー(自己意識)をプログラミングなどで作り出す技術がそもそも確立されておらず、手掛かりすらつかめていない」という意見も。また「ディープランニングでのAIロボットの認識失敗の原因など、細かい要因が究明できる段階ではなく、人間と同じ判断能力を持つまでには途方もない時間がかかるだろう」という声も多くあります。

このように2045年にシンギュラリティが発生する状況などとても発生しないという意見も多数挙がっています。ただしAI分野が指数関数的に進化を遂げつつあるのは間違いのない事実で、身近な例をいうとスマホも当初からは想像されなかったスピードで社会に普及しています。AIの思考について何かしらのブレイクスルー(技術的突破点)が発生すれば、シンギュラリティへと至る道は一気に切り開かれるのではないでしょうか?

シンギュラリティは遠いか近いか? AI技術の現状

人の手とロボットの手

結局シンギュラリティは遠い未来なのでしょうか、それとも近くまで来ているのでしょうか?

現在のAI技術でも、冒頭のPepperが軽い接客を行ったり、物流でAI搭載のロボットがピッキングなどを手伝ったりと、各業界でAIを活かした業務が行われています。ただし複雑な作業ができるまでにはまだ発達しているとはいいがたく、人間のあらゆる業務をロボットが肩代わりするのは難しい状況と言えるでしょう。

一方で、大手自動車メーカーのホンダが「パスボット」という従来より柔軟な接客ができるロボットの開発を行っていたりと、高スペックのAIロボットの開発が各企業で進んでいます。またディープランニングに必要なデータもどんどん膨れ上がっており、それらのデータを活用すればシンギュラリティは早まるのかもしれません。

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