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スマートホーム(スマートハウス)の記事
2020.05.08
2020.05.08

汎用人工知能AGIとは?AIとの違いや現状の技術について

人工知能「AI」が誕生し、街のいたるところでその息吹を感じる現代社会。実はAIの一歩先にある「AGI」という技術も注目を集めている人工知能の一種です。
AIよりも汎用性や自律性に優れているAGIとはどのような技術なのか、まだ良くわからないという方も少なくありません

記事ライター:iedge編集部

人工知能「AI」が誕生し、街のいたるところでその息吹を感じる現代社会。実はAIの一歩先にある「AGI」という技術も注目を集めている人工知能の一種です。
AIよりも汎用性や自律性に優れているAGIとはどのような技術なのか、まだ良くわからないという方も少なくありません。

AGIの特徴をAIと比較しつつ、AGIの事例も交えてご紹介していきます。

▼この記事でわかる!

  • AGIの概要
  • AGIとAIとの違い
  • 国内外のAGI事例

汎用人工知能(AGI)とは?

AGIとは、AIよりも汎用性、自律性に富んだ人工知能の総称です。Artificial General Intelligenceの頭文字を取って、AGIと呼びます。その名の通り、知能という概念をAIよりも包括的に捉えた人工知能で、現在のAIを特化型人工知能とすれば、AGIは“汎用人工知能”です。

これまではAIが強い分野と弱い分野がくっきりと分かれていました。

囲碁や将棋が良い例ですが、論理・数的処理は人間よりもAIのほうが優れていましたし、実際に囲碁や将棋のプロは多くのAI棋士に敗れています。これを応用してチャットボットなどの新技術が登場し、AIは私達の生活になくてはならない技術としての立ち位置を確保しています。

これに対してAGIは、特化ではなく”汎用的な知能の実現”を目指すもので、AIとは異なるかたちで知能にアプローチをかけています。

汎用人工知能と特化型人工知能

汎用人工知能は自ら学び、まだここにない情報を推論する能力を兼ね備えたAIです。

これまでの特化型人工知能は、すでにデータの集積された分野においてのみ真価を発揮するものでした。囲碁や将棋であれば、これまでの膨大な棋譜から勝ち筋や負け筋を読み取り、勝ちやすい手と負けやすい手を算出することで、勝率をぐんぐん伸ばしてきました。

これは推論ではなく、過去のデータから割り出した「勝ちパターン」の創出です。あらかじめデータの蓄積がなければ成立しませんし、自律的に知識を備えたというよりは学習させられたデータの山から分析を行った、というほうが正しいでしょう。

汎用人工知能はこうした特化型人工知能とは異なり、自ら知識を獲得しようとする自律性や道の状況について推論する汎用性を兼ね備えた人工知能です。囲碁や将棋であれば、人間の棋士が行う「三手の読み」のように、未来を推論し現在の行動を変化させる能力を備えたAIなのです。

AGIとAIの違い

AIはそれぞれ個別の実践領域で真価を発揮するものとして、現在の立ち位置を確保しています。例えば、AI女子高生の「りんな」は多くのユーザーと会話することで、ロボットとは思えない自然な会話を再現することに特化しているAIです。

しかし、データの解析を行うAIに転化できるかといえば、それは領域が異なりすぎているために難しく、チャットボットとしての価値が他の領域に活きることはありませんでした。

そうした背景もあり、従来のAIは特化人工知能と呼ばれています。

AGIは汎用性を備えた人工知能なので、幅広い範囲の問題解決力を備えたAIとして期待されています。これまではAIに学習させるため膨大なデータを用意する必要がありましたが、AGIには自律性が備わるので自ら学習しデータの収集を行えます。その上で、推論する能力を備えているので未知の状況に陥っても自ら知性を発揮し、問題解決に取り組むことが出来ます。

例えば囲碁や将棋には「定石」という最善手の積み重ねが存在しますが、AIはこの定石をとてつもない速度で理解、生成していると考えられます。過去の勝ち筋から「ここに打った勝負は勝つ確率が高かった」という手を選ぶようにし、勝率を上げていました。

AGIは逆に「ここに打てば相手はここに打つ、なのでこう返せばよい」という極めて人間的な思考を経て一手を打ちます。この差がAIとAGIの大きな隔たりだといえます。

AIを理解するための4つの類型

AIには大きく4つの類型が存在することをご存知でしょうか。

  • 汎用型AI
  • 特化型AI
  • 弱いAI
  • 強いAI

上記の4種類が存在し、それぞれに特徴を持っています。
詳しく見ていきましょう。

汎用型AI

ここまで述べてきたAGIのことを指します。推論能力を持つことで汎用性を確立し、どんな分野でも自ら学習する自律性を持たせることで、自ら知識を増やして問題解決に取り組めるAIになると予想されています。

特化型AI

従来の数的処理やチャットに最適化されたAIのことです。それぞれの分野に対して膨大なデータを元に確度の高い返答を返すのが特徴です。

それ故に、データを積んでいない分野に対しては学習が足りておらず、1から学び直す必要がありました。主に数的・論理的な処理に強く、現在でも多くの技術に応用されているAIです。

弱いAI

弱いAIとは人間と機械の間を取り持ち、業務の一部分が円滑に運ぶようにしたり、人間の能力を一部バックアップして業務効率化を図るように組み込まれたAIのことです。

人間のサポートとしての色が強く、能力の拡大や創造性を引き出すための刺激物として機能します。主に現場での作業をバックアップし、これまでのシステムでは補完しきれなかった部分のサポートを行うことが期待されています。

強いAI

強いAIとは、いわゆるAIらしさを兼ね備えたAIであるといえます。自発的に行動や思考、学習を重ねて知能を積み重ねていき、人間に親しい知能を備えて「自意識」を抱いたAIのことを強いAIと呼びます。未だ実用化はなされていません。

よくAIが人間に取って代わるのではないか、という議論がなされますが、その場合はこの強いAIがイメージされているのではないでしょうか。物事の無駄を排除して人間を迫害したり、論理的思考で人間に勝って職を奪ったり、といった具合に万能な人工知能の存在を想像するでしょう。

こうした自律的な学習を行う自意識を備えたAIが強いAIです。誰もが知っていて、イメージできる強いAIの例を挙げるとすれば、“ドラえもん”でしょう。

 

AGIについてもっと詳しく知ろう

ここまでで弱いAIと強いAI、AIとAGIの違いなどを詳しく見てきましたが、お分かりいただけたでしょうか。しかし、中にはまだAIとAGIの違いがよく分からないという人もいるかもしれません。そのため、ここではAGIについてより詳しく、より分かりやすく解説してみることにします。

AIというのは、現段階では限られた環境でのみ真価を発揮するものです。ビッグデータを活用して分析を行う、ディープラーニングのシステムなどはよく知られたところだと思います。先に書いた囲碁のソフトに関してもそうですが、これらのAIは単にデータの分析をし、最善の回答を示してくれるに過ぎません。

これに対して、AGIというのは簡単に言えば「より人間に近いAI」のことを言います。漫画に出て来る“ドラえもん“や“鉄腕アトム“などを想像していただければ、AGIというものがどんなものなのか、ということがよりはっきりと分かっていただけると思います。つまり、人間と同じように考え、人間と同じように行動してくれるものがAGIなわけです。

しかし、AGIはロボットやアンドロイドなどのように必ずしも人に近い形を備えているわけではありません。今までのAIと同じように、パソコンやスーパーコンピューターのように、機械の中で動作するものもAGIです。

すなわち、いかに人間的な思考を持っているか、多種多様な状況に対応出来るかが、AGIとしての真価なわけです。ですからそれは、必ずしも人と同じような形を持っている必要はありません。現に、現在研究されているAGIの分野も、AIをより深く発展させたものとなっています。

では、具体的にAGIがAIを超えるためにはどのようなことが必要になってくるのでしょうか。それは大きく分けて3つに分類することが出来ます。

すなわち、

・様々な文脈や環境で使用できること

・利用者が想定していなかったような問題も解決できること

・ある問題を別の問題にも応用して考えられること

です。

こうしたAGIのあり方は、「創発主義」とも呼ばれています。創発主義というのは、簡単にご説明すると、より小さな問題からより大きな問題の答えを導き出すようなやり方のことを言います。今までご説明してきたことを例に取れば、囲碁専用のソフトがチェスや将棋といった他のゲームや社会問題などにも対応出来るようになること、これが創発主義です。

創発主義が実現されれば、今まで部分的にしか問題を解決することが出来なかったAIが、他分野の問題も解決していくことが出来るようになります。実際、ディープラーニングのシステムの起源は、元々は単純なデータ分析の研究から始まったものです。しかし、それらをネットワークとして組み合わせることで、より人間に近い判断が出来るようになってきました。

 

なぜ今AGIが必要とされているのか?

ではなぜ、今AIではなくAGIが必要とされるようになってきているのでしょうか。一つの答えとしては、人間社会の仕組みや構造がますます多様化し、様々な価値観が生み出されているからだと言えます。

現代は常に変化し、進化している時代です。ですから、今までの問題に対処出来ていたAIでも、環境が変われば再びプログラミングをし直さなければいけなくなります。そのたびにソフトウェアを更新するのには、膨大な手間がかかります。

一例として、現在では経済や投資の分野でもAIが活用されるようになってきています。こうした技術・システムはフィンテックと呼ばれています。しかし、このようなAIを用いても、これから市場がどうなってくるのか、どんな製品やサービスが登場してくるのかまでは予測することが出来ません。AIに出来ることは、「現状の分析」のみにとどまってしまうわけです。

今とくにAGIが必要とされているのは、こうした経済の分野や医療の分野などです。例えば医療の現場では、ライフスタイルの変化とともに様々な疾患が生じるようになってきました。生活環境が変化したり、寿命が延びることで、今まではかからなかった病気にも、人はかかるようになってきているわけです。

こうした時に強いAI、すなわちAGIがあれば、今までのデータと患者個々人のデータを比較分析することで、患者が今どのような状態にあるのか、どんな治療を行っていけば良いのか、そのためにはどのような医薬品の開発が必要となってくるのか、といったことまでを導き出すことが出来ます。

自立したロボットのようなものが、すぐに登場してくると考えると少し怖くなってしまいますが、AGIとはあくまでも人間の社会、人間の生活をサポートするためのものです。人間の脳では予測不可能な問題に対してヒントを出してくれる、それがAGIに出来ることでもあり、期待されていることでもあります。

こうしたAGIには国内外の様々な研究機関や民間企業が関心を示しており、有名なところではIBMやインテル、Microsoft、GoogleなどでもAGIの研究や開発に対して前向きな姿勢を打ち出しています。AGIはまさに多種多様な分野で研究が進み、開発と完成が一歩一歩近づいてきているわけです。

現在、積極的にAGIの研究を行っているのは、こうした先進企業や公的な研究機関ですが、将来的には末端の企業などでもAGIの研究や開発が進んでいくことになるでしょう。AGIとは簡単に言えば次世代のAIであり、それが必要とされるのは人間社会のありとあらゆる分野になってくるわけです。

 

国内外のAGIの事例

国内でAGIについて研究を進めている団体では、全脳アーキテクチャ・イニシアティブというグループが精力的に開発、研究を進めています。

これまでのようにAIサイドからアプローチするのではなく、ゴールである脳の側からアプローチを掛ける手法を取っています。脳の構造をヒントにしつつAGI開発に乗り出している全脳アーキテクチャ・イニシアティブ。

代表はドワンゴ人工知能研究所所長の山川宏氏。副代表に東京大学大学院工学系研究科准教授の松尾豊氏と、AI研究や脳科学の第一人者が名を連ねていることも国内で注目を集めている理由の一つです。今後さらに注目が集まることが予想される、最先端を行くAGI研究集団です。

他にも国内で行われているAGI研究の事例がありますので、ご紹介します。

Team AI

AIに関する発明を行うオープンコミュニティ、Team AI内に2017年に新設されたチーム「Team AGI」では、従来の特化AIではなくAGIの開発を専門に行っています。研究成果として2018年3月にはヒューマノイド連動AGIのプロトタイプを発表し、大きな波紋を生み出しました。

人間に近い見た目を持ち、人間同様の感情や倫理観を持っているヒューマノイド。驚くべきことに再現の難しい「忖度」までできるというのです。人間の持つ損得勘定や複雑な感情を再現していますが、プロトタイプということもあり、今後さらに改良を重ねられていくことが期待されています。

国内の事例を紹介してきましたが、国外のAGI技術はどこまで進んでいるのでしょうか。海外で発表された開発事例を元に読み解いていきましょう。

トドラー

MITの研究員であるラス・テッドレイク博士が開発したトドラーは日本語で「よちよち歩きの幼児」という意味を持つ自立歩行ロボットです。取り付けられたセンサーから周囲の状況を読み取り、傾きや動きの速度を調節しながら転ばないように進んでいく技術を搭載しています。

自律性と汎用性を手に入れたために、周囲に合わせて自身の行動を適応させることが可能になっています。その証拠にトドラーは、一度も歩いたことのない場所であっても、20分ほど歩けば土地に合わせて歩き方を適応させ、歩けるようになるのです。

一歩ごとにフィードバックを行いパラメータを調節しているため、転ばずに知らない土地を歩いていける次世代型の二足歩行ロボットです。

LUNA

株式会社日本ルナウェアAIテクノロジーズが開発した汎用人工知能「LUNA」は、自律性や汎用性を兼ね備えたAIです。

データサイエンティストとしてビッグデータを読み取り顧客管理を行ったり、サービスの向上や営業のコンサルティングを行うことも出来ます。しかしそれだけではなく、質問に対して即興で返答を返す能力も兼ね備えているのです。例えば、同じ質問に対しても、質問者の状況に合わせて返答が変わるなど、これまでの特化型AIでは成し得なかったことを実現しています。

株式会社日本ルナウェアAIテクノロジーズのCEOを務めるバルアビジョイ氏は以下のように述べています。

「LUNA」は自分で考える能力があり、質問に対して正確な回答を返すことができます。情報検索や画像を調べたりも「LUNA」が行います。会話のバリエーションも多彩です。同じ質問に対して、回答はいつも同じではなく、日によって異なる反応をして、会話が長く続くのも特徴のひとつだ。

引用:ロボスタ/https://robotstart.info/2017/01/18/robodx-agi.html

人間の未来に寄り添う汎用人工知能の先駆けでもある「LUNA」は要注目です。

AGI開発の現状と展望(まとめ)

まだまだ発展途上の技術であり、研究に本腰を入れている企業や国は少ないです。そのため伸びしろがあり、ますます期待の高まる分野でもあります。

また、AGIの開発について、AGIの構築を目指している「全脳アーキテクチャ・イニシアティブ」の代表・山川氏は「オープン・プラットフォーム戦略」を掲げてアプローチを進めています。

AGIの開発は、一見するとAIを並列で並べれば解決しそうにも思えます。それぞれの特化している分野を組み合わせて強いAIを作れば、弱点のない知能が結成しそうですが、それでは汎用知能は完成しないのだと山川氏はいいます。

足りないデータを補うように推論する能力を備えるためには、既存の知識を柔軟に組み合わせて想像するためのスキルが必要になり、仮に「技術X」と呼んでいるそれを開発するにはまだ時間がかかるそう。

2020年以降には大規模な研究に移行させるとのことですが、研究すべきことは山積み。私達が思い描くようなAIの到来は、もう少し先になりそうです。

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