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スマートホーム(スマートハウス)の記事 2018.09.11

【エンタメ作品が描き出すAIの未来 vol.1】マンガ「デモクラティア」から考える「ひらめき」を持ったAIの可能性

記事ライター:Yuta Tsukaoka
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3,000人のユーザーによる「合議制」で動くアンドロイドの物語

人工知能のイメージ画像
※画像はイメージです

創作物に登場する合議制AI(複数のコンピュータによる議論、多数決で決断を下すAI)でもっとも有名なのは、新世紀エヴァンゲリオンに登場する「MAGIシステム」だろう。

自爆が提議された状態のMAGIにナノマシン型の使徒・イロウルが侵入して、MAGIを構成する3つのAIをひとつずつ侵し、多数決で自爆を決議させようとした回を覚えている読者も多いのではないだろうか。

今回紹介する「デモクラティア」というマンガに登場するアンドロイド「ヒトガタ」もあらゆる判断が合議制のもとに成り立っているが、AIによる合議ではなく3,000人のユーザー(人間)による議論が根拠になっている。

つまり、ユーザーから提議される多数の指示(歩け、止まれ、◯◯と言え、など)からもっとも支持を得たものが、アンドロイドの行動を決める。

なので、冷静な読者は気づいているだろうがこのマンガの主役はいわゆる「AI」ではない。自律して考える能力はなく、多数決の結果を反映するボディがあるに過ぎないのだ。

「エンタメ作品が描き出すAIの未来」の1本目として不適切と思われるかもしれないが、もう少し読み進めてほしい。この作品には、今のAIに不足している能力を補完するアイデアがあるのだ。

 

「ひらめき」を反映する多数決システム

挙手している多数の人々

この作品で「ヒトガタ」に採用されている多数決システムはとてもユニークだ。

多くのユーザーから提議された指示のうち、多いものから上位3つが選択肢として表示されるのに加えて、単一意見の中から「入力の早かったもの」がさらに2つ並ぶのである。

なので、たとえば「朝、充電が終わったベッドの上」といったシチュエーションで選択画面には以下のような並びが起こりうる。

多数意見

  1. 体を起こす
  2. 周りを見回す
  3. 時間を確認する

単一意見

  1. その場でブリッジする
  2. 二度寝する

多数意見は合理的なのに対し、単一意見は一見無意味なものが並んでいるが、実際、私たちは「無意味な行動」をとることが往々としてある。

つまり、これらは「ただのひらめき」以上のものではないのだが、これらが選択肢として登場することで「ヒトガタ」は非常に人間的なアンドロイドとなりえていて、それだけに様々な事件が起こる…というのがこの作品の見どころである。

これ以上はネタバレに入っていくので作品については置いておこう。AIを扱った近年のマンガ作品として出色の出来だと思うので、ぜひ読んでみてほしい。

さて、ここからが本題である。私たちは、この作品を通じて何を学ぶべきなのだろうか?

 

人間らしさとは「非合理」であることなのかもしれない

湖の前に立つ女性の後ろ姿

映画やドラマに登場するAIが人間の行動を指して「非合理です」と切り捨てる場面を見たことがあるだろう。このような描写が多くの作品で見られるのは、私たちが「人間的」であることの条件として「非合理な行動にも意味を見出す」ことに重きを置いているからではないだろうか。

今のAIは将棋やチェス、画像認識、コールセンターサポートなどの「特化型」がほとんどで、私たちがSF作品で見てきたような「自律的に行動して性格のようなものを持ち、友人になれるAI」には程遠い。

また、残念ながらそのようなAIが作られる可能性をほとんどゼロと見積もっている科学者の意見も多く、その理由は「数値化できない人間の行動をプログラムにできないから」だという。

その「プログラミングできない行動」をAIが起こすための ――つまり、AIが人間になるためのヒントが、この作品で描かれている「単一意見の選択」なのかもしれない。

たとえば、古くから議論されているテーマに「AIは会社経営ができるか」というものがある。

様々なデータをコンピュータに登録し、たとえば経営資源の割り振りについてAIが合理的に判断することは可能だろうが、実際に「経営」ができるかと言えば今のところ「NO」と答えざるを得ないようだ。

それは何故か。

経営者の仕事の大半は「判断」だが、そこには「ひらめき」による思考のジャンプが不可欠だからだ。

AIによって、限りある経営資源を安全に運用できるようになる未来は来るだろう。しかし、今のAIの延長線上に「ひらめき」というプログラム化できない要素が入り込む余地はない。

男性の外見をした人工知能のイメージ画像

では、AI開発に根本から変化をもたらすようなイノベーションが起こり、AIが「ひらめき」を得る能力を持ったらどうだろう。それは非常に人間的で、むしろ様々なデータを忘れることがないだけに人間よりも能力が高いと言えるのではないだろうか。

テクノロジーは常に不完全性を補完する方向に発展するので、人間はきっとそれを成し遂げてしまうと私は考えている。つまり、そのとき――シンギュラリティと呼ばれている「そのとき」が来ると、AIのほうが優れた存在になってしまう。

一方で、「人間的な」AIが登場したとしても、「AIのような」人間は生まれないだろう。

そういった意味で、本作で描かれる「ヒトガタ」の姿が未来のAI、そしてアンドロイドの姿に近いのでは…という予感がある。いつか来るかもしれないそんな未来で、私たち人間が行うべきこと、なすべき仕事について考えさせられる作品だった。

<このライターの記事をもっと読む>
『Detroit: Become Human』のデヴィット・ケイジが語るシンギュラリティとは
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