Bluetoothとは?
そもそもBluetoothとは、近距離間でのデジタル機器のデータ通信で用いられてきた無線通信技術です。
分かりやすく言えばオーディオとヘッドホンのケーブルの代わり、スマホとイヤホンのケーブルの代わりのような役割を持っています。
あるいは、例えばAppleのMacやiPhoneのAir DropもBluetoothが使われていますし、Bluetoothに対応したキーボードなども発売されていますので、実際に利用している人も多いのではないでしょうか?
同じ無線通信というとWi-Fiを思い浮かべる方も多いと思いますが、Wi-Fiが複数のデジタル機器同士でネットワークを構築できるのに対し、Bluetoothは1対1での通信を目的として開発されたもので、利用にはペアリングが必要です。
BluetoothはBluetooth Special Interest Group(SIG)という団体が中心となって仕様策定などを行っており、普及が始まったBluetooth1.1から最新のBluetooth5.0まで、9つのバージョンを経て今に至ります。
そして日本時間2017年7月19日、ついにSIGはこれまでのBluetoothの概念を覆す「Bluetooth Mesh」をリリースしました。
Bluetoothの常識を超えたBluetooth Meshとは?
Bluetooth Meshの最大のポイントは「1対1」のほかに「1対複数」の通信に対応したことです。
つまり多数のデジタル機器同士を相互接続することが可能になったということです。
一つ一つのデジタル機器の通信距離に関してはさほど変わりはないとされていますが、他のノードに対して“リレー形式”でデータを送信できるようになりますので、結果として非常に広い範囲をカバーすることができるようになったのです。
あまりにも遠い場所にあるデバイスにデータを送信するとなると、中継箇所が増えますので、さすがにタイムラグなどが発生する可能性はありますが、住宅やオフィスなどでの使用が目的であれば十分その実力を発揮してくれるでしょう。
*ノードとは? パソコン、スマホ、ルーター、プリンター、および各センサー端末などを指す言葉です。
これまでのBluetoothは主に1対1の通信を目的としていましたので、どちらかと言えば「個人向け」に作られてきたと言えます。
一方、今回のBluetooth MeshはIoTデバイスやスマートホーム関連デバイスの開発などにおける「産業用」を目的としていることが特徴です
なお、Bluetooth Meshは正式にはMesh Networking Specificationと言いますが、Bluetooth Meshで覚えていただければ十分かと思われます。
Bluetooth Meshに用いられているネットワークは?
Bluetooth Meshには「フラッド型」と呼ばれるネットワークが組まれています。
例えばAというデバイスからDというデバイスへデータを送信したい場合、
AからBへ、BからCへ、そしてCからDへとデータをリレーのごとく伝えていくというものです。
この時、AからBへ、BからCへ、CからBへ、BからCへ……というように反復してしまってDに送信されないということを防ぐために、各デバイスは一度受けとったデータをキャッシュして再度受け取らないように工夫されています。
これによって数十、数百はもちろん、場合によっては数千ものノードをサポートすることが可能となります。
ルーターやハブなどを経由しないだけでなく、例えば中継ポイントのデバイスの一つに不具合があっても他のデバイスを経由してデータを送信できるなど、信頼性や冗長性が高いというメリットもあります。
また、Bluetooth Meshのネットワークを経由して送られるデータやメッセージは全て暗号化されることになりますので、特に重要なセキュリティという面でも安定性が確保されていると言えるでしょう。
早ければ年内にも対応製品が登場する!?
今回はBluetooth Meshの基礎的な部分についてご紹介してきました。
普段からBluetoothをあまり利用しない人は若干ピンとこない内容だったかもしれませんが、今後のIoT市場やスマートホーム市場においてBluetooth Meshはかなり重要なキーワードになってくると思われますので、ぜひこの機会に覚えておきましょう。
なお、すでにBluetooth Meshを使って1,000を超える照明などを制御するシステムの実証実験を行っている企業もあり、早ければ年内にはBluetooth Meshに対応した製品が発売されるのではないかとも言われています。
消費電力も低く、設置やネットワークの拡張も容易に行えるBluetooth Mesh、要注目の技術です。