IoTの普及は確定的、デメリットやリスクを知っておくことが大切
「IoT」という言葉をここ数年メディアなどで取り上げられているのを見て知ったという方もまだまだ少なくありませんが、そもそも携帯電話(ガラケー)やスマホも、インターネットにつながる電話を意味するため、そもそもIoTであり、そう考えるとIoTはすでに私たちの生活に深く浸透しているということが言えます。
車の自動運転などにもIoT技術が導入されていますし、スポーツの世界でも活用されています。あるいは一般家庭レベルで言えば、HEMSなどのエネルギーマネジメントシステムを導入したスマートハウスも広義でIoTですし、スマートホーム向けのIoTデバイスも続々と登場しています。
ほかにも農業、製造、物流、医療、介護、教育などあらゆる分野においてIoT技術が導入され、活用されています。
日本だけではありません。今や世界各国で日々IoT技術が開発・改良され、さまざまなビジネスやサービスを生み出しています。たとえ「自分には無関係」と思っていても、否応なしにIoT全盛時代がやってくることはもはや確定的なのです。
IoTによるメリットを考えてみると、
・私たちの生活を豊かで便利なものにしてくれる
・日本の超高齢化や少子化による課題を解決してくれる
・エネルギーの効率利用を可能にしてくれる
・新しいビジネスやサービスの創出につながる
・高齢者の健康的で快適な暮らしをサポートしてくれる
などさまざまなメリットが浮かびますが、その反面、IoTにはデメリットやリスクも当然ながら生じます。
私たちユーザーはメリットだけでなく、IoTに潜むデメリットやリスクを知っておくことが大切です。
IoTにおいて考えられるデメリットやリスクとは?
IoTのデメリットを語る上で欠かせないのがセキュリティです。
IoTは「Internet of Things」の略語で、日本では“モノのインターネット”と訳されます。簡単に言えば身の回りのあらゆるモノがインターネットにつながるという仕組みや技術のことです。
PCやスマホをお持ちの皆さんはなんらかのセキュリティ対策を講じていると思いますが、それはウィルスや不正アクセスといったサイバー攻撃などが危険であるという認識があるからでしょう。
IoTによってエアコン、テレビ、照明などの一般家電をはじめ、自動車や医療機器に至るまでさまざまなモノがインターネットにつながるとしたら、それはつながっているモノすべてに、サイバー攻撃などのリスクが生じることになります。
開発者やメーカーなどはもちろん、なんらかのセキュリティ対策を講じてはいますが、それが必ずしも100%安全であるとは限らず、ユーザーのインターネットセキュリティに対する意識がまだまだ低いのも課題です。
「なんらかの実害を受けてはじめてサイバー攻撃されていることを知った」というケースではすでに遅く、たとえば屋内に設置したセキュリティカメラを覗き見されているだけであれば、気づくことなくプライベートを丸裸にされてしまう可能性もあります。
あるいは各デバイスが取得したビッグデータを保存するクラウドが攻撃を受け、大規模なデータ漏洩に発展する可能性もあります。
ユーザーとしては、
・速やかなソフトウェアアップデートで常に最新の状態を保つ
・家庭内ネットワークにつながるデバイスを一括保護してくれるセキュリティデバイスやサービスを利用する
などは最低限、IoTのデメリットを理解した上で押さえておきたいポイントです。
続いて、これは国家レベルで取り組まなければならない部分でもありますが、2020年には数百億という膨大な数のIoTデバイスが世の中に登場すると言われています。
その分ネットワークが大規模化し、かつ複雑化していくことが想定されますが、地震、台風、豪雨など自然災害が多い日本において、なんらかの災害が発生した場合、あるいは事故などにより大規模停電、システムダウン、エラー等が発生した場合、特に医療分野、交通分野などにおいて甚大な被害を生む可能性があります。
これを個人レベルで考えてみると、家庭内ネットワークに接続されたさまざまなデバイスのうち、核となるデバイスがなんらかの原因でエラーを起こしたり不具合が発生したりすることでエアコンが誤作動を起こした、コーヒーメーカーが勝手に起動した、などといった現象を招く可能性があるということです。
IoTではこうしたデメリットやリスクがある一方で、たとえばスマートホームにおけるIoTデバイスではユーザーがあらゆる生活データを提供することでより一層パーソナライズされた質の高いサービスを受けることができるようになるメリットもあります。
ユーザーがどこまで情報を提供することを許容しているのかという意識も問われますし、取得してクラウド上に保存されたデータに対するプライバシーの問題なども今後取り上げられるのではないかと言われています。
使用者においての具体的なデメリット
IoTは私たちの生活を豊かにする便利なアイテムです。いずれは日常生活の必需品として各家庭に浸透するでしょう。実際に使用する前に具体的なデメリットを知ることは大切です。トラブルを未然に防ぐためにも、IoTのデメリットについて確認しましょう。
個人的な情報を提供する必要がある
IoTを使用すると、対応するアプリに個人的な情報の入力を求められることがあります。例えばエアコンであれば、ON・OFFを自動操作するために帰宅時間を入力することもあるでしょう。情報の入力は、IoTデバイスを使用者のニーズにあわせるために必要です。しかし、入力した情報が外部に漏れると、生活スタイルを推測されるといった危険があります。特に住所や個人名・性別などが含まれた情報の入力が必要なアプリを使用する時は、セキュリティレベルの高い製品を選びましょう。
カメラ付きのデバイスは特に注意
カメラ付きのデバイスは特に注意が必要です。ペットの見守りカメラといったIoTデバイスが不正にアクセスされると、プライベートを覗き見され、動画を撮影される恐れがあります。パソコンに付属しているカメラも同様です。ペットカメラといったIoTデバイスであればパスワードを推測されにくいものにする必要があります。パソコンは最新のセキュリティソフトを常に更新しましょう。また、普段カメラ使用していないのであれば、パソコン設定でカメラをOFFにしてください。カメラ部分にシールや紙を貼って目隠しをすることも効果はあります。
頼りすぎるとシステムダウンや通信障害などの影響が大きい
IoTに頼りすぎると、いざ使えなくなったときの影響が大きくなります。IoTが生活の一部となれば、人々の暮らしが便利になるでしょう。ただし、頼りすぎてしまうとトラブルに対応できない可能性があります。システムダウンや通信障害が起こって使用できなくなっても、回避や代替案が可能な範囲でIoTを取り入れましょう。日常生活に必須のIoT製品を選ぶときは、いざという時のバックアップが整った製品を購入してください。
セキュリティリスクにどう対処するのか
IoTデバイスは今、さまざまな分野で成長している産業です。スマートフォンやパソコンはIT関連の会社で製造されますが、IoTデバイスは他の会社も参入しています。それぞれの会社が独自の基準で製造しているため、セキュリティの統一規格が存在しません。IoTデバイスによっては、セキュリティのアップデートを行わないものもあります。セキュリティリスクへの対処方法を知って、トラブルを事前に回避しましょう。
初期設定のパスワードは使わない
IoTデバイスを使用する前に、必ず初期設定のパスワードを変更しましょう。購入時のパスワードは同じである可能性が高く、ハッカーの侵入を容易にさせます。アプリに登録するパスワードも同様です。大文字・小文字・英数字・記号を混ぜた複雑なものにしましょう。また、設定したパスワードを定期的に変更してください。
アップデート作業を必ず行う
セキュリティ対策にはソフトウェアのアップデートが必要です。日々発生する新しいウィルスに対応するには定期的なアップデートが欠かせません。メーカーのホームページから情報を定期的に確認し、常に最新の状態にしましょう。アップデートのお知らせをメール連絡してくれる製品であれば、確認の手間が省けます。必ずメール登録をしましょう。
使用しなくなったデバイスの接続を切る
IoTデバイスが古くなるとアップデート対応が終了する可能性もあります。古いソフトウェアをそのまま使用することは、セキュリティ対策としては不十分です。アップデート対応が終了したIoTデバイスはインターネットの接続を切りましょう。また、使用しなくなったIoTデバイスも放置せずに接続を切ってください。
社会全体に関係する問題
IoTがどんどん普及すると、個人の問題だけでなく、社会全体で解決する問題がいくつか発生します。これからのIoT社会に向けて、課題となりそうな問題をご紹介します。
電力需要が増えすぎてしまう
IoTデバイスが普及すると、今まで電力を必要としていなかった製品にも電力を使います。さまざまな製品をインターネットにつなげることで、電力需要は急激に増加するでしょう。IoT社会が発展するには電力が不可欠です。増え続ける需要に対応しなければ、電力供給停止などの大きなトラブルに発展する可能性があります。
電力供給問題の対応策としてエネルギーハーベスティングという技術が注目されています。これは、身の回りにある密度の低いエネルギーを収穫(ハーベスティング)して、電気エネルギーに変える技術です。光・熱・振動・電波といった微弱なエネルギーを有効活用します。この技術が発展すれば、電源が不要なIoTデバイスも登場するでしょう。
大量の電波が飛び交い通信障害などを引き起こす
IoTデバイスが多くなると、インターネット通信も増加します。大量の電波が飛び交うことで、電波干渉や通信障害を引き起こす可能性があるでしょう。電波干渉は複数の電波が同じ周波数帯を使うことで起こります。飛び交う電波が増えることで電波干渉の確立が高くなるのです。大量の情報がやりとりされると、通信障害を引き起こすこともあります。今後の技術革新が必要な分野です。
システムを管理できる人材が不足する
IoTだけでなく、IT人材の需要は高まり続けています。IoTシステムを管理できる人材が確保できなければ、サービスを続けることができません。人工知能(AI)技術も、人の手が必要ないほどには至っていないのが現状です。IoTのような先端技術に精通した人材をどれだけ育てることができるのかが、今後の課題になるでしょう。
有意義なIoTライフを送るためにもデメリットやリスクの認識は大切
今回はIoTのデメリットに特化した内容のため、若干マイナス要素の多く感じられたかもしれませんが、IoTを取り入れた暮らしは私たちの生活をより快適で便利にしてくれることや、見守り、防犯といった面でも大きく貢献してくれることは間違いありません。
さらに現在の実証実験などが進み、IoT技術がさまざまな分野に本格的に導入されることになれば、高齢者の増加や生産年齢人口の減少といった日本が抱える課題の解消にも大きく寄与してくれるでしょう。
そんなIoTがある暮らしをより有意義なものにするためにも、早いうちからIoTが抱えるデメリットやリスクを把握しておくことが大切です。