IoT市場で存在感を増すソフトバンク
2016年7月18日、ソフトバンクの孫正義社長がイギリス向けと日本向けにトータル3時間20分を超える記者会見を行ったのはまだ皆さんの記憶にも新しいことと思います。
イギリスに本社を置くARMホールディングス(以下、アーム社)を、240億ポンド(日本円にしておよそ3兆3000億円)という超巨額資金を以って100%買収することに合意したことを受けての記者会見だったわけですが、これが何を意味するのか考察してみましょう。
まずアーム社は半導体を設計する世界的な大企業で、あるシステムの動作に必要な機能をすべて一つのチップ上に実装する設計手法“SoC(System on a Chip)”でも有名な企業です。
現在、世界中で使われているスマホに搭載されている半導体の実に97%~98%がこのアーム社が設計した半導体であると言われています。
この買収はまさに黎明期を迎えているIoT時代とその将来を見据えたものと言えます。
高い設計力と実績を誇るアーム社の技術を買収しておくことで、今よりももっとあらゆるモノがインターネットに接続される時代を迎えた時、ソフトバンクはIoT市場を牽引する存在になりうるという確信があったのかもしれません。
事実、孫社長は「アーム社の事業がソフトバンクの中心事業になっていく」と明言しています。
さらに、2017年12月4日のプレスリリースでは、AI技術を活用したSoC製品の設計や開発(3D深度センサー、イメージプロセッサーなど)で豊富な実績を誇るイスラエルのInuitive社とAIおよびIoT分野での協業に合意したと発表されました。
ソフトバンクが提供しているIoTプラットフォーム、AI、ビッグデータなどと組み合わせることにより、さらに質の高い最先端のIoTソリューションの提供を実現できるようになるとしています。
このように世界的に見ても、ソフトバンクはIoT市場における自身の存在感を着実に大きなものにしています。
ソフトバンクが提供するIoTソリューションの導入事例
現在すでに何十億台というIoTデバイスが開発され、販売されていますが、それぞれが独立してユーザーに利便性や快適性、効率化などをもたらしていたものが横展開を見せはじめています。
クラウド技術の向上などもあって、あらゆるIoTデバイスが取得したデータを一つのプラットフォームに集約するという流れが主流になってきているのです。
ソフトバンクはプラットフォームを公開し、さまざまな業種の各種データを連携させることによって、今までなかった新たなビジネスやサービス、価値観などを生み出そうとしています。
そんなソフトバンクのIoTソリューションの導入事例を見てみましょう。
たとえば、アスクル株式会社のチャットボット「マナミさん」の課題を解決する糸口を見出しました。
チャットボット「マナミさん」が抱えていた主な課題は、以下のようなものです。
・「マナミさん」の正答率を上げるためのチューニングに時間がかかっている
・「マナミさん」が正答を見つけられない場合の応答を改善したい
ソフトバンクは2015年以来、IBMと提携して同社が開発した質問応答システムWatsonの日本語化を進めてきましたが、アスクル株式会社の課題の解決において、そのWatson日本語版をエンジンとした会話アプリケーション「バーチャルエージェント」を導入したのです。
それにより、
・従来よりも短期間で新たな正答を提供できるようになった
・正答率が向上した
・チューニング時間が短縮した
・正答を見つけられない場合でも、類似する過去の質問から関連性の強いものを複数選んで、候補として返答できるようになった
など、さまざまな効果をもたらしました。
また、東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)は、
・死亡につながる重大事故の危険性を十分に理解してもらうための新たな安全教育方法を模索している
・時間や場所に制約されない安全教育を提供したい
といった課題を抱えていました。
これらの問題を解決するにはVR(仮想現実)の活用が最適であると考えたJR東日本は、コンテンツから配信プラットフォームまでワンストップで提供できるソフトバンクとともに取り組むことを決め、3カ月間の制作期間を経て、
・走行する電車に衝突する映像
・高所作業車から転落する映像
など4パターンの事故を疑似体験できるコンテンツを完成させて、社員の安全教育の実施へとつながりました。
ヘッドマウントやスマホなどのデバイスを配布することで“時間や場所に制約されない”という希望も実現したのです。
なお本件では、ソフトバンクが撮影手法や撮影会社のアレンジを行い、シナリオ制作からJR東日本とともに共同で取り組んだそうです。
IoTソリューションをワンストップでサポートできるソフトバンクの強さ
IoTソリューションを提供するには、センサーネットワークの構築、通信回線および通信機器の調達、データ収集および解析、機器ネットワークの保守管理からコールセンター業務などさまざまなサポートを必要とします。
ソフトバンクのIoTはこれらをすべてワンストップで提供することができるという大きな強みを持っています。
さまざまな分野の業界に挑戦し続け、イノベーションを起こすことで常に市場に変化をもたらしてきたソフトバンクは、IoT時代が進めば進むほど、より一層存在感を増していくことでしょう。