IoT住宅の形その1「スマートハウス」
スマートハウスとは1980年代にアメリカで提唱された新しい住宅の形で、家電や機器を接続して相互通信を可能にし、最適制御を行うことで居住者のニーズに沿ったさまざまなサービスを提供することができるIoT住宅です。
日本では少し意味合いが異なり、HEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)に加えて、創エネ機器・蓄エネ機器・省エネ機器のいずれかを導入した住宅を一般的にスマートハウスと呼んでいます。
太陽光発電システムや家庭用蓄電池、省エネモード搭載のスマート家電に電気自動車などがそれら“機器”にあたります。
自宅で創り出したエネルギーを、HEMSが家電を自動制御することによって最も効率的に利用し、余った電気は蓄電池に蓄えることで停電や災害時に備えることができるうえ、電気料金が安い深夜に電力を蓄えておき、その電気を消費量が多い時間帯に使うことでも電気代の節約に繋がります。
あるいは、余った電気を電力会社に買い取ってもらうこともできますので、いろいろな面で経済的にメリットがあるという住宅です。
また、HEMSや各スマート家電は、家庭におけるエネルギーの消費量を「見える化」してくれますので、居住者の節電・省エネ意識を高めるという点においても貢献してくれています。
自宅で創り出すエネルギーの方が自宅で消費するエネルギーよりも多い住宅ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)にも注目が集まっており、経済産業省は2020年までに「ハウスメーカー等が建築する注文住宅の過半数でZEHを実現する」としています。
IoT住宅の形その2「スマートホーム」
エネルギーマネジメントのみにとどまらず、家電や電化製品、家具、その他さまざまなモノがインターネットを介して繋がり、私たちの生活を便利で快適なものにしてくれるスマートホームも徐々に広がりを見せています。
具体的には、以下のようなIoT住宅デバイスがあります。
家電の制御、天気や交通情報、今日のニュース、調べたいこと、音楽、買い物など、生活に関わるあらゆるものを音声だけで行うことができるスマートスピーカーAmazon Echo
スマホ一つで家庭でもプロの焼き加減を再現できてしまう夢のようなオーブンTHE JUNE OVEN
シーンや気分に合わせて最大1,600万色から自分好みの色にカスタマイズ可能な照明Philips Hue
タッチパネルを搭載し、内蔵カメラを設置したことで扉を開けずに中身をチェックしたり、音声アシスタントがおすすめのレシピを提案してくれたりする冷蔵庫Samsung Family Hub
など、今まで想像もしなかったようなあらゆるモノがどんどんIoT化されています。
IoT住宅デバイスによって、こうした利便性や快適性を得られる一方で、以下のようなホームセキュリティに対するニーズも高まっています。
高感度の人感センサーを搭載して侵入者を検知するとスマホに通知したり、スマホアプリを介して被写体との会話ができたり、外出先からいつでもリアルタイムに家の様子をモニタリングなどができるネットワークカメラeCamera
スマホを使って外出先から施錠・開錠できたり、家族や親しい友人にだけ鍵のコードを共有できたりするスマートロックQrio Smart Lock
また、一般住宅ではなく賃貸物件にIoTを導入しようという動きも活発化してきています。
たとえば「アプリで始めるアパート経営TATERU」でお馴染みの株式会社インベスターズクラウドの子会社である株式会社Robot Homeは、部屋に設置するだけで既存物件がIoT賃貸物件に早変わりしてしまうIoT賃貸住宅kitの提供を開始しています。
窓の開閉を検知するとスマホに通知してくれるWINDOW SECURITY、家電の遠隔操作が可能なNATURE SENSOR REMOTE CONTROLLER、スマホ、テンキー、カードキー、リアルキーの4種類の方法で施錠・開錠が可能なSMART LOCKなど主に一人暮らし向けの賃貸住宅に導入しやすいスターターキットです。
便利さや快適さだけにとどまらない日本のIoT住宅の可能性
住宅のIoT化がどんどん進むことで、私たちの生活はより便利で快適になっていくものと考えられていますが、それ以外にも日本全体が抱えている課題を解消できる可能性といった大きなメリットを見出すことができます。
たとえば経済産業省が公開している住宅におけるIoT/ビッグデータ利活用促進に関する検討会報告書概要によれば、IoT技術の進歩やAI分野の進展に伴って得ることができるビッグデータを活用して、IoT住宅をはじめとする新しいサービスやビジネスの創出の実現のために、さまざまな取り組みがなされていることが分かります。
ここでは特に「高齢者等の見守りサービス」と「防災・緊急時対応サービス」の分野においてワーキンググループを設置してケーススタディを行い、どのようなデータが必要になるのか、データからどのようなサービスが創出されるのかなどを検証していくというものです。
地震などの自然災害が多いこと、超高齢化社会に突入していることなどが今回のケーススタディの基盤となっているものと思われますが、国内のあらゆる企業が参加して早期に課題を洗い出すことで、近い将来高齢者向けの新たな住生活サービスや災害時対応サービスが創出されることになるかもしれません。
便利さや快適さだけにとどまらない日本におけるIoT住宅の将来像は、ここにヒントが隠されているのではないでしょうか。