スマートホームサービス「SpaceCore」(スペース・コア)などを手がけるアクセルラボが、消費者と不動産事業者を対象に「スマートホームに関する調査報告会」を行った。
同調査は、全国の18~69歳の全国の男女で、スマートホームの利用経験のある方、または利用を検討している一般消費者(事前調査30,000サンプル、本調査618サンプル)と、
不動産事業者に勤める人のうち、デベロッパーやハウスメーカーなどの業種区分に当てはまり、かつ住宅設備の販売やブランド/メーカーの選定を行うことがある人(事前調査28,104サンプル、本調査825サンプル)を対象とした調査だ。
「スマートホーム」は確実に浸透
アクセルラボは2019年にもスマートホームに関する同様の調査を行ったが、その時の調査では12.9%がスマートホームの内容について知っていると回答した。それが、今回(2023年)の調査では37.2%に増加していたようだ。
単純な比較ではあるが、一般消費者にとって「スマートホーム」という言葉が浸透し、内容についてもイメージできるようになった人が増えたものと考えられる。
筆者は、この4年間でスマートホームの認知形成に大きく貢献したのはテレビCMとAmazonプライムデー、そしてテック系のYouTuberの台頭ではないかと考えている。
テレビCMでは「アレクサ、おやすみ」と、スマートスピーカーのアレクサに声で指示をして家電を動かす様子が全国で一斉に放送された。スマートスピーカーは、日本のスマートホーム普及における火付け役だったといっても過言ではないだろう。
また、年に数回開催されるAmazonのビッグセール、「Amazonプライムデー」では、半額でセールされるスマート家電もあり、消費者がスマートホームに手が届きやすくなった。
さらに、最新ガジェットと切っても切り離せないのがYouTuberの存在だ。YouTuberが自宅にスマート家電を取り付け、利用方法や便利になった暮らしを紹介する動画が多くネット上にアップロードされ、それに触発されたイノベーターを筆頭にスマートホームの導入が進んだものと思われる。
スマートホームは贅沢品?
報告会内ではスマートホーム導入層のプロファイルが紹介された。
結果として男性に偏っており、平均年齢は39.4歳。平均年収は490万円となった。平均年収はサンプル全体より約120万円高い結果となっている。アクセルラボは、「技術系の職業の方が高いリテラシーを持っており、年収の高さからも、スマートホームにもお金をかけやすいのではないか」との見解を示した。
スマートホーム機器は、スマート温度計のようなものだと数千円で購入ができる一方、スマート宅配ボックスなどの住宅設備になると十数万円の費用がかかる。住宅のあらゆる部分をスマート化しようとなると、やはりまとまった予算が必要になる。
上記のグラフにもあるとおり、直近3年間は昨対比約150%での成長となっている。現段階では、まだスマートホームは必需品ではなく贅沢品だと認識されているのかもしれないが、今後この調子で市場が拡大していくと「生活必需品なので多少費用はかかっても購入したいもの」に変わっていくのかもしれない。
スマートホーム導入をしたきっかけ第1位は?
また、スマートホーム(スマート家電)を導入したきっかけについては、「家電の購入・買い替え」(19.42%)が最も多く、「機能を知って便利と思ったから」(16.83%)、「住宅の購入・リフォーム・引っ越し」(16.18%)と続いた。ユーザーにとっては、まだ使えるものをわざわざスマート家電に買い換える必要はない、という認識なのかもしれない。
導入層と検討層に対して、機器購入時の支払い方法について質問をしたところ、導入層は「買い切り」での購入を希望したが、検討層は買い切りへの強い希望は見られなかった。アクセルラボは、「かけたコストとその効果へのつり合いに対する不安感を払拭することが、検討層の普及にとって大切になる」との見解を示した。
「初期設定の簡単さ」にはまだまだ課題が
実際にスマートホームを導入している層も、初期設定の難しさには「12.43%」と不満を持っており、セキュリティや操作のしやすさに比べて問題点があることがわかった。
一般消費者が自分で購入してセッティングを行うことは簡単にはいかないようだ。アクセルラボは、セットアップ済みのスマートホームを提供することが最適な解決策だと考えている。世界標準の通信規格である「Matter(マター)」も登場してきたが、Matterによってセットアップの簡素化が期待できるため、将来的にはより手軽なスマートホームが実現できる可能性が高いと予測した。
不動産事業者も続々とスマートホームに着手
消費者側の認知や導入の増加の動きに伴い、不動産事業者もスマートホームへの取り組みを始めているようだ。
不動産事業者に対して、スマートホームに取り組んでいるかを聞いた質問では、44.61%が「取り組んでいる」と回答した。業種別では、ハウスメーカー(62.14%)やデベロッパー(60.19%)、設計事務所(51.72%)で取り組んでいる割合が高かった。自社で物件や建物を企画・設計する業種の方のほうが、設備に関する決定権があるためスマートホームに導入に踏み切りやすいのでないか、と考えられる。
実際にスマートホームに取り組んだことで、売上にどのような効果があったのかを尋ねた質問では、全業種平均で22.8%が「増加」、50.27%が「やや増加」という結果だった。
新しい分野に取り組み、柔軟に取り入れている不動産事業者に、消費者の支持も集まってくるのではないだろうか。
報告会を終えて
これまでの普及傾向を見る限り、スマートホームは今後も導入・利用が増加していくだろうが、その過程において、事業者側のより一層の寄り添いが欠かせない。
初期設定や故障時に、事業者側が適切なユーザーサポートを提供できなければ、細かなフラストレーションが溜まり、長期的な利用は難しいものとなるだろう。
また、消費者が自ら機器を購入・導入するだけではなく、不動産事業者が取り組んでいるような「スマートホーム導入済みマンション」など、スマートホームがビルドインされた住宅が増加していけば、より普及のスピードは早まるだろう。