現時点での省エネ効果はスマートホームよりスマートハウスに軍配
エネルギーマネジメントシステム「HEMS」に加えて、創エネ機能を持つ「太陽光発電システム」、蓄エネ機能を持つ「家庭用蓄電池」、省エネ機能を持つ「スマート家電」などを導入している住宅を、スマートハウスと呼んでいます。
明確な定義はありませんが、これらすべての機器を導入しなければならないという訳ではなく「HEMS」+「創エネ機器・蓄エネ機器・省エネ機器のいずれか」を備えていれば、原則としてスマートハウスと認められるようです。
国は2020年までにハウスメーカー等が建築する注文戸建住宅の過半数で「ZEH(ゼッチ=ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」の標準化を実現することを目標に取り組んでおり、普及している段階です。
ZEHとは、
・照明や冷暖房、そのほか日常生活で消費するエネルギー
・太陽光発電システムや燃料電池などで創ったエネルギー
を1年間で比較し、消費エネルギーよりも創エネが上回るか、あるいは差し引きゼロになる住宅、つまり生活に必要なエネルギーを自給自足することができる住宅のことを言います。
スマートハウスやZEHは、もともとが「エネルギーの効率化」「省エネ」「節電」などを目的として開発されていますが、日本でも徐々に認知度や理解度が高まりつつあるスマートホームは、必ずしもエネルギーマネジメントが目的で開発されているものではありません。
そのため、そもそも目的が違うために比較するまでもありませんが、現時点でどちらの「省エネ効果」が高いのかと言われれば、圧倒的にスマートハウスということになります。
しかし、現在様々なスマートホーム向けのIoTデバイスが次々に開発され、それに伴って新たなサービスもどんどん登場しています。
果たして「スマートホームで省エネ」は可能なのか、考えてみたいと思います。
「スマートホームで省エネ」は実現可能
私たちは普段、電気などのエネルギーを特に意識することなく使っています。エネルギーは目に見えないため「浪費している」「適切に使用できている」「節約できている」といった感覚を、月々の使用量や支払い金額でしか感じることができません。
また、自分では「省エネにつながるはず」と思い込んで行っていた日々の習慣が実は省エネにつながっていなかった、というケースもあります。
そこから考えると、エネルギーの消費量が数値なりグラフなりで「見える化」され、ユーザーがリアルタイムで各家電などの消費量をチェックすることができれば、「省エネ意識」が高まることは期待できそうです。
たとえば、スマートハウスの中核を担う「HEMS」とスマートホームの中核を担う「ホームゲートウェイ(あるいはハブ)」が連携し、さらにホームゲートウェイと連携している照明、エアコン、テレビ、冷蔵庫、洗濯機などのIoTデバイスが相互通信を行えるようになるとどうでしょうか?
各IoTデバイスが外気温や天気などの情報を元に、常に最適な室内の空気環境を創り出してくれるうえに、HEMSによって消費電力を最小限に抑えることで省エネに貢献してくれるでしょう。
また東京で「GLAS LUCE x Smart Home 東京ショールーム」を運営しているその名もスマート・ホーム株式会社は、スマートホームに求められる快適で便利なライフスタイルの実現は、同時に省エネ・節電という結果ももたらしてくれるとしています。
家庭内のあらゆる家電をインターネットに繋いで相互接続して制御することで、家庭の消費電力のモニタリングのみならず、エネルギーを効率的に利用するためのマネジメントも可能になるとしているのです。
たとえば、自宅の1ヶ月間の消費電力の上限をあらかじめ決めて設定しておくと、一定量(上限の90%など)を超えた時点で警告通知などが届き、それ以降は設定した消費電力量を上回らないように照明が少し落ち、エアコンの温度が1度上がり、使用していない家電の電源が落ち、テレビは最適な照度に自動調整されるといったスマートホームの省エネが可能になるのです。
快適さや便利さを損なうことなく、 “結果的に”省エネ効果をもたらしてくれるようになると考えられているのが、同社が掲げるスマートホームの省エネのあり方なのです。
国が取り組むスマートホーム関連事業から省エネサービスが生まれる可能性も
経済産業省は現在「スマートホームに関するデータ活用環境整備推進事業」に取り組んでいます。
IoT化が進む中、クラウドサービスの拡大やAIの進化などによって、膨大な量のデータを収集して解析できるようになりました。
次に国が考えていることは、これらのデータや解析能力を活かした生産性の向上、そして新たなビジネスモデルの創出です。
様々な分野から複数の企業が参画してプロジェクトの実証実験などを進めている段階ですので、現時点で何らかの結果が出た訳ではありません。
しかし、収集されたデータをより高精度に解析することができれば、既存のビジネスモデルの変革、新たなビジネスモデルの創出に加えて、家庭内におけるスマートホームの省エネ化に繋がるサービスやビジネスが誕生するのではないかと期待されています。
東日本大震災以降、私たち一般消費者の省エネ・節電に対する意識も向上し、そのニーズに応えるかのように新たなサービスがいくつも登場しています。
しかし、省エネや節電を気にするあまり、日常生活が窮屈なものになってしまったり、生活の質が低下してしまったりしては意味がありません。
その点、スマートホームは快適さや便利さを損なわず、なおかつ省エネ・節電効果をもたらしてくれる優秀なシステムと言えるでしょう。