スマートハウスとスマートホームの違い
スマートハウスとスマートホーム、最近ではどちらも耳にすることが多い言葉です。両者を混同している方も少なくないのではないでしょうか。スマートハウス、スマートホームどちらも同じ意味で使用されることも多いですが、厳密にはスマートハウスはエコ住宅、スマートホームはIoT住宅に区別されます。
スマートハウス(エコ住宅)の特徴とメリット
・家電や設備機器に使われるエネルギーの使用量を可視化し、適切なコントロールをする=省エネ
・太陽光発電や蓄電池による創エネ、蓄エネ
・節電や節約に重きを置く
スマートホーム(IoT住宅)の特徴とメリット
・IoTやAIの技術を用いて、より快適で便利、安全な生活を実現する
・住宅内のあらゆる家電をネットワークに接続し、スマートフォンなどでコントロールできる
・AIが住人の生活パターンを学習し、生活におけるあらゆる動作の自動化や、防犯・事故防止も行う
スマートハウスの歩み
日本でのスマートハウスは、スマートホームに先駆けて2012年頃から普及が始まりました。きっかけとなったのは、2011年に発生した東日本大震災です。首都圏でも計画停電が行われるなど、深刻な電力不足が問題になったことを覚えている方も多いでしょう。それを機に、各家庭での省エネ・節電を推進するため、国をあげての住宅のスマートハウス化が始まったのです。
こうして一大プロジェクトとして始まったスマートハウスですが、まずは各大手ハウスメーカーが「HEMS」というシステムを採用しました。HEMS(ヘムス)とは、”Home Energy Management System”の略で、家庭で消費するエネルギー量を管理するシステムです。各家電や設備でのエネルギー消費量や、太陽光発電などによる発電量をモニター上に「見える化」したり、無駄な電力を自動で制御したりする役割を果たします。
2016年には、「ZEH」仕様のスマートハウスが登場します。ZEH(ゼッチ)とは、”Net Zero Energy House”、つまり消費エネルギー0を目指す住宅システムです。これまでの省エネ機能に加え、太陽光発電などによる自家発電と、蓄電池に電気を貯める、「創エネ・蓄エネ」を取り入れることで、家庭で使うエネルギーを自分たちで賄うことを目指します。
2017年にはスマートホーム(IoT住宅)の開発も本格的になり、省エネはもちろんのこと、利便性や安全性を追求した住宅が多く登場しています。各家電や設備がネットワークに繋がり、スマートフォンやAIスピーカーなどから一元的に管理することができるというものです。
・子供やお年寄り、ペットの見守り機能、セキュリティの向上
・外出先からスマートフォンで家電を操作、音声による操作で家事の時短
・気温や時間に合わせてAIがエアコン照明を制御し、健康を守る
など、私達の生活を豊かにする様々なテクノロジーがすでに実現しています。
スマートハウスの事例
ダイワハウスのスマートハウス「スマ・エコ」
「スマ・エコ」は、太陽光発電システムと、エネルギーを「見える化」するHEMSを標準装備した住宅で、次の3つの柱を軸にしています。
・安らぎを守り続ける安全、安心
・家計にプラスとなる経済性
・快適な日々を支える利便性
直感操作が魅力の「D-HEMS 3」
「D-HEMS 3」は、ダイワハウス独自のHEMSです。専用のタブレット端末で、住宅全体のエネルギー消費量や発電量、空調やドアの開け締めをコントロールします。タッチパネルで直感的に操作できるのが特徴です。
タブレット端末では、IoT家電をコントロールできるだけでなく、テレビやインターネットを楽しんだり、天気や災害情報など必要な情報の通知を受け取ったりすることもできます。生活に密着し、「暮らしのブレーン」として活躍します。
もちろん、タブレット端末意外にもスマートフォンやスマートスピーカーから操作することも可能です。外出先からスマートフォンを使ってお風呂のお湯を貯め、玄関でスマートスピーカーに「ただいま」と声をかけたら同時にエアコンと照明がつき、車庫のシャッターが閉まるなど、それぞれの家庭のニーズに合わせたきめ細やかな設定ができます。
太陽光発電で大幅な省エネ
スマ・エコの太陽光発電によって、年間光熱費を約62%削減、年間一次エネルギー(石油・石炭・太陽光など自然界に存在し、加工されていないエネルギー)消費量約80%削減、年間CO2排出量約76%削減できるというデータが発表されています。
スマ・エコ ゼロエナジー
標準搭載の太陽光発電システムとHEMSに、寒冷地レベルの高断熱仕様を加えたのが「スマ・エコ ゼロエナジー」です。
スマ・エコ ゼロシナジーは、強化された断熱仕様によって、わずかな空調でも夏は涼しく、冬は暖かい空間を実現します。冷暖房によるエネルギー消費を大幅に削減することができるのです。加えて省エネ機器や、HEMSによるエネルギーコントロールによってさらにエネルギー消費量を減らし、最終的に太陽光発電によって得たエネルギーで、家全体のエネルギー収支ゼロを目指します。
エネルギー収支がゼロになり、光熱費が大幅に削減できる上、余剰電力を電力会社に買い取ってもらうことで、収入を得ることもできます。ダイワハウスのシミュレーションによると、スマ・エコ ゼロエナジーの年間光熱費は-3,600円です。
トヨタホームのスマートハウス「SMART HOUSE」
「SMART HOUSE」は、エネルギーを「つくる」「ためる」「賢く使う」を主軸に、家と住人だけでなく、クルマもひとつにつなぐスマートハウスを提案しています。
クルマともつながる「HeMS Pro」
SMART HOUSEが採用しているHEMSは、「HeMS」と「HeMS Pro」の2種類です。
・エネルギー消費を分析し、省エネのポイントをアドバイスしてくれる
・住宅のIoT機器や設備をスマートフォン、クルマからコントロールできる
といった特徴があります。そして高性能版の「HeMS Pro」には、さらに便利な機能が搭載されています。
・蓄電池や充電器もコントロール可能
・エネルギー消費・発電をリアルタイムに表示
・各部屋、各機器ごとの消費電力をチェック可能
・太陽光発電で得たエネルギーを車の充電に利用できる
屋根に合わせた太陽光発電
トヨタホームは、勾配屋根に適し、くもりでも影響を受けにくい置屋根型の単結晶パネルや、美観を損なわない瓦一体型の単結晶パネル、フラット屋根に適した薄膜パネルなどを用意しています。それぞれの住宅に適した太陽光発電システムを選ぶことができるのです。
トヨタホームによると、東京都で4人家族の場合、発電して売却するエネルギー量と、消費エネルギー量を差し引いて、年間13 万円の利益が出るとされています(2015年4月現在の料金体系)。
スマートハウスの市場規模
市場規模は回復の見込み
スマートハウスの市場規模は、現在は減少傾向にあるものの、今後は拡大していく見込みです。2019年8月に発表された矢野経済研究所の調査によると、2018年度のスマートハウス関連主要設備機器の市場規模は6,796億円になる見込みで、前年度比97.7%とわずかに落ち込みました。
2014年以降、スマートハウス市場は減少傾向にあります。各設備機器の単価が下がっていることや、太陽光発電システムの販売額が落ち込んでいることが理由です。しかし、今後は蓄電システムの需要が高まると見られ、市場は拡大するのではないかと期待されています。
蓄電システムの需要の高まりには、卒FIT、2019年問題が背景にあります。
卒FIT、2019年問題とは
FITとは、太陽光発電設備を導入し自家発電を行うと、余剰電力を国が買い取ってくれるというシステムです。設備導入後10年間は、余剰電力の買取価格が高値で保証されるため、導入費用を回収できるということで、太陽光発電設備は急速に普及しました。
FIT制度は2009年から開始されました。10年後の2019年、多くの家庭で買取価格の保証期間が終了します。買取価格の保証が終了することを「卒FIT」といい、2019年に卒FITを迎える家庭は53万件と言われています。この状態を「2019年問題」と呼んでいます。
余剰電力を高値で買い取ってもらえないとなると、各家庭は余剰電力を蓄電して自家消費したいと考えるようになります。そのため、家庭用蓄電システムの需要が増大し、スマートハウス市場も拡大すると予想されているのです。
2025年には、住宅の10%がスマートハウスになるとも言われています。これからもスマートハウス市場からは目が離せません。
こちらの記事 では、スマートハウスのあれこれについて詳しく解説しています。スマートホームデバイスなども紹介していますので、ぜひご覧ください。