ホームIoT向けの展示会に行くと、電力回りの製品が非常に多いことに気がつく。
いわゆる「消費電力の見える化」を実現するHEMSや、太陽光発電システムの効率化のためにセンサー類を組み合わせたものがほとんどだ。
そんな中、静岡県長泉町のあるマンションでは、静岡ガスが開発した仕組みで「各世帯で電力を融通し合う」という仕組みがあるという。
このニュースを報じた日本経済新聞の記事をもとに、これからIoTとインフラがどう繋がっていくのかを考えてみよう。
参考記事:IoT活用の現場(4)インフラ 世帯間で電力融通
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO49027050W9A820C1TJ1000/
キーワードは「ダイナミックプライシング」
まず、このマンションの事例から少し離れて「ダイナミックプライシング」というワードについて解説しよう。
シンプルに言うと、受給のバランスに応じて金額を変動させる仕組みのことだ。
身近な例だと、Uber Eatsの配達料がわかりやすい。
雨の日やランチタイムなど、宅配サービスの需要が高まっているとき、Uber Eatsの配達料は値上げされるのを知っている読者は多いだろう。
これはもちろん、宅配の需要に対して、配達パートナーの数が減るからだ。需要が大きく高まるときに金額を上げる仕組みなので、ダイナミックプライシングの1つと見ることができる。
需要のバランスを見るためには、データが必要だ。
Uber Eatsの配達料のように、企業が自社サービスのために利用するならあまり課題にはならないが、海外でダイナミックプライシングの導入が大きく進んでいる交通分野ではちょっと話が違ってくる。
たとえば、新宿から渋谷へ移動するときのことを考えてみよう。
交通手段は3つ。電車、バス、タクシーである。
そのうち、タクシーの需要が過多で値上げするというのも、ダイナミックプライシングの1つだ。
だが、実際に導入されている仕組みはもうちょっと複雑で、エコな移動手段として電車やバスの料金を下げてそちらへ人を誘導したり、逆に電車が事故で止まってしまっている場合には乗り合いのタクシーで料金を下げたりもする。
つまり、都市の中で人がどう動いているのか、インフラの状態は正常かどうかといったビッグデータを元にしてAIによる自動プライシングを行うわけだ。
フィンランドなどでは、この考え方が電気料金にも反映されている。
ダイナミックプライシングの第一歩