スマホを所有していると、日常的に地図アプリなどを操作する機会も多いですよね。地図アプリなどで自分の位置を測定して表示するために使われているのが、「GPS(Global Positioning System)」です。GPSを使えば、地球上のどこにいても受信機を持っている人間の位置情報を割り出せます。
しかしこのGPS、「何となく仕組みは分かるけど、日本での名称や詳しい仕組みまでは分からない」という方も多いでしょう。また日本の「みちびき」など、各国が位置測位用の衛星を打ち上げていますが、厳密にはGPS衛星と日本のみちびきなどの衛星は区別されていたりと、少々ややこしい部分もあります。
そこで今回はGPSとは何か、その仕組みや活用事例などを詳しくご紹介していきます。
- 「GPS」の意味や仕組み
- GPSの精度を左右する要因がわかる
- GPSの活用事例を知れる
GPS(グローバル・ポジショニング・システム)とは
GPSとは「全地球測位システム」と和訳され、アメリカ合衆国によって運用されているGPS用の衛星を使って地球上の緯度や経度など、位置情報を特定する技術です。
アメリカ合衆国が運用していることからも分かるように、GPSはアメリカ由来の技術です。当初は軍事用として位置情報割り出しに使われる目的で開発されましたが、アメリカが衛星を民間にも解放したことから、一般用途として技術が広まっていきました。スマホの普及に伴いGPSもシェアをどんどん伸ばし、今ではスマホを持っているユーザーの多くがGPSの恩恵を受けていると言っても過言ではありません。
ちなみにヨーロッパの「ガリレオ」など、世界各国がアメリカに頼らずとも位置情報を特定できるように衛星を打ち出しています。しかしこういった衛星はアメリカのGPS衛星とは区別され、「GNSS(全球測位衛星システム)」と呼ばれます。
また冒頭でも述べたように、日本も「みちびき」という位置情報衛星を打ち上げています。しかしみちびきは上記衛星のように世界中をカバーするのではなく、日本内の位置情報を正確に割り出す目的で作られました。このため、みちびきのような、地域を限定した位置情報測位システムを「準天頂衛星システム」と呼びます。
GPSの原理や仕組み
GPSは、複雑な原理や仕組みで受信機を持っているユーザーに位置情報を伝えます。
まず衛星は受信機側に自分の現在位置と時刻を送信します。そして受信機は受け取った情報をもとに衛星との距離を割り出し、受信機を持っているユーザーの現在位置を特定します。
しかしこの計算は、衛星1台だけと通信しても正確な位置情報が取得できません。また、衛星から情報を受信した時刻を正確に計測するためには、1000ミリ分の1秒単位での正確な時刻情報が必要となります。地球上とGPS衛星は光速で通信を行いますが、この通信においてわずかな時間差が生じると、位置情報として取得される結果にも大きな誤差が生じてしまうためです。
ですからGPSを利用する際は複数の衛星と同時に通信を行い、時刻誤差を最大限に減らしながら距離測定を行う必要があります。現状誤差を減らして正確な位置を割り出すために、最低でも4台の衛星が必要です。GPSの衛星は約30機が周回していますが、先ほども紹介したGNSSを活用することによって、より高精度の位置情報割り出しが可能になっています。
GPSの精度は”何”で変わる?
上記のような複雑な仕組みで成り立っているGPSですが、上空から情報を送信するという性質上、受信機周辺の環境によって精度が変わってしまうことがあります。
大気状況
GPSの電波は、雲など大気の状況によって減衰してしまいます。ですから雲が立ち込めているなど、大気状況が悪いときはGPS電波が上手く届かず、誤差が出てしまう原因になります。
ちなみに電波阻害などで生活への影響が懸念されている太陽フレアといった天体活動も、電波の減衰を引き起こします。
建物などの遮蔽物
ビルや山などの遮蔽物があると、GPS電波は通過できずに受信機に届きません。そして遮蔽物が多い場所でGPSを使っているときは利用できる衛星が少なくなって誤差が大きくなったり、最悪の場合衛星と通信できずにGPSが使えなくなってしまう可能性もあります。
ちなみに遮蔽物があってもユーザーが位置情報を取得できるように、スマホではGPSを補助する「A-GPS(Assist-GPS)」機能が利用できます。A-GPS機能を利用すれば、無線ネットワークから位置情報を取得できます。
ただしドローンなどA-GPSが使えない機器ではGPS情報が正確に取得できず、トラブルの元になるので注意しましょう。
携帯電話会社の通信障害など
GPSを利用して位置計測を支援するサービスでは、各携帯電話会社のデータセンターなどに専用の機器を設置して、GPS情報を取得します。しかしデータセンターなどで不備があり通信障害が発生するとGPSの補正データが送信できず、サービス利用に影響が出てしまう可能性もあります。
また、稀なケースではありますが、衛星自体にトラブルが発生して電波を送信できないケースが発生することもあります。そのような事態に備えて、現在では地球全体を覆うのに必要な24機を遥かに上回る台数の衛星が運用されています。
GPSにまつわるよくある誤解
GPSにまつわるよくある誤解に、まず「GPS電波は受信者の位置情報をあらかじめ把握し
て、直接位置情報を送信している」というのがあります。
ここまでお伝えしてきたとおり、GPS電波に含まれているのは電波を発信した衛星の位置情報と送信時刻だけで、受信機がそれを別途計算して位置情報を割り出しています。つまり衛星自体に受信機の位置を直接割り出す機能は存在せず、複雑な計算によって位置情報が特定できるのです。
ですから計算中にどこか1つでもトラブルが発生すれば、大きな誤差が出てしまうケースもあります。「GPS電波は数センチメートル単位で正確な位置を割り出してくれる」という方も少なくありませんが、状況によっては数メートルなど、大きな誤差が出てしまう危険性があるので注意してください。
また「GPSと「ビーコン」は、同じものでは?」という誤解をされる方もいらっしゃいます。
ビーコンとは店舗など、特定の場所に備えつけて利用する情報発信機です。ビーコンから顧客のスマホに情報発信を行い、客引きを行うなどの目的で使われています。GPSは衛星から電波を発信するのに対し、ビーコンでは設置場所から電波を発信するので、両者には大きな違いがあります。
GPSの身近な活用事例(生活)
ここからは、GPSの身近な活用事例をご紹介していきます。
地図アプリやカーナビ
地図アプリや、カーナビは、GPSが利用されている典型的な事例です。
まず「Googleマップ」などの代表的な地図アプリでは、スマホを持っているユーザーの位置や、店舗の位置情報などをGPSで計測しています。地図アプリにとって、GPSは無くてはならない技術です。
またカーナビでも、GPSを利用して道案内などを行います。自動車にはスマホよりも大型のGPSシステムを搭載できるので、さらに正確な位置情報特定が可能になります。
ゲームアプリ
ゲームアプリでも、GPSが活用されています。
大人気となった「ポケモンGO」では、ポケモンの位置をGPSで特定してバトルを行います。また現実世界に「AR(拡張現実)」を利用して3DCGキャラクターを配置し、バトルなどを行うゲームアプリは他にもあり、そういったゲームアプリでもGPSが活用されています。
ドローン
ドローンにもGPSが使われています。
GPSを搭載したドローンでは、風が吹いたりして自分の位置がずれそうになっても、現在位置を特定してホバリングで止まり続ける機能が使えます。また、目的地を指定して自律飛行を可能にするドローンにはGPS情報が必要不可欠な存在です。
ちなみに障害物が多い環境でドローンを使うと、上手く位置情報が取得できず位置がずれるなどのトラブルが発生する可能性があるため注意が必要です。。