日本の5Gサービスは2020年3月から本格的にスタート
日本では2019年4月に総務省が各キャリアへの5G電波割り当てを許可し、各キャリアで使える電波の周波数を決定しました。
割り当てについては、
・ドコモ・・・3.7GHzおよび4.5GHz帯の内2枠と28GHz帯の1枠
・KDDI・・・3.7GHz帯および4.5GHz帯の内2枠と28GHz帯の1枠
・ソフトバンク・・・3.7GHz帯および4.5GHz帯の内1枠と28GHz帯の1枠
・楽天モバイル・・・3.7GHz帯および4.5GHz帯の内1枠と28GHz帯の1枠
となっており、ソフトバンクと楽天モバイルの5G周波数割り当てがドコモとKDDIより1枠少ない体制になりました。
これは日本政府が5Gの利便性を考慮して各キャリアにエリアカバー率(5Gが使える通信エリアの%)をなるべく早めに上げるように要請しているのと関係しています。
ドコモとKDDIの申請時のエリアカバー率予定が認定から5年後までにそれぞれ97%、93.2%に対して、ソフトバンクは64%、楽天モバイルは56.1%と申請しています。申請時にカバー率の多かったドコモとKDDIの方が、ソフトバンクと楽天モバイルより5G周波数割り当て時の審査が有利な状況でした。
そして、実際に5Gが開始されるのは2019年夏以降。まずはプレサービスとしてユーザーに5Gを体感してもらう形で、それから2020年春以降、本格的な商用サービスとして開始される予定です。
日本国内で5Gのサービスが全国展開されるのはまだ先の話ですが、ソフトバンクでは2022年には全国展開できるだろうとしており、数年後には5Gの技術を日常で感じる機会が増えるでしょう。
<2020年11月時点最新情報>
かくして2020年3月25日、ドコモが日本で初めて5Gサービスの提供を開始、翌26日にau、27日にソフトバンクがそれぞれサービスを開始し、日本にも「5G時代」が本格的に到来したのです。
楽天は2020年4月から本格的に携帯サービスの提供を開始したためやや遅れをとっており、2020年9月30日からようやく5Gサービスの提供を始めています。
日本の5G普及は世界から見ると遅れている?
韓国でもアメリカでも2019年4月から、すでに5Gが商業サービスとして提供開始されています。また中国では「ファーウェイ」を始めとした企業が5Gの技術の研究を進めており、世界で最も5Gの特許を取得しているなど技術的にトップクラスです。
このような状況で日本では今から5Gの整備が進みますから、世界に対して遅れているのではないかという方もいらっしゃいます。しかし、必ずしもそうとは言い切れません。
5Gはまだ未知の技術で、市場が成熟するまでにはまだまだ時間がかかります。それにドコモの「プレミアム4G」など、既存の「4G」回線などで高速通信技術を有している日本の技術力は世界的にみてもトップクラスです。それに、もし今遅れていても、慌てずに確実に安定した基地局などの整備を進めたほうがユーザーにとってもプラスになります。
日本は5G普及が遅れているというのは現状に過ぎず、今後挽回の可能性は大いにあるといってよいでしょう。
日本が遅れているのは5G商用化の「立ち上がり」
単純に、日本が遅れていると言われているのは5Gサービスを開始する時期だけです。先に始まったから高品質、というわけでもありませんしユーザーが満足しているかというとそうでもありません。
たとえば、世界で初めて携帯向けに5Gサービスを開始した韓国の例を見てみましょう。韓国の5Gは周波数「3.5GHz」100MHz帯域を利用します。「28GHz」も割り当てられていますが商用化は実現していません。
アメリカではベライゾン社が28GHzを利用した5Gサービスを展開していますが、これはスマホではなく固定回線向けのものです。
また、日本は東京オリンピックで世界中から多くの人が訪れ、一斉に動画や写真をアップすることを想定し、多数の端末に同時接続可能な5Gの導入を進めてきました。目標は下り20Gbpsであり、初期の韓国はこのスピードの20分の1にも及びません。
2019年5月に5Gが商用化されたイギリスであっても、蓋を開けてみれば4Gのネットワークすら完全に整備されておらず、現在カバレッジの改善に取り組んでいます。
このように、日本より早く5Gが商用化された国々でも、思っているほどエリアやサービスの拡大が進んでいないのが現状です。つまり、日本は商用化に向けた立ち上がりで遅れをとったかもしれませんが、だからといって「日本の5Gは世界に遅れをとっている」というわけではないのです。むしろ、他国に歩調を合わせながら商用化を進めているという見方もあります。
ちなみに、日本は東京オリンピックに向けて5Gの導入を進めてきた、とお伝えしましたが、東京オリンピックが決定したのは2013年です。実は、この時点から日本は5Gの商用化に向けての話し合いが進められてきたのです。
その頃でいえば、日本は世界をリードしていたことになります。ところが思ったほど通信業界が5Gに関心を抱かなかったことなどが原因で、なかなか実現に至らなかったというわけです。
ただ、日本でも2018年頃から5Gの商用化に向けた動きが急速に高まりました。この背景には「IoT」があります。5Gの持つ「同時接続」「大容量通信」「低遅延性」といった特徴は、まさにIoTにとって革命であり欠かせない要素となってくることが明らかになりました。
つまり産業を支え、新たなビジネスを創出するという大きな可能性を秘めているのです。今後の日本という「国家」において、5Gは欠かせない存在であるという認識が広がっていったのです。
日本は携帯電話でガラパゴス化を経験しています。この過去が「遅れている」という意識を植え付けているに過ぎないのかもしれませんね。
日本の5Gはどうなる?
大手キャリアでようやく5Gサービスの提供が開始されましたが、まだまだ未知数です。これは日本に限らず先行して商用化を実現させた韓国やアメリカなどでも同様です。
また5Gのサービス開始と同時に「2時間の映画をたった3秒でダウンロードできる」というクオリティを実現できるものでもありません。
今後10年など長い時間をかけて少しずつ進化し、最終的に下り20Gbpsへと辿り着く、といった見方をするのが現実的です。したがって、少なくとも1〜2年は様子を見守るというのが賢明でしょう。
日本で5Gを利用するには?
各大手キャリアで5G回線を契約すれば利用できますが、端末も5Gに対応していなければなりません。そこでいうと、今話題なのはiPhone12ですね。
iPhone12の5Gについて
iPhone12で利用できるのは「3.7GHz」「4.5GHz」などの「サブ6GHz(サブ6周波数帯)」と呼ばれるものです。
「6GHz」よりも低い周波数帯のものを指します。ただし日本版のiPhone12は、より高速通信が可能とされる「ミリ波帯」には対応していません。
現時点では特に支障はないと言われていますが、ドコモやauなどはミリ波帯の整備も進めていますので、今後どうなっていくかはチェックしておくとよいでしょう。
ただし一部エリアしか利用できないので要注意
なお、お伝えしているように5Gはまだまだごく一部のエリアでしか利用できません。また5Gは今後10年など時間をかけて成熟していく市場です。
5Gだから安定感がある、通信速度が劇的に上がる、という確証も現時点ではありません(成熟にともない品質は上がるはずですが)。
したがって「5Gを利用したいから」という理由だけで今、5G対応の機種に買い換えるのはあまりおすすめできません。
5Gから中国が締め出されつつあるのはなぜか
5G技術開発において中国は日本はじめ世界をリードしています。ファーウェイなどの有力企業が政府の支援を受けて5Gの技術開発を進めており、2019年5月時点で世界での5G関係の特許取得数が34%とトップになっています。しかし最近では主にアメリカの介入によりその状況に暗雲が漂い始めています。
2018年8月にはアメリカが米政府機関でファーウェイの製品を使わない法案が成立。ファーウェイの製品に政府などの機密を傍受して中国に流すプログラムが搭載されているとの疑惑が浮上したのが災いしました。また、アメリカは同盟諸国にも圧力をかけて、ファーウェイの機器を利用しないように呼び掛けています。
それだけではなく、米政府は2019年5月に、アメリカ全体でファーウェイなどの中国機器を通信利用したり、米製品や技術をファーウェイの機器で利用したりするのを禁じました。中国の通信技術進歩などによる世界経済への影響をアメリカが恐れている節もあり、今回の制裁はそれに圧力をかけて、けん制する思惑もあると見られています。
それだけではなく、ファーウェイ社副会長が2018年10月に逮捕されるなど、ファーウェイでは経営に影響を及ぼす事件が続いています。
ファーウェイを始めとする中国企業が影響を受けるということは、5G技術普及にも影響があるということです。中国が5Gで幅を利かせるという状況が、以前より顕著になり始めているのは確かです。政治的な思惑で5Gの整備にまで世界的に影響が及ぶというのは、やめてほしいところですね。