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スマートホーム(スマートハウス)の記事 2019.07.22

【フィクションで探る人工知能の多様性】SFドラマ『オルタード・カーボン』で描かれる自己一貫性への葛藤を解決するのは、「分人」という新しい自己の捉え方かもしれない

記事ライター:Yoshiwo Ohfuji

10代のころ、三島由紀夫の小説をよく読んでいた。

輪廻転生を主軸においた『豊饒の海』シリーズや憧れの人に成り代わりたいという倒錯した欲望を描いた『仮面の告白』など、多感なティーンエイジャーにとって、三島が描く自我の揺らぎは、自分ごとのように感じられた。

当時、ちょうどSNS黎明期だったこともあり、私は、インターネット上での自分、学校での自分、家での自分…など、一緒に過ごす相手や状況によって変化する“私”に戸惑っていたのだ
そして、鏡を見ながら度々考えるようになった。

「私はどこにあるんだろう?」

※画像はイメージです。

画像加工技術やVRが発達し、画面の中で、なりたい自分に成り変わることができる今、その問いがこれまで以上に顕在化してきているように思う。

例えば、目を大きくし顎を小さく見せてくれる写真加工アプリを使って撮影した画像をSNSにあげたり、アニメのキャラクターやペットの写真を自分のアイコンとして使ったりするという経験は多くの人にあるだろう。

SNSで交流する人が加工した自撮り写真やアバターの姿で自分をとらえる時、私たちの振る舞いは少なからず変化するだろう。

では、“私”というものを身体と心の二元的な存在として捉えられるとしたら、サイバー空間において、姿かたちを変えながらも私が“私”であり続けることなんてできるのだろうか?

高度な技術によって、精神がデジタル化する世界

NetflixオリジナルのSFドラマシリーズ『オルタード・カーボン』では、人間の「肉体」と「精神」を分離する技術が登場する。
『オルタード・カーボン』はイギリスのSF作家、リチャード・モーガンが2002年に発表した同名小説を原作としており、この作品でモーガンは、2004年にフィリップ・K・ディック賞を受賞した。
SFファンの間でも高い評価を得るドラマ版は、2018年にシリーズ1が配信され、2019年後半にはシーズン2の配信が決定している。

『オルタード・カーボン』の世界では、人工知能技術や高度な計算能力によって生まれた「Digital Human Freight(DHF)」という技術によって、人間の精神がデジタル化し、「スタック」と呼ばれる記録装置に転送される。そして、肉体の寿命が尽きても「スリーヴ」と呼ばれる代替の肉体にスタックを移し変えることで事実上永遠の命が約束されているという設定だ。
ここで、あらすじを簡単に紹介する。

<あらすじ>

犯罪者としてスリーヴを奪われ長い眠りについていたタケシ・コヴァッチは大富豪、バンクロフトの依頼によって新たな体でよみがえることになった。
一度殺されたバンクロフトは、スタックのバックアップによって再び蘇ったものの、死の前後の記憶を失い、警察による“自殺”という判断に納得できないでいた。事件の真相を知るために、彼は、軍隊で特殊な訓練を受け高い能力を持つタケシを目覚めさせ、自由を与える代わりに、自分の死の真相を突き止めることを依頼する。

※画像はイメージです。

今作で描かれるのが、自己の一貫性に対する人々の葛藤だ。殺害(自殺)の原因や理由を追求するバンクロフトや全く違う人間の姿で目覚め、戸惑うタケシの姿はもちろん、スタック(デジタル化された精神)と魂を別物として扱い、スリーヴ(肉体)の移し替えを禁じる教義を持つ宗教なども登場し、技術の発達の先でも、私たちと同じように人々が自我の在りどころに悩む様子がうかがい知ることができる。

高度に技術が発達した架空の未来の中でも、“私”という存在とうまく向き合うことは難しいのだ。

<次ページへ続く>

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