次世代の通信規格「5G」とは?
2010年のクリスマスイブのことを覚えているだろうか? 日本で4G通信(LTE)が実用化された日だ。
当時、日本で先陣を切ったのはドコモの「Xi(クロッシィ)」だった。面積カバー率こそ低かったものの大都市圏を中心に通信網が整備され、当時すぐに飛びついたという人は少なくないだろう。
筆者も、その一人だった。驚いたのは電子書籍だ。これまで、雑誌であれば1ページ毎に十数秒は待たされていたので自宅のWi-Fiで端末にダウンロードして出先で読むのが普通だった。
が、LTE回線では「現実の雑誌のページをめくる」のとほぼ同様のタイムラグで次ページが読み込まれる。そこには、たしかに手に取れる「未来」があった。
そんな4G回線にすっかり慣れきった我々だが、次の驚きは2年後に訪れる。それが、5G(第5世代移動体通信規格)である。技術的に詳しい解説は割愛するが、4Gが「高速通信」を謳っていたのに対し、5Gでは「高速大容量・低遅延・多接続」が謳い文句である。
要するに、回線が太いので大容量の通信を大量に捌けるし、遅延も少なく、一度に多くの接続をまかなえるというわけである。
恩恵として分かりやすいのはやはり、「高速大容量」だろう。平均して10Gbps〜20Gbpsの下り通信速度が出ると言われる5G通信では、映画1本程度であれば数秒でダウンロードが可能ということになる。
4Gでは「リアルの雑誌と同じ速度のダウンロード」を実感したが、5Gでは「経験したことのない速度」を楽しむことが出来るだろう。
5GとIoTの関係
しかし、本稿で注目したいのは「多接続」と「低遅延」である。これがIoTと非常に相性が良いのだ。
たとえば、例として出しやすいのは水道メーターの検針である。5GLTEは「多接続」が可能なので住宅街1ブロック分の水道メーターをすべて、5G通信機能を備えたハブと無線接続し、そのまま水道局へとデータを送ることが可能となる。
また、ホームコントロール分野においても5Gの効果は絶大だ。
いま、皆さんの自宅には光回線やケーブルTV回線などの有線ネットワークが引かれていると思うが、これを5GLTEのハブに代替できる。すると何が可能になるかといえば、外部から自宅ハブへのアクセスが非常に容易になるのだ。
現在は外部から自宅のWi-Fiルーターを通じて信号を送ることでIoT機器を外部から操作する機能を実現しているが、この手間がなくなる。直接、自宅の5Gハブへと信号を送ってのホームコントロールが可能となるはずだ。
これにより実現するメリットは、外部から自宅のコントロールが容易になるというだけではない。自宅のモニタリングもまた、容易になる。自宅に設置された各種センサー(気温・湿度・照度・人感など)をすべて5Gハブに接続することで、低価格にリアルタイムの監視が可能になるだろう。
5GとIoTの組み合わせ、本命は「センシング技術」だ
ちょうどセンサーの話が出たので、5GとIoTの組み合わせで本命といえる「センシング技術」にも触れておきたい。
水道メーターの無線化について先ほど触れたが、リアルタイムの水道利用情報が水道局に送られるということは、新たなビッグデータが誕生することと同義だ。
それにより、水道使用量の予測が立てられるし、「外れ値」を検出することによって漏水や自宅での孤独死の危機をいち早く察知することも出来る。これと同じことが街中のセンサーで起こると、街そのもののビッグデータが集められることになり、スマートシティへの第一歩となることは間違いない。
電気やガス、水道の使用量はもちろん、人の移動、気温、湿度などのデータを統合して分析することで、犯罪や事故を防ぎ、道路や鉄道、地下構造物などインフラの劣化を事前に察知することも可能となる。これにより行政コストが下がれば、税金の使いみちについて新たな議論が可能となり我々の生活は大きく変わるだろう。
とはいえ、そのような世界はすぐには来ない。
過去の記事でも触れたように、新しい世界は新しい土地に生まれることになっている。深センか、もっと新しいどこかでまずは実験が始まり、徐々に我々の生活が変わっていくはずだ。
その頃にはシンギュラリティも迎え、街中をAIが搭載されたアンドロイドが歩いているかもしれない。通信規格もほぼ10年ごとに更新されているので、シンギュラリティが予告されている2045年の世界では7G通信が実用化されているはずだ。
こうして考えると、長生きしてみたくなるではないか。