「セキュリティ」はIoTにおいて最も大切な問題点の一つ
世の中に存在するあらゆるモノがインターネットに繋がることで、私たちにこれまで体験したことのないような快適性や利便性、あるいは安全性や安心感などを得られるようになりました。
とはいえ、日本においてはまだまだ普及というには程遠く、IoT時代にようやく突入し始めた段階ですので“黎明期”などと表現されることがありますが、2020年にはIoTデバイスが300億台にも500億台にもなると予測されています。
2015年の時点で50億台程度だったことから、いかに爆発的に広がっていくかが分かります。
つまり、今は生活の中で特別にIoTを感じなくても、そう遠くない将来、一気にIoT時代が広がりを見せる可能性が高いということです。
インターネットに繋がるといえば、真っ先にスマホやPCを思い浮かべる方も多いと思います。
これらは不正アクセスによるデータ改ざんや破壊、サービス拒否(DoS)攻撃、コンピューターウィルスなど、さまざまなサイバー攻撃の危険性と隣り合わせで、個人のPCに何かしらのセキュリティソフトを導入しているという方も少なくないでしょう。
容易に想像できることですが、あらゆるモノがインターネットに繋がり、相互連携することによって便利になる一方、サーバー攻撃を受けてハブが乗っ取られたりソフトウェアのデータを改ざんされたりすることで、それと連携する照明、エアコン、スマホなどの各デバイスにも影響を及ぼす可能性が高くなります。
誤作動を起こす、生活を監視される、個人情報などを盗まれる、在宅か留守か分かってしまうなど、あらゆるIoTの問題点とリスクが考えられます。
PCやスマホだけ、というのであればセキュリティソフトが検知して通知してくれますので、すぐに異変に気づくこともできます。
しかしさまざまなデバイスが連携している場合、一つ一つを24時間監視することは現実的ではなく、またなんらかのサイバー攻撃を受けているということが分かるまでに多大な時間を要する可能性もあります。
各デバイスに最適なセキュリティとは何かをユーザーがきちんと把握するにはハードルが非常に高く、せめて初期設定されているパスワードを推測されにくいと思われるものに変更するか、家庭内のネットワークに接続されているデバイスを一括監視してくれるSymantecのNorton Coreなどを導入する程度しかありません。
個人宅ではなく、自動車や医療機関などがサイバー攻撃に遭えばそれこそ甚大な被害を招く危険性もありますので、ユーザー自身がIoTの問題点を知り、セキュリティに対する高い意識を持つことが重要になってきます。
IoTデバイスが長期間使われ続けることも問題点の一つ
導入したIoTデバイスやシステムは、長期間使われ続けるケースが多いと考えられます。10年など長期間乗り続ける自動車を例に考えてみましょう。
開発時に施されているセキュリティ対策は「古く」なっていきます。もちろんソフトウェアのアップデートやパッチを配布することによってある程度新しいセキュリティ対策を講じることはできます。
しかし、セキュリティ対策が組み込まれている場合などはデバイス(ここでは自動車)自体を回収しなければならないケースがある場合や、最終的にはユーザーに判断を委ねるしかないなど、時間の経過とともに脆弱化していきます。
極端な例ですが、すでに全サポートが終了しているWindows 95を今でも使っていると考えると分かりやすいかもしれません。セキュリティに対する意識がそう高くない人ではソフトウェアのアップデートやパッチにも気づかない可能性もあります。
そうした中、アメリカのバージニア州に本拠を構える非営利のベンチャーキャピタル会社IN-Q-TELでCEOを務めているダン・ジール氏はデバイスに「寿命」を持たせることで、IoTの問題点や危険性を軽減することを提案しています。
電力供給もIoTの問題点
2020年にはIoTデバイスが数百億台に達すると予測されているとお伝えしました。
デバイスが稼働するためには乾電池なのか、コンセントからの電源を必要とするのかといった大きな2パターンがありますが、電源を必要とする場合、あらゆるモノを稼働させるための電力をどう供給していくことになるのでしょうか。
今後、世界中で一気に電力消費量が増える可能性があるわけですが、こうしたIoTの問題点は早くから指摘されており、非接触の電力供給技術の開発こそ進んでいますが実用化にはいたっていないのが現状です。
逆に、バッテリーに限界があるという考え方もあります。デバイスに搭載されているバッテリーの寿命です。
バッテリー技術は大幅に向上してはいますが、それでも寿命はあり、あらゆるモノが常時接続され続ける状態をずっと保つには、まだまだ時間がかかるのではないかという見方です。
いずれかのデバイスがバッテリーに寿命をきたした場合、連携する他のデバイスはどうなっていくのかという点も考えておかなければなりません。
IoT時代における問題点はユーザーも把握し考えることが大切
今回はIoTにおける問題点を挙げてみました。上記のほかにも、たとえばIoTによるスマートホームで得られるメリットやユーザーが求めるものは「生活者にとって最高にパーソナライズされた環境やサービス」だと思いますが、そうなると今度は、逆に自分自身のプライバシーを最大限、提供しなければなりません。
たとえば、毎朝6時にカーテンが開いてコーヒーが準備されテレビがつく、という生活もデバイスが収集したパーソナルな情報に基づくものです。
よりパーソナライズされたサービスを望むのであれば、プライバシーを提供しなければならず、どこまで提供するかをユーザーが自由に選べるのかどうか、といった部分もIoTの問題点と言えるかもしれません。
いずれにしても、こうした多くの課題や問題点を抱えているということは、実際のユーザーとなる私たちがきちんと把握し、考えていく必要があるでしょう。