eSIMとは
eSIMは端末内にSIMのデータを書き込む仕組みです。
SIMのデータというのは、電話番号や通信業者などのことで、電話を使用したりモバイル回線に接続したりするのに必要になります。SIMのデータがないと、電話もモバイル回線も使用できません。
通常はSIMカードという小さなカードにSIMのデータが入っています。そのため、新規でスマホの通信契約をしたときには、SIMカードをスマホに入れるでしょう。
これに対して、eSIMを使用する場合にはSIMのデータを端末内に書き込むため、SIMカードは使用しません。
eSIMを使用する場合には、SIMのデータを通信業者からダウンロードする仕組みです。最初の設定を済ませておけば、通常のSIMカードを入れている場合と同じようにして使えます。
また、通常のSIMカードのことをeSIMと対比して、物理SIMと呼ぶ場合があります。
eSIMのメリット
eSIMを使用することで、物理SIMと比べて次のようなメリットがあります。
通信業者の乗り換えをしやすい
eSIMは通信業者の乗り換えをスムーズにできるのがメリットです。
物理SIMの場合には、通信業者を乗り換えるとSIMカードを入れ替える必要があります。また、乗り換え先の通信業者からSIMカードが自宅に届くまで待たなければなりません。そのため、申し込みなどの手続きをオンラインで行っても、実際に乗り換えが完了するのは2~3日程度先になってしまうでしょう。
これに対してeSIMであれば、SIMカードの出し入れをする必要がありません。乗り換え手続きから、実際に乗り換え手続きが完了するまで日をまたぐことなく、全てオンラインで完結します。
デュアルSIMでの利用に向いている
デュアルSIMというのは、1つのスマホで2つのSIMを使用することです。eSIMに対応している端末の中には、複数のeSIMを使えるものもあり、その場合にはデュアルSIMにできます。
デュアルSIMなら、通話用とデータ用に分けたり、仕事用とプライベート用に分けたりできるので便利です。予備回線も備えておくという使い方もできるでしょう。
物理SIMの場合でも、AndroidスマホならSIMカードを2枚入れることでデュアルSIMにできます。ただし、2つ目のSIMカードスロットがmicroSDスロットと共用になっている機種が多いです。そのため、デュアルSIMにするなら、物理SIMよりもeSIMの方が向いているでしょう。
また、iPhoneはSIMカードスロットが1つしかありません。そのため、iPhoneでデュアルSIMにするならeSIMの利用は必須です。
また、AndroidもiPhoneも、物理SIMとeSIMを併用してデュアルSIMにすることもできます。
海外に行くときに便利
海外で国内業者のSIMをそのまま使おうとすると、料金が高額になったり使えなかったりすることがあります。eSIMなら、海外でも安く使える通信業者やプランを一時的に契約して使うのに便利です。
eSIMのデメリット
eSIMを使用する際には、次のようなデメリットも認識しておく必要があります。
対応している通信業者が限られている
4大キャリアとそのサブブランドはeSIMに対応しています。しかし、MVNOでeSIMに対応しているのはIIJMioや日本通信などごく一部しかありません。プランも少なめで、選択肢はどうしても狭まってしまうでしょう。
ただし、今後はeSIMに対応するMVNOが増える可能性もあります。
対応している端末が限られている
比較的新しい端末ならほぼeSIMに対応していますが、古い端末だと非対応のものが多いです。また、価格の安い端末も非対応の場合があります。
eSIMには対応していても、デュアルSIMに非対応の機種などもあるため、よく確認しておきましょう。
機種変更に手間や費用がかかる場合がある
eSIMは通信業者の乗り換えはスムーズですが、同じ通信業者を利用したまま機種変更する際にはやや手間がかかる場合があります。
物理SIMの場合には旧端末からSIMカードを取り出して新端末に入れるだけで簡単ですが、eSIMだと再発行の手続きが必要です。手数料がかかる場合もありますので、事前に確認しておきましょう。
eSIMの設定方法
eSIMを使用する際の設定方法について見ていきましょう。
事前準備
まずは対応端末を用意してeSIMのプランを契約しましょう。
また、設定が完了するまではモバイル回線に接続できません。そのため、Wi-Fiを利用できる環境で設定を行う必要があります。
iPhoneでの手順
iPhoneで設定する場合には、「設定」から「モバイル通信」「eSIMを追加」へと進みましょう。そして、他の端末にQRコードを表示させて読み込むか、詳細情報を手動で入力します。
読み込みまたは入力が済んだら、画面下に表示される「eSIMをアクティベート」のところをタップしましょう。それから、「続ける」「完了」と進んでいきます。
次にAPN構成プロファイルをダウンロードしましょう。通信業者の公式サイトでダウンロードできます。ダウンロードが完了したら、「設定」から「ダウンロード済みのプロファイル」へと進み、「インストール」をタップし、パスコードを入力しましょう。パスコードは、iPhoneのロック解除に使用する数字です。
そして、「次へ」「インストール」へと進むとインストールが完了し、「完了」をタップすると設定が終わります。
Androidでの手順
Androidスマホの場合には、「設定」から「ネットワークとインターネット」「SIM」へと進みましょう。そうすると画面下に「SIMをダウンロードしますか」と表示されるので、そこをタップします。
そして、「次へ」をタップし、他の端末にQRコードを表示させて読み込むか、コードをスキャンまたは手動で入力します。
「〇〇(通信業者名)を使用しますか」と表示されるので、右下の「ダウンロード」をタップしましょう。「ダウンロードが完了しました」と表示されたら右下の「設定」をタップします。それから「SIMを使用」のスイッチをオンにすると設定完了です。
切り替え方法
eSIMの場合には、登録できるSIMの数は機種によって異なりますが、1つの端末に複数のSIMを登録できる機種もあります。
iPhoneの場合には「設定」の「モバイル通信」でeSIMを切り替え可能です。
Androidは「設定」の「モバイルデータ通信」の項目で切り替えできます。「モバイルデータ通信」の項目の表示名は機種によってやや異なる場合もあります。
また、機種によっては切り替えだけでなく通話を同時待受に設定することも可能です。同時待受にすると、どちらのSIMの番号に電話がかかってきたときでも、着信音が鳴り、受電できます。こちらから電話をかけるときの扱いは機種によってさまざまです。その都度SIMを選択するようになっている機種もあれば、あらかじめデフォルトの通話用SIMを選択しておく機種もあります。
データ通信に関しても、機種によってまちまちです。どちらか一方を使用するように設定できる機種もあれば、同時使用できる機種もあります。
また、1つのeSIMを複数端末に同時に登録することはできません。複数端末で使用したい場合には、端末ごとに契約する必要があります。
まとめ
eSIMを利用すれば物理SIMを使わずに済むため、通信会社の乗り換えや海外で利用するときなどに便利です。デュアルSIMにも向いています。設定方法もそれほど難しくはありません。
ただし、古い機種だとeSIMに対応していない場合もあるため注意しましょう。通信業者に関しても、MVNOだとまだまだeSIM対応業者は少なめです。
今後はeSIM対応業者やプランが増えていく可能性が高いため、通信業者の乗り換えや機種変更の際には、ぜひeSIMを検討してみましょう。