「セキュリティ対策」から発展した北米のスマートホーム
日本では早くからHEMSやMEMSに代表されるようなエネルギー・マネジメントシステムを搭載した住宅、いわゆる「スマートハウス」の概念が広がっていった一方で、北米では、
「留守にしている間の家のことが心配」
「留守中に家で何が起こっているか気になる」
といったセキュリティに対する意識が高まり、それに伴い需要が増えたことから「スマートホーム」という概念が生まれ、現在の「コネクテッド・ホーム」の形へと発展してきました(北米ではスマートホームをコネクテッド・ホームと呼ぶのが一般的です)。
HEMS(ヘムス=Home Energy Management System)
エネルギーを「見える化」し、家庭で使われるエネルギーを一元管理できるようにするシステムのことです。
MEMS(メムス=Mansion Energy Management System)
HEMSの管理対象範囲が個人宅ではなく集合住宅に広がったものを指します。
コネクテッド・ホームは先のエネルギー・マネジメントシステム以外に様々なモノがインターネットに繋がるという概念から生まれた言葉で、ここ1~2年ほどで日本でもようやく認知度が上がり、参入する企業も増えてきました。
つまり現在の日本で言うところの「スマートホーム」は、北米では数年前からすでに普及が始まっていたことになる訳ですが、具体的にどのようなモノがインターネットに繋がり、人々の暮らしに変化を与えてきたのでしょうか。
インターネットで繋がるあらゆるモノとは?
今でこそ日本でもエネルギー・マネジメントシステム以外の部分でスマートホーム関連サービスやIoTデバイスなどが次々に開発・発売され、また海外の企業も独自のサービスやデバイスなどを続々と日本に導入し始めていますが、それでも、
「アメリカ(北米)と比べるとスマートホーム化は3年程度遅れている」
というのが大方の見方のようです。
事実、日本ではまだまだ家電量販店でスマートデバイスを見かけることが少ない(売り場面積が狭い)のですが、北米では、すでに入口すぐの一番目立つスペースに「コネクテッド○○」というスマートホーム関連デバイスが並んでいることが多いようです。
どのようなモノがインターネットに繋がっているのか、いくつかご紹介します。
・スマート照明
自分好みに照明の色を調整することはもちろん、音楽や映像に合わせて色が自動で変化するように設定することも可能です。またスピーカーやカメラ、マイクなどを搭載しているものもありますので、セキュリティ面にも応用できます。
・スマートサーモスタット
温度センサー、湿度センサー、赤外線などが搭載され、室内の温度や湿度に応じて最適な空間を維持するためにエアコンを制御してくれます。またユーザーの好みや生活パターンを学習し、自動で常に最適な空間を維持しつつ、その中で最大限エコに配慮したエネルギー消費手段を選んでくれるようになります。
・スマートカメラ
人感センサー、音センサー、マイク、スピーカーなどが搭載されているものが多く、不審者を検出すると録画を開始し、外出先からでもスマホでリアルタイムに確認しながらスピーカーを通じて声で注意を与えることもできます。
・スマートロック
鍵を閉め忘れて外出してしまった場合はスマホアプリから遠隔操作で施錠でき、逆に外出中に家族が帰ってきたという場合は遠隔操作で解錠することができます。GPSを使えば玄関の3メートル手前で解錠されるなどの設定も行えます。
たとえばスマートロックが民泊に普及すれば、運営者と利用者との間で鍵の受け渡しが不要になりますので、よりスムーズに利用できるうえに、紛失やスペアキーを作られてしまうリスクを排除することができます。
また、スマートロックに関しては、他のデバイスと連携させることで次のようなことも可能です。
・スマート照明+スマートロック
スマートロックと照明を連携させると「玄関の鍵が開いたら青」「玄関の鍵が閉まったらオレンジ」など光でリアルタイムに状況を教えてくれるように設定ができます。
・カメラ+スマートロック
外出中に屋外に設置したカメラが不審者を検出すると、録画を始めると同時にスマホにも通知し、玄関をはじめ家中のドアや窓が施錠され、カメラに搭載されたスピーカーから警告音を発することで不審者を追い払うことができます。
・サーモスタット+スマート照明+スマートロック
GPSを活用すれば、自宅の1km手前でサーモスタットが快適な空間を作っておくためにエアコンを稼働させ、照明がじんわりとと点灯し始め、車を降りて玄関の手前まで来るとドアが解錠されて立ち止まらずに家に入ることもできます。
・人感センサー+スマートプラグ
例えば、実家で一人暮らしをしている父親や母親の部屋などに設置すれば、人感センサーが「長時間人の動きを検出しない」、スマートプラグが「室温が高いのにエアコンが稼働していない」といったことを検出し、遠く離れた家族に通知することもできます。
このように、ユーザーの使い方次第で用途や可能性がどんどん広がっていくのが、あらゆるモノがインターネットに繋がったスマートホームであり、北米で普及しているコネクテッド・ホームなのです。
もっとも、これらはほんの一例に過ぎず、現在ではさらに進んだサービス、デバイス、システムなどが、北米を中心にスマートホーム市場で開発されています。
Amazon Echo(Alexa)、Google HOME(Google assistant)といったAI搭載音声アシスタント機能などはその最たる例で、スマホを使わずとも音声コマンドだけでエアコンに洗濯機、照明、冷蔵庫、テレビ、給湯器、床暖房、セキュリティカメラなど、あらゆるモノを制御できるようになりました。
すべてのモノ、ヒト、サービスなどが繋がる未来
一般に日本ではセキュリティに対する需要が低いと言われていますが、実際には女性の一人暮らしなどで帰宅前に家の中に侵入者がいないか確認したいという需要も出てきていますので、今後セキュリティに対する需要は伸びていくものと考えられます。
また日本独自の社会的背景として「超高齢化社会」「高齢者世帯」「独居老人」「孤独死」が増え続けていることに加えて「人口の減少」という大きな問題を抱えています。
こちらは一般的な“セキュリティ”とは少し意味合いが異なりますが、このような日本独自の問題を解消するために考え出された、ネットワークカメラや人感センサーを活用したいわゆる「見守り」サービスに対する需要も、今後より急速に高まっていくものと言われています。
日本と北米ではスマートホームの起源や発展の仕方などに多少の違いはありますが、最終的にはすべてのモノ、ヒト、サービスなどが繋がって、私たちの生活を一変させてくれることになるでしょう。
最新のスマートホーム事情を知るには、北米の情報に注目してみると良いかもしれません。