睡眠中に脳波をモニターし、特殊な音源により眠りの質を高める製品が先日発表されました。
フィリップス・ジャパンの「SmartSleepディープスリープヘッドバンド」です(長いので以下SmartSleep)。スリープテック製品は数あれど、睡眠中にリアルタイムかつダイレクトに深い眠りの状態を維持するよう働きかける製品は新しく、期待が持てそうです。
こちらがSmartSleepの本体。ヘッドバンドとスマホアプリを組み合わせて使用します。価格は4万2380円(税抜)。ビックカメラ、ヨドバシカメラ(実店舗とオンラインショップ)、Amazon、楽天で販売される予定。
センサーはおでこの部分にひとつ、両耳の後ろにひとつ。左右には睡眠を深めるための音(オーディオトーン)を出すスピーカーが内蔵されています。
このように装着して使用します。軽くてソフトな生地なので眠りの妨げにはならないでしょう。
なぜ、SmartSleepで睡眠の質が高められるのか、その仕組みを簡単に説明しましょう。
「レム睡眠」「ノンレム睡眠」という言葉を聞いたことのある人も多いかと思います。レム睡眠は眼球が活発に動いている状態で、夢を見ている時に代表されるような浅い眠りです。脳は活発に働いており、この時に記憶の整理や定着が行われているとされます。
逆にノンレム睡眠は脳が休んでいる状態です。ノンレム睡眠にもレベルがあり、睡眠に入った直後、1時間ほどがもっとも深くなるそうです。この「徐波睡眠」の時、心拍数と呼吸がもっとも安定し、筋肉もリラックスした状態になるそうで、心身の回復に重要な役割を果たしているわけです。
SmartSleepでは脳波センサーで徐波睡眠を検知すると、その状態をより長く持続させるべくオーディオトーンと呼ぶ500〜2000Hzの音源を流します。覚醒中やレム睡眠中は流れないので、ユーザーが意識することはありません。また音自体小さいので、横に寝ている人に影響を与えることもないでしょう。
フィリップス社が販売前に実施した調査では、70%のユーザーが2週間後に日中の疲労感が軽減したと感じたそうです。日本国内でターゲットになる購買層は、睡眠時間が6時間未満の約4700万人、とくに効果が期待できるのは下記のような人たちです。
少し残念な情報としては、50歳以上は深睡眠の出現自体が少なくなるため、効果を実感できない割合が高まるようです。例えるなら、筋肉を太くするサプリを飲んでも、元の筋肉が少なければ効果が感じられないようなものでしょうか。とはいえ、長期間使用することで、年齢が高くても効果を実感できることが多いようです。
睡眠の質(スコア)やオーディオトーンの発生回数などは、専用アプリ「SleepMapper」で確認できます。
耳の後ろに貼るセンサーは消耗品で、3日(晩)ごとに交換する必要があります。販売価格は30個2980円。30日で10個=毎月約1000円のランニングコストとなる計算です。
日本人の睡眠時間は世界最短! 経済損失15兆円だって!?
製品発表会では日本人の平均睡眠時間が7時間22分とOECD加盟国ではもっとも短いという事実が語られました(逆に長いのは南アフリカの9時間22分!)。その経済損失は米国のシンクタンク「ランド研究所」の試算で15兆円、GDPの3%近くにも及ぶとか。日本が景気悪いのは睡眠時間が足りないせいなんじゃない? とも思ってしまいますね。
「睡眠負債」で2017年度ユーキャン新語・流行語大賞を受賞した早稲田大学 リサーチイノベーションセンター枝川義邦教授の講演も行われました。
潜在的な睡眠不足である「睡眠負債」は、睡眠障害とは異なり自覚がないのが特徴で、日常的には集中力や判断力の低下などを引き起こし、常態化すると認知症やうつ病、高血圧症、糖尿病などのリスクが高まる可能性もあるとか。
睡眠時間が6時間未満の人は4割近くを占め、しかもここ数年増加傾向にあるそうです。6時間睡眠でも2週間続くことで、認知能力は2日間徹夜した時と同レベルに落ちてしまうとの衝撃データも! もう原稿書きながら眠くなってきましたよ。
正直、まだ製品を自分で試したわけではなく、音で深い睡眠状態を維持すると言われても頭に「?」が浮かびますが、もちろんテキトーな製品なわけはありません。シェーバーや電動ハブラシのイメージが強いフィリップスですが、近年はMRIやCT診断装置をはじめとするヘルスケア領域に注力。睡眠についての研究も30年におよび、睡眠呼吸障害の治療装置(CPAP)も開発しています。
SmartSleepもその成果のひとつ。30日間効果を実感できない場合は返金を保証するキャンペーンも実施されているのも(2019年11月〜2020年2月)、その自信の現れでしょう。実際に製品を試す機会があればまた報告します。