スマートウォッチで血圧測定する仕組みとは?
一般的な血圧計の仕組み
腕に空気で膨らむカフを巻き付けるタイプの一般的な医療用・家庭用血圧計は、「オシロメトリック法」という測定方法を使っています。
空気で膨らんだカフで腕を圧迫し、血流を一旦ストップさせます。その後、カフの圧迫をゆるめ、血液が流れ始めると、心臓の拍動に合わせて血管壁が振動します。カフ自体がセンサとなって、その振動(脈派と呼ぶ)を計測するのが「オシロメトリック法」です。
スマートウォッチでの血圧測定の仕組み
血圧測定の機能がついたスマートウォッチはいくつかありますが、カフがついたものは現在オムロンの1機種のみで、他のスマートウォッチにはついていません。では、どうやって血圧を測定しているのでしょうか?
多くのスマートウォッチでは、電気信号による心拍数の測定結果と、光学センサを使った血流の測定結果を組み合わせて、血圧を算出しています。
光学センサを使った血流測定は、緑色発光ダイオードを用い、血液が緑色の光を反射する仕組みを利用します。血管に緑色の光を当てると、血流が多い時(心臓が脈打った時)と、少ないときでは光の反射の仕方が異なります。その反射の違いをとらえて、血流を測定するのです。
スマートウォッチの血圧測定の精度は?
上記で紹介したスマートウォッチでの血圧測定方法は、医療機器として認められたものではありません。一般的な血圧計と比べて、決して少なくない誤差が生じると言われています。
そのため、正確に血圧を測定する必要がある方の使用には向きません。健康な方が参考にする程度の使用にとどめましょう。
なお、スマートウォッチで血圧を測定する際も、一般的な血圧計を使うときと同じ注意点を守ることで、測定の精度を高めることができます。
・落ち着いた静かな場所で測定する
・リラックスし、座って測定する
・手首と心臓を同じ高さに保つ
また、血圧計で計測した結果と比較して、どのぐらいの誤差が出るかを把握しておくのも良いでしょう。
スマートウォッチと家庭用血圧計ではどちらが良い?
スマートウォッチと家庭用血圧計とでは、そもそも血圧の測り方が違います。ですから、一概にどちらが良いということはできません。
ですが、正確に血圧を測りたい場合には家庭用血圧計を、手軽に血圧を測りたい時にはスマートウォッチを使用するのが便利です。
というのは、スマートウォッチの場合、家庭用血圧計を使う場合のように測り忘れるということがありませんし、移動中や仕事中、スポーツ中などいつでも血圧を測定することができるからです。
血圧を測る精度という点では、家庭用血圧計に劣りますが、日常的に健康管理を行いたいという場合には、血圧の測れるスマートウォッチを使うと良いでしょう。
また、血圧測定ができるスマートウォッチは、歩数計や運動量などを同時に測定できるものが多いため、健康管理をトータルで行いたいという時にも向いています。
なかには防水機能が完備されている製品もあり、この場合には水泳中などにも血圧を測ることができます。
結論から言えば、家庭用血圧計とスマートウォッチは場面場面で使い分けるのが良い、といったところになるでしょうか。
具体的にどんな風に血圧が表示されるの?
血圧を測れるスマートウォッチは、スマートフォンと連動しています。そのため、血圧の測定結果は文字盤の上、およびスマートフォンの管理アプリ上に表示されます。
中には、文字盤に見やすく、血圧や心拍数、消費カロリー、歩数などをトータルで表示してくれるスマートウォッチも存在します。
スポーツや運動などをよくするという人は、こうしたタイプのスマートウォッチを選べば、スポーツ中や運動中でも手軽に血圧をチェックすることができます。
もちろんスマートウォッチですから、使用中にはタイマーやアラームなどを使用することも可能ですし、性能の高いものはスマートフォンと連動させてメールの受信や通話などを行うことも可能です。
血圧測定ができるスマートウォッチは安価なものも多く、2,000円台~4,000円台で購入できるものもあります。
それぞれのスマートウォッチで、血圧がどのように表示されるかは異なっているので、製品情報をよく確認してみると良いでしょう。具体的には、製造元やAmazonなどの商品紹介ページを参考にすると良いと思います。
操作はどうやってする?
血圧を測定する場合、その操作はスマートフォン側でするものと、スマートウォッチ側でするものの2種類があります。
血圧を測れるスマートウォッチは健康管理の機能が充実しているものが多く、血圧のほかにも心拍数や歩数、消費カロリーなどをチェックできるものがほとんどです。
スマートフォン側では具体的にどんな表示をするのかの設定ができます。この場合、心拍数・血圧・歩数などを計測するアプリを使って表示内容を設定することになります。
タッチスクリーン式になっているスマートウォッチであれば、文字盤で直接表示内容を操作することが可能です。また、タッチスクリーンになっていないものでも、通常は文字盤に触れるなどして表示内容を切り替えることができます。
こちらも、操作方法がどうなっているのかは、販売元のホームページなどで事前に確認しておいたほうが良いでしょう。
ただし、タッチスクリーン式のスマートウォッチは一般的に値段が高くなる傾向があります。購入費用を安く済ませたいという人は、タッチスクリーン式以外のスマートウォッチやスマートブレスレットなどを購入することを検討してみると良いかもしれません。
健康管理のためのスマートウォッチ選びのポイント
健康管理のためのスマートウォッチを購入する際、後悔しないようにチェックすべきポイントをご紹介します。数あるスマートウォッチの中から自分にあった商品を選ぶ際に参考にしてください。
予算を決める
スマートウォッチの価格帯は数千円〜数万円と幅広く、機能やデザインも様々です。
また、市場の注目度も高く新しい商品が次々と開発されています。スマートウォッチの価格相場は約43,000円です。古い商品より新しい商品の方がリーズナブルで多機能な商品もあるため、予算と機能のバランスを見極めましょう。
スマホやPCとの連携機能
スマートウォッチは価格帯の幅広さだけでなく、商品によって機能も大きく異なります。購入前に自分のスマホやPCと連携できるかどうかを確認しましょう。手持ちのスマホがiPhoneならiOS、AndroidならAndroid OSに対応している商品を選ぶ必要があります。海外メーカーから発売されている商品は、日本語版のアプリがない場合もあるので注意しましょう。
必要な健康管理機能が搭載されいるか
先述したようにスマートウォッチの機能は商品によって様々です。
・血圧計測以外
・心拍数自動計測機能
・歩数計機能
・消費カロリー
・睡眠管理機能
・生理周期予測機能
これらの機能はある程度の性能のスマートウォッチには標準で搭載されています。
自分に必要な機能を洗い出し、商品選びの基準にしましょう。また、自分自身で使いこなすことができる範囲の機能が搭載されている商品を選ぶことで、無理なく健康管理を継続しやすくなるでしょう。
使用するシーンに合わせる
スマートウォッチは仕様や機能だけでなく、使用するシーンによってデザインが大きく異なるのをご存じでしょうか。スマートウォッチの分類は、スポーツタイプとビジネスタイプの2種類です。ビジネスシーン向けの商品はスタイリッシュでクールなデザインが多く、着信通知やメール通知機能、タスク管理機能が充実しています。スポーツタイプであれば、防水性、防塵性に優れ、GPS機能や距離計測機能が搭載されています。トレーニング中に邪魔にならないようフィット感に優れ、軽量タイプが多くあります。時計の防塵性能は0~6、防水性能は0~8のように数字で表されます。防水7の表記があれば水中で行うスポーツに使用可能です。汗を書いた際や、水中で使用した際の水滴がタップと認識されてしまう場合があります。スポーツタイプの商品には、誤操作を防ぐため画面の自動ロック機能が搭載されている商品もあります。
バッテリーの持続時間
使用していてもすぐに充電切れになってしまっては意味がありません。使用する頻度や時間に応じてバッテリー持続時間は十分かを確認しましょう。睡眠時間中も使用したい場合は長時間使用できる商品を選ぶ必要があります。また、充電の方法も自分にあった方法か確認しましょう。商品によってUSB、ソーラータイプ、ボタン電池式など様々な充電方法があります。
操作方法を確認
運動時だけでなく、日常的に使用するのであれば操作性はとても重要なポイントです。
商品によって操作性は大きく差があるため、可能であれば実際の商品を店頭で試着、使用してみることをオススメします。また、口コミで使用感をリサーチして自分でも使いこなせるかどうかイメージを膨らませてみることもオススメです。
血圧測定ができるスマートウォッチ
オムロン/HeartGuide
価格:¥79,800
オムロンの「HeartGuide」は、現状で最も正確に血圧測定ができるスマートウォッチです。日本より先に販売を開始していたアメリカでは、FDA(アメリカ食品医薬品局)から認可を得ていて、血圧計と同じレベルの精度で血圧測定ができるとされています。日本でも医療機器認証を取得しています。
他のスマートウォッチと違って、「HeartGuide」はオシロメトリック法で血圧を測定します。本体に、医療用血圧計と同じような空気で膨らむカフがついているのです。
毎日同じ時間に血圧を測定するためのリマインダーを始め、アクティビティの記録、着信、メッセージへの応答など、スマートウォッチとしての基本的な機能も、もちろん備えています。
直径48mm、幅25mm、厚さ1.3cm、重さ116g、さらに内側にカフがついているので、スマートウォッチとしてはかさばる印象ですが、血圧測定の正確さのためには仕方ありません。それでも従来の手首式血圧計に比べて、カフ幅は約50%、本体の容積は約35%にまで小型化されています。
スマートウォッチというより、スマートウォッチの機能がついた小型の血圧計とも言えますね。
GanRriver/スマートウォッチ
画像引用元:https://www.amazon.co.jp/dp/B08211SN38/ref=cm_sw_r_tw_dp_x_dL1mFbEES9DDM
価格:¥3,798
Amazonの活動量計ランキングでベストセラーに輝いている商品です。バンドと同じ幅の細いフェイスがスタイリッシュでかさばらないので、スポーツをするときにもおすすめです。
心拍数は自動モードなら5分起きに、血圧は手動で好きなときに測定します。この製品を含め、HeartGuide以外のスマートウォッチの血圧測定はあくまで補助的なものとして考えましょう。
口コミには、血圧計と比較して誤差が少ない、バッテリーの持ちが良い、軽くて付けやすいといった高評価が並んでいます。
Samsung/Galaxy Watch Active 2
価格:¥37,315〜
2020年6月に、Galaxy Watch Active 2で血圧測定を可能にするアプリが韓国でリリースされました。韓国の食品医薬品安全省による認可を受けています。日本でこのアプリがリリースされるかは不明ですが、期待したいところです。
とはいえ、Galaxy Watch Active 2だけで血圧を測定できるわけではありません。まずカフ式の血圧計で血圧を測定し、その値を基準として、スマートウォッチのセンサーを用いた脈波測定で血圧の増減を算出します。定期的にカフ式の血圧計で血圧を測定する必要があります。
Semiro/スマートウォッチ
画像引用元:https://www.amazon.co.jp/dp/B07NMCXFC3/ref=cm_sw_r_tw_dp_x_Y51mFbKTVNVT2
価格:¥4,800
血圧モニター機能のついたタッチスクリーン式スマートウォッチです。ワンボタンで血圧測定する手動測定モード、1時間ごとに自動で測定する自動測定モードが選べます。他にも心拍計、睡眠モニタリング、消費カロリーやアクティビティの記録、座りがち注意、生理周期管理など、健康管理に役立つ機能が多く搭載されています。
血圧測定は、Galaxy Watch Active 2と同様に、カフ式血圧計で測定した普段の血圧を基準値としてアプリに登録する必要があります。
スクリーンが大きく見やすいこと、マグネット式で充電が簡単なこと、電池の持ちがいいことが人気の理由です。
AIVEILE/スマートウォッチ
画像引用元:https://www.amazon.co.jp/dp/B07X23MNLL/ref=cm_sw_r_tw_dp_x_a61mFbE94P7VB
価格:¥3,999
光学センサーで血圧と心拍数が測定できるスマートウォッチで、特にスポーツをする人におすすめです。
9つのスポーツ(バドミントン、バスケットボール、サッカー、クライミング、サイクリング、ランニング、水泳、卓球、ウォーキング)から選択できるマルチスポーツモードが用意されていて、より正確にアクティビティを記録することができます。運動中に異常な心拍数が検出されると即座にアラートを送信する機能も備えています。
ASUS/VivoWatch BP(HC-A04)
価格:¥23,220
ASUSの「VivoWatch BP」は、血圧ではなくPTT(脈波伝播時間)や、HRVスコア(ストレス解消指標)を測定できるスマートウォッチです。血圧は測定できませんが、参考値としての血圧の目安を知ることができます。
フェイスのスクリーン横には、ECGセンサーとPPGセンサーが付いています。直接覆うように指を置くことで、ECGセンサーが心拍数、PPGセンサーが脈拍を測定し、それらをもとにPPT(脈波伝播時間)が算出されます。さらに、PPTをもとに血圧の目安を算出するという仕組みです。
3軸加速度センサーも内蔵されていて、寝返りの回数なども記録できます。
スマートウォッチで社員や家族の健康管理もできる時代に
若者だけでなく、高齢者や子どもにとってもスマホは生活に欠かせないツールです。個人のスマホとスマートウォッチを連携し、お互いの健康をみまもり合うサービスが注目されています。このようなサービスの普及により、医療・介護現場の労働環境改善や、企業による従業員の健康管理、家族のコミュニケーションが活発になることが期待されます。
企業における従業員の健康管理
近年、企業の従業員向け健康管理システムが注目されています。コロナ禍においてリモートワークが急増し、従業員の健康管理と生産性向上が課題になりました。健康経営という言葉に注目が集まり、社員の健康管理への取り組みを進める企業が急増しました。社員の健康管理は生産性向上に繋がり、退職や休職、メンタルケアなど様々なメリットがあります。オフィス内での衛生、健康管理だけでなく野外での作業や炎天下での体調管理に役立つサービスが次々と登場しています。
MEDiTAG
MEDiTAGはホシデン株式会社とHOYAデジタルソリューションズ株式会社が開発したスマートウォッチです。コンパクトでシンプルなデザインで、ビジネスシーンや作業中における使用の妨げになることはありません。従業員の健康・行動・居場所はIoT技術によってクラウド上で管理されます。異常を検知した際は、アラート通知が可能です。テレワーク時や現場作業の際に便利な勤怠管理機能も備わっています。一般的なオフィスワーカー以外に、介護施設や病院などの医療機関、工事現場で活用されています。
パートナーや家族の健康状態も管理できる
コロナ禍で巣篭もりが定着し、今まで以上にセルフケアや健康管理が注目されています。
また、高齢化社会が加速し離れた場所に暮らす家族の健康を心配したり、緊急時の対策を考えたりしなくてはならない時代になりました。先述したようなスマートウォッチでの健康管理サービスは法人だけでなく一般市場向けに普及してきています。健康管理だけでなく、GPS機能で居場所を通知できるため子ども防犯対策にも活用可能です。家族全員でお互いの健康や安全を管理・共有できるようになることで、自然と個人の健康意識も高まるでしょう。
家族の繋がりサービス「Hachi」
HachiはAPTECHが提供しているサービスです。Apple Watchを使用している家族の日々の様子と、健康を専用アプリで見守れます。複数人で健康状態をシェアし、緊急時には自分自身でSOS通知を発信可能です。サービスの利用方法は以下の通りです。
一般向けサービス内容 |
みまもる方 |
みまもられる方 |
料金 |
858円/月(税込) |
無料 |
使用デバイス |
Apple Watch |
Apple Watch |
対応可能スマホ |
iPhone 7以降 |
iPhone 7以降 |
Hachiは一般向けだけではなく、施設向けのアプリも開発されています。介護施設やオンライン診療のサポートツールとしてのサービスも展開中です。
まとめ
血圧測定ができるスマートウォッチの仕組みや、おすすめの商品を紹介しました。多くの機種はまだ正確な血圧測定ができるわけではありませんが、健康管理にうまく役立てたいものです。
スマートウォッチに関する情報は、こちらの記事でもご紹介しています。